壁の花
だが、一曲が終わってもまた次の一曲が始まり、ヴァンパイアのような無限の体力を持たない永遠は、疲れ知らずに踊り狂う生物たちの間を縫って壁際に置かれた椅子へ向かった。
途中、一度も相手を変えず二人きりの世界に浸っているアダムとイヴを見つけた。
本当に仲のいい夫婦ね。いつか夫婦円満のコツを聞いてみたいものだわ。
「こんばんは」
永遠は、皆が会話を楽しみ、踊りに喜びを見出す間も一人ぽつねんと壁の花と化していた女性に声をかけ、隣に腰を下ろした。
「あなたは踊らないの?」
クルクルと回る生物たちを見ながら言った。
「踊るのは好きじゃないの」
永遠はチラッと女性を見た。
「私、ダンスは初めてだったの。だけど楽しかったわ」
彼女もこちらを向いた。
「踊っているのを見たわ。あなたは素敵な人だもの。皆あなたと踊りたがるわ。だけどわたしは…」
彼女は肩をすくめた。
「こんなだから」
彼女の髪は茶色く、後ろでひっつめにされていて、目も茶色で顔の造作もこれといった特徴はなく、何といってもドレスがサーモンピンクで無駄なリボンやフリルがあしらわれており、彼女には正直似合っていなかった。
「あなたが私のことを素敵だと思ってくれているなら、それはこのステキなドレスのおかげよ。なんならドレスを交換しましょうか?」
永遠は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
彼女は目を見開いた。
「いけないわ!汚してしまったら大変だもの」
彼女は永遠の表情を観察し、笑みを返した。
「ドレスのおかげなんかじゃないわ。あなたが素敵なのよ」
彼女はもっと笑ったほうがいい。笑うと特徴のない顔が華やいで見えた。




