エデンの園
エドモンドが咳払いをひとつすると男性がこちらに目を向けた。
「おやイヴ、クリスチャンが来たようだよ。あとかわいいお嬢さんと、ペット君も」
永遠の耳にブリスの小さな唸り声が届く。
女性の緑の瞳が輝いた。
「クリスチャン!また足音を立てないで歩いたんでしょうー、まったく困った子ね。会えて嬉しいわー、ママにキスして頂戴」
そう言う間もソファの二人は手を重ねたままだった。
クリスチャンの両親は互いにとても愛し合っているのね。
クリスチャンはその場を動かなかった。
「父上、母上、お久しぶりです。こちらは永遠です。そしてこっちはブリス、ペットではありません。彼は…友人です」
クリスチャンの母親は無視されて不満そうだった。
「おやおや、それはすまなかった。冗談のつもりだったのだがね」
クリスチャンの父親は永遠たちに席を勧め、エドモンドに茶を持ってくるように言いつけた。
「で、永遠さんはクリスチャンのどこを気に入ったのかな?」
クリスチャンは父親似だった。正確には瓜二つだ。きっと、クリスチャンが三十代の姿になったらこんな感じなのだろう。
「クリスチャンはお父様似ですね」
部屋にクリスチャンの父親の笑い声が響いた。
「いや、そうかね。ということは、わたしのことも気に入ったということかな?だがこの子と似ているのは見た目だけなのだよ。中身はまったく別物だ」
まったく暗い子でねと含み笑いをしながら付け加えた。
永遠は心の声が漏れてしまったことに赤面しながらも言わずにはいられなかった。
「そんなことないですよ。クリスチャンは優しくて、一緒にいて楽しい相手です」
クリスチャンの父親は永遠の手を取り顔を見つめた。クリスチャンと同じ金の目が確かに光った。
「…クリスチャン、いい人を見つけたね」
クリスチャンは父親の顔を見た。
「ありがとうございます父上。しかし、それは止めて頂きたいのです」
クリスチャンは父親の手の中から永遠の手を引き抜いた。
「おやおや失敬。永遠さん、わたし達のことはアダム、イヴと呼んでおくれ。わたし達は家族になるのだから」
「私、年上の方を呼び捨てにするのは…」
「ああ、君は日本人だものね。日本ではそういう習慣がないのだろう。では、アダムさん、イヴさんではどうかな?」
永遠は安堵の表情を浮かべた。
「はい。それなら」
「ねーえアダム、この人はやっぱり…。エリカの方がクリスチャンには相応しいんじゃないかしらー」
「イヴ、永遠さんに失礼じゃないか。君がパーティーを開きたがったのだろう?」
「だってー、この人はすぐに死んでしまうのよ」
言葉が重くあたりに漂った。




