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ラストメモリー  作者: 黄昏アオ
病は気から?
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波乱の招待状

 数日後、すっかり元気になった永遠は本当に三人で散歩をした後、台所に立っていた。キッチンに入って真っ先に目に飛び込んできたのはテーブルに山と積まれた熟れきった桃だった。

 いくらなんでもこれほどあっては食べきる前に腐らせてしまうと思った永遠は、鍋に桃と砂糖を投げ込んでコトコトいわせていた。

 匂いにつられて鼻をくんくんさせたブリスがやって来て鍋を覗き込んだ。

「ジャム?」

 「そうよ。味見したい?」

木ベラを鍋から取り上げ、そうっと熱いジャムを指先ですくう。

「うん、おいしい」

味に満足し、ブリスにもどうぞと木ベラを差し出す。

 ブリスはたっぷりジャムの付いた木ベラを無視して、永遠がさっき舐めた指を掴み自分の口に入れた。

「うまい」

 指にブリスの熱い舌を絡められて、永遠はビクッとし頬を上気させた。

 ブリスの視線が胸元を彷徨う。

 「何見てるの?」

視線の先を追い目を細めた。

 「今日は何色かなって思って。熱、出した日は白で、前に風呂場で見た時はピンクだったから…赤?」

 「赤なんて持ってません!」

 ブリスが無邪気な顔を見せる。

「何で?ぜってー似合うぜ。俺が買ってやろうか?」

 そんな顔しても騙されないんだから。どうせ破廉恥なスケスケだったりするのを想像してるんでしょう。

 「おい、風呂場で見た時とはどういうことだ?」

 クリスチャンが腕を組み、落ち着いた様子でドア枠にもたれていた。

 「まあ、いつからいたの?」

 クリスチャンはブリスが掴んだままの手に目を向けた。

「味見をするところから」

 永遠は目を丸くした。

「最初じゃない。声をかければいいのに」

 クリスチャンは眉を上げた。

「だがそうしていたら、こいつが君の下着姿を見たのは熱を出した日が初めてではないと知ることは無かった」

 ブリスは口角を上げていった。

「永遠に風呂に入れられた時に服が濡れて透けたんだよ。ピンクの下着が」

 クリスチャンは唸った。

「何ということだ。わたしは白しか知らないというのに」

 永遠はブリスから離れ二人を同時に睨みつけた。

「ねえ、さっきから白、白って勝手に私の下着を見たの?」

 クリスチャンは口角をピクリとさせ、ブリスは頭を掻いた。

 「それはだな、こいつが汗を拭いた方がいいと言うから」

 「だけど実際に永遠に触ったのはあんただろ」

 「お前も見たではないか」

 「俺は…」

 永遠が大声を上げた。

「もういい!止めなさい二人とも。どちらも同罪よ」

鍋に向き直り刑を言い渡す。

「このジャムは私のもの。あなたたちには一口だってあげないわ」



 食卓は惨めだった。皿にはただトーストだけが載せられていた。

 物欲しそうにブリスが永遠の方に目をやると、トーストの上には黄金色のジャムが鎮座し、かぐわしい香りを放っていた。目の前の瓶にはたっぷりと黄金色が詰まっている。

「美味かったなー。いーなー。ちょっとでもいーからくれないかなー」

 永遠は甘いトーストをぱくりと頬張り、だーめと答えた。

 髪を後ろでひとつに縛ったクリスチャンはブラックコーヒーを飲み、潔く刑を受けていた。

 「髪が伸びたのね、その髪型も似合ってるわ」

 「ああ、何度掻きあげても落ちてくるのでな」

 「そうなの。で、それは何?」

トーストを頬張ったまま目でテーブルに置かれた封筒を示した。

 「うむ?両親が送ってきたパーティーの招待状だ」

 「パーティー?」

 カップをソーサーに戻し、永遠に視線を据えた。

「わたしと君の婚約を祝うパーティーだ」

 永遠はブリスの伸びてきた手から瓶を遠ざけた。

「だけど私達は…」

 「エリカが両親に君の事を話したのだろう。嫌なら行かなくてもいいのだぞ」

 「いえ、ぜひ行きたいわ。あなたがよければ」

 クリスチャンは指先で封筒を叩きながら思案した。

 実際のところ行くつもりはなかった。婚約パーティーなどしなくとも、永遠といられるだけで十分だ。だが(ここ)を離れるというのは都合がいいかもしれない。さすがに両親の屋敷まではアレも付いては来られないだろう。

「そうだな。では招かれるとしよう」

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