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ラストメモリー  作者: 黄昏アオ
病は気から?
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歪な桃

 ブリスは明け方近くに戻ってきた。一目散に永遠の傍に寄り頬に触れた。

「下がってない」

頬に指を残したまま問う。

「目は覚ました?」

 クリスチャンは何度掻きあげても落ちてくる髪を煩わしそうに撫で付けた。

「ああ、何度か。水を飲ませた」

 「医者を呼んだ方がいーかもな」

 「この辺に医者はいない。いるのは…」

 「お医者様は要らないわ」

永遠が薄目を開けた。

 クリスチャンは永遠に顔を近づけた。

「大丈夫か?」

 それは愚問だった。ブリスは的確に尋ねた。

「水、飲む?食えるなら桃も食った方がいい」

 永遠は起き上がろうとしたが、熱に奪われた体力がそうはさせなかった。

ブリスが枕を支えにして、ヘッドボードにもたれかけさせた。

 永遠はそれだけで目が回り喘いだ。

 「寝ていたほうがいいのではないか」

 クリスチャンは横にならせようとしたが永遠はクリスチャンの腕を掴んでとめた。

 「大丈夫。私がいつまでも寝ていたら困るでしょう」

永遠は食事などの家事のことを言ったが、二人は永遠が苦しむことの方が困るのだと思っていた。

 「じゃあ俺、持ってくるな」

ブリスは走っていってしまった。

 二人きりになってクリスチャンは沈黙を埋められずにいた。

 「クリスチャン?ごめんなさい、いつも面倒ばかりかけてしまって」

 「そんなことはない!私は面倒だなどとは思っていない。ただ、その、わたしは…」

口を開いたが言えなかった。

 静かなときが流れ、口にされなかった言葉を思って、永遠は熱に潤む瞳をクリスチャンに向け悲しそうな微笑を浮かべた。

 「すまない」

 彼の謝罪が胸を少しずつ蝕んでいく。謝ってくれなければいいのに。ただ出て行ってくれと言ってくれさえすればいいのに。

 「持ってきたぜ」

部屋へ駆け込んできたブリスが差し出した皿には、ぎゅっと握りつぶしたかのようないびつな形にカットされた桃が山のように盛られていた。

 クリスチャンは眉を上げたが、永遠はブリスに笑顔と感謝の言葉を送り皿からひとつ摘まんだ。

 いくつか摘まむ間に濡れた指を咥える様子を二人は魅せられたように固唾をのんで見つめた。

 薬を飲み終えると永遠の空元気も切れ、ベッドに沈み込むとあっという間に二人は忘却の彼方に追いやられた。

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