燃える身体
クリスチャンは三分もしないうちに大量の桃を腕に抱えて戻ってきた。キッチンに入って桃をテーブルに置く。
もちろんそこにブリスがいるとは思っていなかった。表情を変えずに永遠の部屋に向かう。部屋の前には少しだけ扉を開け中を覗いているブリスがいた。
「本当に殺してやろうか?」
クリスチャンは音もなくブリスに近づき首に手をかけた。
「ああ、早かったな。せっかく今から…」
「黙れ」
手に力をこめる。
そのとき何かが二人の注意を引いた。
二人は先を争いベッドに駆け寄った。二人の人間離れした目には暗い闇の中でも永遠の真っ赤な頬がはっきりと見えた。それ以前に永遠の荒い息遣いが二人の聴覚を刺激したのだ。
「永遠?」
クリスチャンが永遠の頬に恐る恐る手を伸ばす。
熱い。クリスチャンは眉をひそめた。
「すごい熱だ」
「んなこと言われなくたってわかってるよ」
ブリスは部屋を出て行った。
クリスチャンは永遠の湿った頬に張り付いた髪をそっと払った。手はそのままに目を閉じる。
「あぁ、永遠すまなかった。わたしの責任だ。わたしは君を苦しめてばかりいる」
「やっとわかったのか、このバカやろう」
ブリスが部屋に戻ってきた。
手には水の入った桶とタオルを持っている。それをサイドテーブルに置くとシーツをめくった。永遠のワンピースのボタンに手をかける。
「おい、何をしているっ!」
クリスチャンはブリスの手を握りつぶさんばかりに掴んだ。
「汗を拭かねーと。冷たい水で拭けば熱が下がるだろうし。狼は母親が子どもを舐めてやるんだけど」
ブリスがちろりと舌を出す。
クリスチャンは眉を寄せ不快を表した。永遠を見下ろす。胸が激しく上下していて、ほんの少し手を下げるだけでそのふくらみに触れられる。
「それならばわたしがやる。お前は部屋から…」
「俺がチャンスをやったんだぜ。せめて見るくらいはいーだろ?」
永遠がうめき声を上げた。
「あぁ永遠、すぐ楽にしてやるからな」
クリスチャンは永遠の並んだボタンを外し始めた。
ブリスは黙って脇に立ち、何も見逃すまいと目を見開いた。
クリスチャンの手が永遠の胸をかすめる。
「なあ、どんな感じだ?」
クリスチャンはブリスを無視した。だが口には出さずに答えていた。柔らかい。
ついにすべてのボタンが外れた。ワンピースがわかれ、汗ばむ身体が顕わになる。その身体と白い清楚な下着の対比がエロティックだった。
「エロ」
ブリスの言葉にもっともだと思った。その反面、そんなことを考えている自分を下劣にも感じた。だからそれからはただ母親のように作業に専念した。
拭き終えたときには頬の赤みが少し引いていた。だが服を脱がせても何の反応もなかったことにクリスチャンの心配はいや増した。
「わたしは風邪なぞ引いたことがない。ほかには何をすればよいのだ?」
気に入らなくとも今はブリスに頼るしかない。
「そーだな、普通は食って寝りゃー治んだけど、永遠は体が弱そうだから薬も飲ませた方がいいんじゃねーかな?」
クリスチャンはなるほどというように頷いた。
「そうだな。では薬を」
そそくさと部屋を出ようとしたところをブリスが引き止めた。
「慌てんなって。ここが問題なんだよ。薬の前に何か食わせねーと」
普段から食の細い永遠に食べさせるのは至難の業だ。ましてや風邪を引いて食欲がないだろう永遠に食べさせるとなると…。
「わかった。桃も持ってこよう」




