食事論争
広間に戻ったクリスチャンはブリスを見て眉を上げた。
「で、お前は何をしている?とっくの昔に出て行ったのかと思っていた」
まったく忌々しい容貌だ。女なら誰でもこいつになびくだろう。どの女が気を持とうがどうでも良いことだ。だが、永遠は別だ。永遠はわたしのものだ。
「永遠の食事を用意すんだろ?俺も手伝ってやろうと思って」
クリスチャンは鼻を鳴らし、キッチンへと向かった。
「お前の分はないぞ。それを当てにしているなら」
ブリスのペタペタという足音がついてくる。
「あんたの作ったもんなんてこっちから願い下げだ」
ブリスの声がワントーン低くなる。
「あんた、永遠が全然食ってねーの知ってんのか?あんたが食えって言うほど、永遠は何も喉を通らなくなってる」
「…わかっている。それでも、そうするしかないのだ」
ブリスが牙を剥き、唸る。
「ほかにもっとやりようがあんだろうが」
クリスチャンは黙ったままだ。
「はぁ、だから俺が手伝ってやるっつってんだろ。大体あんた、何作るつもりなんだよ?」
ブリスはテーブルにもたれかかり、腕を組んだクリスチャンはシンクに寄りかかった。
「ステーキでも焼こうかと」
ブリスは頬を張られたように目を見開いた。
「冗談だろ?あんたが冗談を言うとは思えねーけど。マジで永遠がそんなもん食えると思ってんの?」
「わからない。だが栄養はある。彼女に必要なのは滋養のつくものだ」
「あんた、長いこと人と離れすぎたな。永遠に必要なのは…」
チラッとクリスチャンに目をやったブリスは、クリスチャンがその答えを本気で知りたがっていることに気づいた。
「フルーツだな。永遠は桃が好きだって言ってたぞ」
クリスチャンはブリスが答えを変えたことも、自分が知らない永遠を知っていることも気に食わなかった。
「桃だと?そんなものでは食事とは呼べない」
「けど、桃なら食えるかもしれねー。結局食えねーと意味がないんだぜ」
クリスチャンは目を眇めながらも言った。
「いいだろう。では、桃を買ってくるとしよう」
クリスチャンはヴァンパイアの笑みを浮かべた。
「その間、永遠には近づくな」
ブリスは牙を見せる。
「あんたに止められんのか?」
クリスチャンは一瞬でブリスの前へ移動し、顔を近づけた。
「あまりわたしを刺激しない方がいいぞ。お前なぞ簡単に殺せる」
ブリスは顔色ひとつ変えずに言ってのけた。
「なら急いで行った方がいいぜ」




