不揃いの目に映るもの
ブリスを風呂に入れるのは大変だ。
そのことに気づいたのは、バスルームの戸を閉めシャワーの栓をひねったときだ。
熱い湯が噴き出すと、ブリスはそわそわとバスルームを見回し出した。
まるで逃げ場を探しているようだわ。
永遠は苦笑をもらした。
バスルームは永遠一人には広すぎるほど広いが、大きなブリスと一緒だと少し窮屈に感じられた。
腕をまくり上げるとブリスに向かって湯を噴射した。
「ワフッ」
ブリスが驚いたような声で吠える。
湯を浴びて小さくなった体を揺すった。
「きゃっ」
あたりに水滴が飛び散り、水浸しになった。
だが、被害の大きさで言うと永遠が一番だった。
スカートは濡れ、脚に張り付き、シャツは下着が透けている。
永遠は自分の有様を見下ろすと、ブリスにチラッと目をやった。
ブリスはグリーンとゴールドの不揃いだが美しい瞳をじっと永遠に注いでいる。
その視線に顔が熱くなる。
相手は動物じゃないの。何を恥ずかしがっているのよ。
自分を叱咤すると、石鹸を手に大仕事に取り掛かった。
だがブリスの目はあまりにも人間的で意識せずにはいられない。
最後の泡を流し終えたときには、大雨に降られたかのようにぐっしょりと濡れていた。
バスルームの戸を開けながら言う。
「わたしもお風呂に入るわ、おまえのせいでびしょびしょだから。おまえは自分で乾かせるわよね、あんなに実践してくれたもの」
あれほど嫌そうだったのに、出て行こうとしない。
ただ永遠を見つめている。その視線は服を脱がないのか?と言っているようだ。
「脱がないわよ。おまえが出て行くまでは」
それでも出て行こうとしない。
永遠は目を細め、シャワーの栓をひねった。
「さあ、行きなさい」
ブリスは牙をむき出すと、のっそりと戸から出て行った。
戸を閉め念のために、開けられないとはわかっていたが、鍵をかけた。
「まったく、何てものを拾ってきたのかしら」
シャワーから噴き出した熱い湯とともに、永遠のつぶやきは排水溝に吸い込まれていった。




