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ラストメモリー  作者: 黄昏アオ
流離う心たち
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パンケーキを召し上がれ

 「さあ、話してちょうだい」

永遠はクリスチャンの前に朝食のパンケーキをおきながら言った。

 「ベッドから出ていいのか?食事ならわたしでも作れるぞ」

 「いいえ、もう平気よ。それにブリスは昨日食べられなかったんでしょう?この子はやせすぎよ。たくさん食べさせてあげなきゃ」

 クリスチャンは狼をにらんだ。

 こいつのどこが痩せすぎなのだ?

 大量の毛の下には、これまたたっぷりと肉が付いている。

 どこからどう見ても健康そのものではないか。

 狼は永遠に置いてもらったクリスチャンの三倍の量のパンケーキを涎を垂らさんばかりに凝視している。

 いや、すでに垂れている。

 クリスチャンは眉をひそめた。

 席に着いた永遠が「召し上がれ」と言うと、狼は大急ぎでパンケーキに攻撃を仕掛けた。

 「で、いつまでも話さないつもり?」

彼女は首をかしげクリスチャンを見た。

 「いや、話す。君が食べたら」

 痩せすぎとまでは言わないが、永遠はもう少し肉をつけるべきだ。

 昨日もほとんど食べていなかった。わたしが注意していなければすぐにでも痩せ細ってしまうだろう。

 彼女が自分の皿を見下ろし、小さく切り分けるとそのうちのひとつを口に入れた。

「食べたわ。早く話して」

 クリスチャンはパンケーキを大きく切ると自分も一口頬張り、どこから話そうかと思案した。

「エリカは確かにわたしの婚約者だ」

 永遠が眉を上げ続けるように促す。

 「だが、それは都合がよかったからだ。わたしがこの館に…こもるようになってから、わたしの母がさまざまな女を送り込んできたのだ。どの女も不愉快な者ばかりだった。一日中泣き喚いていたり、自分のことばかりを飽きもせず話し続けたり」

 そこでパンケーキを口に入れ咀嚼しながら続ける。

「わたしは自分の館にいられず気が狂いそうだった。そんなとき母がエリカをよこした。彼女は幼馴染だからわたしがどんなことを嫌がるか知っている」

 そこまで話したところで彼女が片手を挙げた。

 ブリスが永遠の脚を鼻で突き、空になった皿を足で引っかいている。

 彼女が一口しか食べていない自分の皿をブリスに与えようとした。

 「待て、永遠。それは君の分だ。食べなさい」

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