暗闇の中の光
「いや、君は間違っている」
クリスチャンは永遠とは対照的に静かに語りかけた。
「人は知らず知らずのうちに傷つけあっている。たとえ意図していなくとも、相手を傷つけずにはいられない生き物なのだ。君は自分以外は傷つけていないと言ったな。ならば、君が苦しむ姿を見て、わたしやブリスが傷ついていないとでも?君が」
一瞬詰まりながら続ける。
「…死んだときに、痛みや孤独が我々の中に残らないとでも言うつもりか?」
永遠の閉じられた瞳から涙がひとしずく流れ落ちる。
クリスチャンはそのしずくを指先で受けとめ唇にあてた。
それは彼の口にしょっぱさを残した。
「わたしも君を傷つけた。君が眠っている間、私は悔やんでいたのだ。エリカが、君のことは遊び相手で、自分はわたしの婚約者だと言ったとき、わたしは君に何も言わなかった。おじけづいたのだ。君が、すぐにいなくなってしまうのがわかっていながら心の中に入り込ませることが怖かった。だが、自分を守るために君を傷つけてしまった。君のことを、大切な存在だと言葉にしなければ心を守れると思ったのだ」
クリスチャンは自嘲的な笑みを浮かべた。
「だが出来なかった。君はすでにわたしの心を奪っていたから」
永遠は濡れた輝く瞳でクリスチャンを見上げていた。
「だから君が嫌がっても、君のことを壊れ物のように扱う。君が大切だからだ。もう無理に笑う必要はない。君の痛みや苦しみも、わたしも共に受け入れよう。君の痛みや苦しみが半分になるように。君のしたいように、ふつうに生きられるよう、わたしが手を貸そう。愛しい人よ」
永遠は眩しい本物の笑みで、シーツを持ち上げクリスチャンを誘った。
クリスチャンが横たわり、彼女を守るように腕に閉じ込める。
「もう一度お眠り。愛しい人」
初めて彼女を腕に抱き、寝顔を見つめた夜と同じ言葉をつぶやいた。
クリスチャンが永遠の額にやさしいキスを落としたときには、彼女は幸せな眠りに包まれていた。
ずいぶん後、永遠は一度クリスチャンを揺さぶり目を覚まさせた。
「どうした?」
「エリカは本当に婚約者なの?」
彼は笑い声を漏らし、永遠の頭を自分の胸に抱き寄せると「朝になったら教えてあげよう」と言ってすぐに寝息を立て始めた。
永遠は気になって眠れないと思ったのと同時に、彼の安定した鼓動にあやされすぐに眠りに落ちた。




