慰めを与え給う
火のはいっていない暖炉の前で、永遠は狼の傷に包帯を巻いていた。クリスチャンは永遠にもしものことがないように少し離れたところで狼にじっと目を据えている。
だが永遠が狼の足を持ち上げたりひっぱったりしても、狼は不揃いの目でじっと永遠を見つめているだけだった。クリスチャンと争う前からあった足の深い傷に永遠は眉をひそめた。
「仲間の狼とケンカでもしたの?」
狼が話せないのはわかっていても永遠は尋ねずにいられなかった。
返事をするように狼がウゥーと唸る。
見なくてもクリスチャンが後ろで身構えるのがわかった。
「クリスチャン、大丈夫だからこの水を換えてきてくれない」
クリスチャンはしぶしぶ赤く染まった水の入った桶を手に取ると、狼に鋭い一瞥をくれ部屋を立ち去った。
「やれやれ、やっと二人きりになったわね」
永遠は微笑み、狼の背に手を置いた。
「どうしてかわからないけど、おまえを見たとき通じ合うものを感じたの。多分、おまえが死のうとしてたから」
狼の不揃いな目が光る。光の加減でそう見えただけかもしれないが。
狼の柔らかな毛を撫でる。
「私もね、死ぬの。だけど別にかまわない。だって命あるものはみな死ぬのだから。ただそれが早いか、遅いか、それだけのこと」
永遠は手を止めた。
「だけど今は、自分がわからない。会ったばかりの人と、その人には婚約者もいるのに、それなのにずっと一緒にいたいと思ってしまうの。たった三ヶ月じゃなくて、永遠に」
狼の美しい瞳を見た。
彼にとって、私は何なのか聞く勇気もない。さっき森の中を歩きながら、何度尋ねようとしただろうか。だが、彼が私のことをなんとも思っていないと彼の口から聞かされるくらいなら、何も知らずに悶々と死んでいくほうがいい。
「私は彼にとってただの…」
狼の姿がぼやける。
狼が永遠の手に頭をすり寄せた。
「なぐさめてるの?」
永遠は輝く瞳で笑った。
クリスチャンが永遠を驚かせないためにわざと足音を立てて広間に入ってきた。
「何がおかしいのだ?」
口元に小さな笑みを漂わせた永遠はクリスチャンに向き直った。
「この世のすべてが」




