山と盛られた菓子
ほらとチョコレートのついた指を見せつけて、自分の口に運ぼうとするブリスの手を掴むと永遠はチョコを舐め取った。
「なっ…!」
ブリスの顔が赤く染まる。
永遠にはチョコレートの味しかわからなかったが、ブリスには永遠の気付いて欲しくないものの味が感じられたかも知れない。念には念を入れなくては…。
「そういうこと簡単にすんな」
自分のことを棚に上げてブリスは言った。
「ごめんなさい。おなかが空いて、つい」
「そんなに腹減ってんのか?じゃあ、これやるよ」
ブリスがサイドテーブルに置いた“これ”を指し示した。皿の上にはクッキーやらタルトやら歯の溶けそうなものが山と盛られている。
普段ならば迷わず口にしただろうが…。
「キティーが作りすぎたからっていっぱいくれたんだ」
キティーのことだから必要な数に足りなくなってもブリスの望むだけ与えてしまうだろう。
「ありがとう。でもちょっと、その、先に行きたいところが…」
「あぁ…俺のことは気にしなくていーよ。クッキーもちゃんと残しといてやるから」
ブリスがクッキーをつまんでいる間に永遠はそっと立ち上がった。ヘッドボードを握り締めて不意に襲ってきた不快感をやりすごす。
ドアを睨みつけて平静を装ったままたどり着く気力をかき集めた。
若干ぎこちないながらもやり遂げた永遠の額にはじっとりと汗が滲んでいた。
「永遠。…気をつけてな」
ブリスの言葉が小さな背中にかけられた。
ドアノブを握った永遠は声を絞り出した。
「何もありはしないわ」




