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読心術
冷たい風が通り過ぎる。
永遠の言葉に面食らいながらもアダムは丁寧に答えた。
「あとお願いがあります」
アダムは頷いた。
「あなたは僕の娘のようなものだ。何でも言いなさい」
「私の心を読んで下さい」
アダムは言葉に詰まった。
「そんなことを言われたのは初めてだよ」
アダムの目を見つめる。
「そのときが来たら、クリスチャンに伝えて欲しいんです」
アダムには“そのとき”が何を指すのかわかっていた。
「クリスチャンは…?」
永遠は悲しい笑みを浮かべた。
「彼は…望んでいません。私が彼を利用しようとしていると思っているから」
「馬鹿な!なぜそんな…」
アダムは自分の手を見下ろした。
「自分の息子ながら、まったく嘆かわしい。…僕がヴァンパイアに変えてあげることも出来るよ」
「…いいえ。永遠の命なんていりません。もしアダムさんに命を貰えば、彼は決して私を信用してくれなくなるでしょう。クリスチャンと共に生きられないくらいなら、私は…彼と過ごす二ヶ月を選びます」
永遠が手を差し出す。
アダムは息子の愚かさを呪いながら手を取った。
永遠はクリスチャンと同じ金の瞳が光を放つのを見ていた。
愛する人への最期の思いをアダムに託す。
彼への仕打ちのせめてもの償いになればいいと強く願った。




