ぶつかり合うケダモノ
クリスチャンが湖の見える場所まで来たとき、彼女と、恐ろしく近くにいる二メートルはありそうな狼が目に入った。
クリスチャンはすばやく狼に体当たりし、彼女から遠ざけた。
狼が唸りながら体をひねる。クリスチャンはさっと体を離し鋭い爪を避けた。
「だめっ!」
永遠が急いで駆け寄ると、クリスチャンにさっと抱えあげられ湖の反対側に運ばれた。
「ここにいろ」
永遠が反論しようと口を開いたときには、彼はすでに狼とぶつかり合っていた。
なんて速いのよ。
永遠は走って湖を回り彼らのもとにたどり着いた。互いの牙や爪を避けては相手に突き立てようと繰り出している。
どうしたらいいの。間に割って入ってもまたクリスチャンに向こうへやられてしまう。
覚悟を決めぎゅっと目をつぶると、大した怪我をしませんようにと祈りながらばったりと地面に倒れた。
うう、痛い。
だが肉のぶつかり合う音がやんでいる。薄目を開け様子をうかがうと髪を乱したクリスチャンが脇にいるのが見えた。
「永遠、大丈夫か?」
クリスチャンの向こうに息を荒げた狼が見えた。
ぱっと目を開き飛び起きると、心配そうなクリスチャンにおざなりに「転んだだけ」と言い、狼に駆け寄った。最初に見たときでさえ血を流しすぎていたのに、クリスチャンと争ったせいでそこらじゅうから血がにじんでいる。
「大変!手当てしなくちゃ」
永遠は誰にともなくそう言ったがクリスチャンが鼻を鳴らした。
「君を殺そうとした狼を助けるつもりか?」
「この子は私を殺すつもりなんてなかったわ。今はわからないけど」
クリスチャンに目をやると、髪は乱れ放題、服は破れだらけだった。だが傷はすでにふさがっている。
まったく、私が止めなかったらどちらかが死ぬまで傷つけあっていたわ。どちらが生き残るかは目に見えているけれど。
「この子を助けなくちゃ。このままじゃ死んでしまうわ、あなたの家に連れて帰りましょう」
クリスチャンは気でも狂ったのかといわんばかりに永遠を見つめ口を開いた。
彼の口から拒絶の言葉が飛び出す前に永遠はたたみかけた。
「お願い、クリスチャン」




