飼い猫だけどVRを満喫してますにゃん
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吾輩は猫である。
名前はチアーク・ペロー。
……え? 名前がもうあるのかって? もちろんにゃよ。馬鹿にするにゃなの!
ごほん、まぁその辺の野良猫には名前なんてにゃいしね。
疑うのも無理はないかにゃ……。
私は、御神家で飼われているれっきとした飼い猫にゃの。
だからきちんと名前を付けてもらってるのにゃ。
何だか日本人っぽい苗字だって? うん、正解にゃよ。
でも、お前の名前って外人(外国猫?)っぽいって?
あー……これは、ちょっとワケアリって奴ですにゃ。
チアーク・ペローという名は、私の飼い主が考案したものにゃ。
名前は、御神 楪。
マスターって呼べって言われてるから、私は彼女をマスターって呼びますにゃ。
もっとも、私は猫なので「にゃー」としか伝わらにゃいけど……。
マスターは由緒正しい名家、(本人は古いだけのボロ屋敷って言ってますにゃ)
御神家の御息女なのですが、ちょっと変わった人なのにゃ。
お兄様の譲さん曰く、「アイツはちょっとこじらせてる」とか
「厨二病か……やれやれだぜ」だそうなのですにゃ。
あ、貴方「あー、分かるわwww」って思ったにゃ?
きっとご主人様の同士なんですにゃね!
話はそれちゃったけど、
私の名前はそんなチューニなマスターが、とてもご機嫌な時に、
右手を押さえて(包帯でぐるぐるですにゃ。怪我はしてないのに何故巻いてるんでしょうね?)ぶるぶると震えながら、
「長靴を履きし、猫又に相応しい名だ!
汝、使い魔チアーク・ペローよ。我が軍門に下るが良い」
と言って命名してくれましたのにゃ。
(長靴は履いてないし、尻尾は普通に1本ですにゃ)
マスター渾身の命名です。
(使い魔の儀式だとか言ってました。難しいことはわかんにゃいですにゃ)
とにかく、特別な名前らしいって事が重要にゃんだとか。
そんな、特別な名前がもらえる私は、きっとマスターにとって、
とても特別な存在に違いないですにゃ。マスター大好きですにゃー!
マスターは今、高校生。
その位の年代の子って、皆さんVRMMOなるものに夢中になるらしいですにゃ。
VR装置というのを使って、仮想世界を冒険する遊びが流行っているんですにゃ。
えーっと、特に今流行りのは……、マスターも当然プレイしてるんですけど、
(廃神って言われてるらしいですにゃ。神様にゃ? 流石はマスター!)
なんでしたっけね……あ、そうそう思い出しましたにゃ。
『The picture book of goddess Online』ちょっと長い名称ですにゃ。
通称:絵本にゃ。
絵本をモチーフにした世界感と、
自由なプレイスタイルが売りのゲームだそうですにゃ。
あと、ちょっと変わってるシステムが搭載されていまして。
このゲーム、なんとペットの同伴が可能なんですにゃ。
ゲーム内ペットじゃないですにゃよ?
本物の自宅で飼われている犬や猫に装置を付けると、
一緒にVR世界を体感出来るんですにゃ。
何でも、VRの標準機能の1つ『翻訳・通訳』システムを応用して、
赤ちゃんや動物の考えていることを翻訳してくれるようになったんですにゃ。
そこから発展して、ゲームシステムに取り入れたようですにゃ。
大昔には、ペット翻訳機械なんてものがあったらしいですけど、
そんなものより遥かに高性能なんだとか。
最近では、ペット専用のVR機器なんてものもあるのですにゃ。
ここまで言ってしまえば、もうお察しかもしれませんね。
そうですにゃ、私もペットなのですが、
マスターのゲームに同行させてもらっていますのにゃ。
まぁ、私はただの猫なので、マスター達の本格的な遊びはできませんにゃ。
モンスター退治とか、クエストとか……。
もっぱら、ギルドホームという場所でお留守番かショップの横で、
招き猫をやらせてもらってますにゃ。
ですが、仮想世界ならマスターに「にゃあ」ではなく、
ちゃんとした言葉でお話しすることが出来ますにゃ。(ちょっとカタコトですけど)
それだけでも、幸せですにゃよ。
◇ ◇ ◇
いつものように、私はマスターに同行して、
マスターが立ち上げたギルド『理想郷』のホームに来てますにゃ。
今日はショップじゃなくて、ギルドマスターの部屋でごろごろ。
フィールドにもダンジョンにも行かずに、特に大きなイベントもないので、
たくさんかまってもらってますにゃ。
「マスター」
「ん? なあに?」
「ダイスキー!」
「ぐはっ! ウチの猫マジでちっちゃくて可愛いハァハァ」
呼吸が荒いですにゃよマスター、風邪ですにゃ?
うにゃ……そんなにぎゅうぎゅうされると苦しいですにゃー。
「いやー! ハナセー」
「うーん、猫可愛いーっ。ホント癒されるわー。猫ちゅっちゅ」
「やめろにゃ」
酔っ払いのおじさんみたいだから嫌ですにゃん。
まったく、ちょっと「スキー」って言うとすぐ、もちゃもちゃにするんだから……。
しょーがにゃい、こうなったら必殺、
「ネコぱーんち! てしてしっ」
「もー! 何だコイツ可愛いなぁ……よしよし」
「うー……てしてしっ!」
うな!? 余計悪化したにゃ。
でれでれしちゃって、変なマスターですにゃ。
あ、ちょ。急に抱っこしにゃいでくださいにゃーーっ!!
「何ですにゃ? マスター」
「……」
何やらマスターが真剣な面持ちで見つめてくるにゃ。
思わず見つめ返しちゃうにゃ。うにゃー、何だか恥ずかしいけど、
目を逸らせないのが、悲しいかな動物の性ですにゃね……。
「……っ!(上目使いgj)
わ、我が魅了無効をスキルを打ち破るか。
流石は猫又族、上級職:猫皇帝<ニャンペラー>といったところか」
うにゃ、チューニスイッチをぽちっとなーしてしまったにゃ。
『猫皇帝<ニャンペラー>』なんてジョブあったにゃ?
そもそも、私はマスターの非戦闘用ペットとして登録されてるから、
そんなステータスなんてありませんにゃー。
もしかして、寝ぼけてるにゃ?
「マスター、寝ぼけてないでオキローにゃ!」
寝落ちはダメだって言ってましたにゃ。
がぶがぶして起こしますにゃ(システム的にOKな範囲の甘噛みですにゃ)
「いたたっ……。『鬼食い<オーガキラー>』はやめっ……あたたた!」
あ、それって鬼特攻が付いた攻撃スキルですにゃ!
この前、マスターが言ってたことを覚えてましたにゃよ!
ふふん、私って賢い猫ですにゃ!
マスターのジョブって、『吸血鬼<ヴァンパイヤロード>』だから、
一応効くんでしたよね。
「鬼って付くからって、ヴァンパイヤまで特攻に入れないでよっ!
ただでさえ、弱点多くて不憫な扱い受けてる種族なのにっ!」
って、大号泣してたから覚えちゃったにゃ。
む、だから私に攻撃スキルなんかにゃいですにゃーーっ!
……もういいですにゃ、ログアウトしてマスターのお母様にごはんもらいに
行きますにゃー。マスターなんてしらにゃいのにゃ。
「マスターキラーイ」
「げふっ(吐血)。そ、即死スキルなんて……我が猫ながら恐ろしい……がくっ」
そんにゃのないにゃ。死んだふりするなーにゃの!
まったくマスターったらしょうがにゃいですにゃ。
キラキラ光って、ぱっと消える死亡演出まで再現しなくてもいいですにゃ。
マスターが消えるのと同時に、地面へすとんと着地。
ペット用のゲートをくぐって、ログアウトしますにゃ。
さっそく、お母様ところへ向かい餌を催促すると、
「あら? チアちゃん今日は馬鹿娘と一緒じゃなかったかしら?」
「うにゃーん(そうですにゃ。マスターなんて知らないにゃ)」
「また、もちゃもちゃにされたんでしょ? 可愛がるのはいいけど、
家でもVRでもかまわれたら、チアちゃんだって嫌よねー。
まったく、加減ってものを知らないんだから」
「にゃ!(まったくですにゃ)」
どうやら、お母様はお見通しだったみたいですにゃ。
「今日は特別ね」って言って、スペシャルな猫缶を開けてくれましたにゃ!
マスターは好きだけど、やはり、餌をくれる人は偉大ですにゃー。
「美味しい?」
「はぐはぐ…………うなー♪(うまうまにゃー!)」
お腹が満たされれば、マスターへの怒りもどっかいっちゃったにゃ。
我ながら、単純だなーと思うけど……猫なんてこんなもんですにゃーん。
……マスターがログアウトして、帰ってきたら「さっきはごめんなさい」ってするにゃ。
あと御膝にのんのして、丸まって寝てやるのにゃ。
1人称の練習用に書いた短い短文です。