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愛される風の聖女は言うんじゃなくて言わせたい  作者: 満原こもじ


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第3話:戸惑い

 王都に到着したフーカは、早速冒険者ギルドを訪ねる。

 王都でも楽しく冒険者活動できるといいな。

 そしていろんな技を覚えたい。


「フーカさん、一三歳ですね。御用件は何でしょうか?」

「冒険者になりたいです。登録をお願いします」

「王都の冒険者ギルドは初めてですね? どこか地方で経験はおありですか?」

「うん。ロセナのギルドで一年間冒険者をしてました」


 王都冒険者ギルドの受付嬢は、ロセナのギルドが地方では大きいほうだと知っていた。

 しかし女の子が一年間冒険者登録をしていただけなら、フーカの実力は初心者に毛が生えたようなものだと早合点した。

 フーカの装備品は質のいいものだったが、剥ぎ取り用と思われるダガーしか武器を装備していなかったということもある。


「ロセナのギルドの紹介状をお持ちですね。通常新加入者はFランクからスタートしますが、紹介状がありますからEランクで登録しておきます」

「Eランク? ランクってなあに?」

「王都では冒険者のランクを、実力と実績に応じて上からS、A、B、C、D、E、Fの七つに階級分けしているのです」

「じゃあランクを聞けばその冒険者の大体の強さがわかるんだね?」

「はい、そういうことです」


 ロセナのギルドでは冒険者全員がフーカの知り合いだった。

 だから各自の実力も把握していた。

 でも登録冒険者の数が多い王都のギルドでは、そういうわけにはいかないのだろう。

 ランクというものを設定してわかりやすくしているんだろうな、とフーカは思った。


「Fランクは見習いです。ソロでの魔物との戦闘が緊急時以外認められていません。Eランク以上は魔物との戦闘が認められ、ソロでも探索可能となります。しかしフーカさんは王都のギルドにいらしたばかりですし、どなたかとパーティーを組むことをお勧めいたします」

「ランクが上がると何が違うの?」

「使える転送魔法陣が違います」

「王都の冒険者ギルドに転送魔法陣というものがあるとは聞いていたけど」


 王都冒険者ギルドには複数の転送魔法陣が設置されており、魔物の生息しているエリアに通じていると説明された。

 だから魔物のいそうにない王都でも冒険者活動ができるのかと、フーカは素直に感心した。

 王都の冒険者ギルドすごい。


「それぞれの転送魔法陣に依頼が設定されているのですよ。何らかの素材や薬草を持ってこいというものが多いです。依頼をこなさなくても、魔物素材の売買だけで生活している方もおります」

「ちなみに冒険者ランクを上げるにはどうしたらいいの?」

「依頼に設定されている貢献度というものがあります。完遂した時にポイントがもらえますので、それを一定値以上溜めればよろしいです。あるいはそのエリアの最強モンスターをソロで倒すかですね」

「わかった。早速行ってくるね」

「あっ、少々お待ちを。ギルドカードをお作りいたしますので」


 ギルドカードは登録された冒険者のステータスを表示できる身分証明書であり、魔物の討伐をも証明できる優れものだった。

 フーカは再び感心した。

 王都の冒険者ギルドすごくすごい。


「では、ギルドカードをお渡ししておきます。どうしましょう? 依頼をお受けになりますか?」

「いや、今日は軽くフィールドを見るだけにしとこうと思って」

「ああ、下見ですか。とてもよろしいかと思います」


 受付嬢はフーカが一人で探索に行きそうだと心配したが、軽く見るだけと知って安心した。

 一時間後、フーカがギルドに帰ってきた。


「受付のお姉さん、剥ぎ取った素材はどうしたらいいかな?」

「えっ、剥ぎ取った素材?」


 様子を見に行っただけではなかったのか、と受付嬢は困惑した。


「……これミノタウロスの角ですよね?」

「うん、結構なサイズのウシ男も出た」

「ギルドカードを確認させてもらってよろしいですか?」

「はい」


 ギルドカードにウソは吐けない。

 共闘の時にどちらの貢献度がどれだけかということで揉めることはあっても、ソロなら実績が正しく記録されるはず。

 本日の討伐実績がシルバーウルフ五体とミノタウロス一体。

 一三歳の女の子が一人で?

 Eランク登録したばかりの新人がほんの一時間で挙げられる実績じゃない。

 受付嬢は混乱した。


「これはどういうことですか?」

「たまたまシルバーウルフの群れを感知したから、風下から不意打ちしたの。ミノタウロスはその後に出た」

「シルバーウルフの群れを不意打ちって……」


 シルバーウルフは鼻の利く敏感な魔物だ。

 不意打ちを食らいやすい魔物であっても、不意打ちするなんて聞いたことがない。

 単体ならそう強い魔物じゃないが、ほとんどの場合群れているのでソロの冒険者は避けるのが常道だ。

 でもギルドカードはシルバーウルフ五体の討伐実績を記録しているし、どういうこと?

 受付嬢はますます混乱した。


「……フーカさんは魔法使いなのですか? 杖をお持ちではありませんが」


 受付嬢の絞り出した推測とはそれだった。

 武器の貧弱なフーカがシルバーウルフの群れを倒せるとしたら、攻撃魔法しかないと考えたのだ。


「あたしは風の神様の加護をいただいているんだ。その関係で風魔法に似た技をいくつか使えるの。ほら、ギルドカードのここ見て」

「ゼフノボレロスの加護。な、なるほど。えっ? ということは魔法と違って持ち魔力量に関係なく撃ち放題?」

「うん。おかげさまで」


 しかもレベル二〇を超えている。

 フーカがとんでもない逸材であることに受付嬢が気付いた瞬間であった。


「素材は買い取りカウンターがありますので、そちらで売却してください。もし都合よく依頼に当てはまっていれば、依頼書を添えて提出していただくと金額的に割りがいいですし、貢献度ポイントも得られますのでお得ですよ」

「わかった。お姉さんありがとう!」

「お待ちくださいませ。エリア最強の魔物ミノタウロスを倒していますので、冒険者ランクをDに引き上げます」


 受付嬢にとってみればこれは当然の措置だったが、他の冒険者にとってみれば一三歳のルーキー少女のランクがDなんて胡散臭いことこの上なかった。

 しかも二日後にはフーカの冒険者ランクはBにまで上昇していた。

 無名のギルド新加入者、小柄な少女で目立った武器を所持しているわけでもない。

 またある程度の身体能力はありそうだが、特に優れているようにも思えない。

 フーカはべつに秘密にしているわけではなかったものの、ゼフノボレロスの加護持ちであることは個人情報として伏せられていた。

 だから周りの冒険者にとってはわけのわからない状況だった。

 

 冒険者達の出した結論はこうだった。


「おそらく貴族のお嬢だ。何らかの実績が必要で、冒険者ランクを買ってるんじゃないか?」

「そういうことかよ。近寄らないに越したことはねえな」


 間違った噂が冒険者達の間で流布される。

 知らないエリアだから、誰かとパーティーを組みたいと考えているにも拘らず、フーカは他の冒険者に避けられてしまうのだった。

 フーカは戸惑った。

 王都の冒険者ギルドは、ロセナと全然勝手が違うなあと。


「ランクBの転送先ともなると、ソロじゃキツいなあ」


 フーカは知らなかったが、ランクBの冒険者ともなるとクドナック王国全体でも数人しかいないのだ。

 どちらにしてもランクBの転送魔法陣を攻略ないし捜索対象にしているなら、パーティーメンバーを得るのは難しかった。


「……魔物だ。風下から近付いて」


 ランクBの転送先にて。

 いつものパターンで風下から不意打ちしようと思ったが、フーカは眠くなってしまった。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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― 新着の感想 ―
フーカちゃんはロセナ時代を1年で駆け抜けたんですね。 まさに風の申し子です。 ロセナで楽しそうだっただけに、王都でひとりぼっちなのがさみしいです。 なんかピンチみたいなんですけど、大丈夫でしょうか。
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