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実家暮らしの引きこもりニート、姪の迎えに行く途中で異世界転移した結果、物語を語るだけで生きてます  作者: 雪だるま


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 王都ルグバレア。


 劇場街。


 現在。


 空前の異界文学ブーム。


『悪役令嬢と氷の公爵』

『軍師無双伝』

『妖怪恋愛百景』


 若者は熱狂。


 貴族令嬢は泣き。


 劇場は連日満席。


 だが。


 当然。


 全員が喜んでいるわけではなかった。


◾️ 古参劇作家たち


「……ふざけるな」


 老劇作家ガルディンは酒を叩きつけた。


「何だあの低俗な恋愛劇は」


 酒場の空気が重い。


 周囲には同業者たち。


 全員顔が死んでいた。


「また“婚約破棄”だ」

「また“実は最強”」

「また“悲恋”」


「客が全部そっちへ流れた」


 劇場収入激減。


 特に。


 古典派が深刻だった。


 今まで人気だった、


* 英雄叙事詩

* 神話劇

* 王家悲劇

* 騎士道劇


 これらが。


 急激に古臭く見え始めた。


「若い連中はもう感情の起伏が強い劇しか見ん!」


「“続きは次回!”とかいう下品な手法まで……!」


「だが売れている……!」


 そこが最悪だった。


 批判できない。


 実際面白い。


 そして。


 もっと憎たらしいことに。


「……」


 レイ本人。


 別に偉ぶらない。


 芸術家面もしない。


『のだっ♡』

『働きたくないのだぁ♡』


 あの態度。


 ガルディンはそれが余計に気に食わなかった。


「芸術を舐めている」


「……」


「なのに」


 酒を飲み干す。


「なぜあんなに面白い」


 誰も答えられなかった。


◾️ 一方その頃


「のだぁ〜♡」


 レイ。


 普通に劇場へ来ていた。


「今日は神話劇なのだぁ♡」


 王都中央大劇場。


 本日は。


【炎神アルカディアの悲劇】


 この世界では超有名な古典劇。


「のだっ♡」


 レイはワクワクしていた。


 完全にオタク。


「異世界の神話なのだぁ♡」


 侍女たちは苦笑する。


「本当に好きですね」


「うむっ♡」


 レイは真顔だった。


「ゲームいっぱいやってたから神話好きなのだぁ♡」


 実際。


 レイはかなりゲームオタクだった。


 RPG。

 ファンタジー。

 神話モチーフ。


 大好物。


 だから。


 異世界本物神話。


 そりゃ気になる。


「のだぁ〜♡」


 レイは前のめりだった。


 そして劇開始。


◾️ 神話劇


『炎神よ!!』


 舞台。


 巨大演出。


 神々。

 英雄。

 戦争。


「おおっ♡」


 レイの目が輝く。


「ちゃんと神話なのだぁ♡」


 テンション高い。


 周囲の客がチラチラ見る。


 今やレイ本人も有名人。


「あれレイ様では?」

「本物だ……」


 しかし。


 レイは気にしない。


 完全に観劇モード。


『神は人を愛した』

『故に滅びた』


「うおぉ……」


 レイは普通に感動していた。


「重いのだぁ……」


 この世界の神話。


 かなり暗い。


 神も死ぬ。

 英雄も死ぬ。

 救いも薄い。


 でも。


 だからこそ味がある。


「良いのだぁ……」


 侍女が驚く。


「レイ様でもこういう古典好きなんですね」


「当たり前なのだぁ♡」


 レイは真顔。


「面白いものは面白いのだぁ♡」


 これがレイの本質だった。


 別に。


 古典を馬鹿にしているわけではない。


 むしろ。


 めちゃくちゃ好き。


 ただ。


 摂取した量が異常。


 だから混ざる。


「のだぁ……」


 レイは舞台を見つめる。


「これ絶対ゲーム化したら売れるのだぁ……」


「また始まった」


 レイ脳内ではもう、


【炎神アルカディアRPG化計画】


 が始まっていた。


◾️ 劇作家ガルディン


「……?」


 舞台裏。


 老劇作家ガルディンは観客席を見る。


「……」


 レイ。


 めちゃくちゃ真剣に見てる。


 笑ってない。

 茶化してない。


 むしろ。


 普通に感動してる。


「……」


 ガルディンは少しだけ困惑した。


 異界文学の男。


 若者文化破壊者。


 古典殺し。


 そんなイメージだった。


 だが。


「……」


 レイは本当に舞台を楽しんでいた。


『おおぉぉ……』

『この伏線熱いのだぁ……』


 普通にオタクだった。


◾️ 終演後


「最高なのだぁ♡」


 レイ大満足。


「神が人を愛した結果滅ぶとか最高なのだぁ♡」


「感性が重いですね」


「古典悲劇って感じなのだぁ♡」


 レイは興奮していた。


「しかも最後の独白良いのだぁ!」

「あと炎演出も良かったのだぁ!」

「神話武器絶対人気出るのだぁ!」


 止まらない。


 その時。


「……異界文学管理官」


「のだ?」


 振り返る。


 老劇作家ガルディン。


 周囲がざわつく。


 古典劇の大御所。


 そして。


 レイ嫌いで有名。


「……」


 レイは首を傾げた。


「おおっ♡作者なのだぁ?」


「……そうだ」


「最高だったのだぁ♡」


 即答。


「炎神の孤独感めっちゃ良かったのだぁ♡」


「……」


「あと最後の“愛したから滅びた”って構図めっちゃ好きなのだぁ♡」


「……」


 ガルディンは止まった。


 レイは続ける。


「あとぉ!」


「まだあるのか」


「神話武器もっと盛れるのだぁ♡」


「盛るな」


「あと敵側視点スピンオフも絶対人気出るのだぁ♡」


「……」


 ガルディンは思った。


(こいつ……)


 文学を舐めてるわけじゃない。


 むしろ。


 異常にコンテンツ好き。


 全部。


 摂取対象。


 神話も。

 古典も。

 恋愛も。

 妖怪も。


 全部面白がってる。


「……変な男だな」


「のだっ♡」


 レイは笑った。


「面白いものいっぱいある世界は最高なのだぁ♡」


 ガルディンは少しだけ黙った。


 そして。


 ほんの少しだけ。


 憎悪が薄れた。

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