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『諸葛孔明 星辰の理(ことわり)』  作者: velvetcondor guild


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第八十六話:白銀の共鳴、成都開門の説得

第八十六話:白銀の共鳴、成都開門の説得


執筆:町田 由美


 成都を包囲する劉備軍の陣営。私は、馬超(孟起)と趙雲(子龍)の二人が並び立つ姿を、本陣の天幕から見守っていた。

 西涼の錦・馬超は、その気性の荒さで知られていたが、趙雲に対してだけは、出会った当初から一目置いていた。馬超が張飛と死闘を演じた際、その凄まじい攻防を冷静に見極め、絶妙な間合いで割って入り、両者の刃を収めさせたのが趙雲だったからである。

 「子龍殿。……貴殿の槍、長坂坡での噂は聞き及んでいたが、これほどまでに『静』と『剛』が同居しているとは。……我が西涼の槍とはまた違う、ことわりを感じる」

 馬超は、自分より若く、それでいて深淵のような落ち着きを払う趙雲に対し、武人としての深い敬意を込めて語りかけた。

 「孟起殿。……槍は己を誇るためのものではなく、主君の道を拓くためのもの。……貴殿の加入により、我が槍もようやく真の『矛』となれます」

 趙雲の謙虚な言葉に、馬超は豪快に笑い、その肩を叩いた。

 「ははは! 諸葛軍師が私を信じ、この成都の最終交渉を任せてくれたのも、貴殿という『不抜の盾』が後ろに控えているからこそ。……ゆこう、子龍殿。血を流さず、この巨大な門を抉じ開けるぞ」

 私は、法正と共に、二人が城門へと近づくのを見守った。

 「軍師。馬超殿を交渉に行かせるとは、大胆な賭けですな。……劉璋殿は彼を恐れている」

 「左様です、法正殿。……恐れは、時に敬意へと変わる。……馬超殿の圧倒的な武威と、趙雲殿の誠実さ。この二人が並ぶことこそ、劉璋殿に『もはや抗う術なし』と悟らせる最大の言葉となるのです」

 城門の前。馬超は大音声を張り上げた。

 「――成都の領主、劉璋殿! 私は西涼の馬超! 曹操に抗い、一族を失い、流浪の果てに劉備将軍の『徳』に出会った男だ! 貴殿がこのまま門を閉ざし続ければ、成都は灰となる。だが、今この門を開けば、将軍は貴殿の命を保証し、民を安んじることを誓われている!」

 続いて趙雲が、一歩前に出て静かに語りかけた。

 「……劉璋殿。我らの軍師・諸葛孔明は、蜀の法と秩序を整え、民に実りをもたらす準備を終えております。……張松殿、龐統殿。多くの血が流れましたが、これ以上の血は不要です。……どうか、蜀の未来のために、賢明なる決断を」

 城壁の上では、劉璋が震える手で欄干を掴んでいた。

 馬超の猛々しさと、趙雲の清廉さ。そして、その後方に控える三十三歳の軍師が放つ、目に見えぬ「時代のうねり」。

 

 数刻の後。

 成都の巨大な城門が、重々しい音を立てて開いた。

 劉璋は自らを縛り、降伏の儀式を行うべく、白衣を纏って現れた。

 私は馬を走らせ、劉璋の前に進み出た。

 「……劉璋殿。……ご決断、感謝いたします。……これで、蜀の民は救われました」

 

 私は、開かれた門の向こう側に、新たな国家の夜明けを見た。

 張飛が江州で厳顔を降し、趙雲が長江を制し、馬超がその威名で城を落とした。

 

 「……士元殿。……見ていますか。……成都に、龍の旗が翻ります」

 西暦214年、夏。

 劉備将軍は益州の主となり、天下三分の計は、ついにその「足」を三本揃えた。

 孔明は、歓喜に沸く成都の市中を歩きながら、すでに次なる「法」の編纂と、荊州の関羽へ送るべき次の一手を思考し始めていた。



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