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第百五十九話:剣閣の雲隠れ、東方への龍飛
第百五十九話:剣閣の雲隠れ、東方への龍飛
執筆:町田 由美
西暦263年、冬。剣閣の峻険な崖に、蜀漢の軍旗が最後まではためいていた。
鄧艾が陰平を越え、成都の劉禅が降伏したという報が届いたその夜、姜維は軍を解散させた。だが、彼は死ななかった。
「伯約様、船の用意ができました。密偵たちが拓いた、東の果てへ続く航路です」
諸葛氏が、月明かりの下で夫の手を握る。隣には、祖父・趙雲の銀槍を携えた趙広(孫)が、不屈の瞳で立っていた。
彼らは「蜀の滅亡」を背に、闇に紛れて戦場を去った。
(チャチャ入れ:司馬懿)
「……はぁ!? 逃げただと!? 孔明、お前の弟子は往往にして往かない(死なない)のか! 鍾会も鄧艾も、空の陣地を見て呆然としておるぞ。わしの息子(司馬昭)の面目丸潰れではないか!」
(天の声:諸葛孔明)
「……仲達、お前が『土地』を奪っても、彼らが持つ『志』までは奪えなかったようだな。……彼らは行く。私の兄(諸葛瑾)や、かつての徐福が見上げた、日出ずる処へ」




