第百五十七話:双天才の挟撃、麒麟の咆哮
第百五十七話:双天才の挟撃、麒麟の咆哮
執筆:町田 由美
西暦262年、秋。侯和。
姜維は、かつてない壁にぶつかっていた。
目の前には、不屈の守護神・鄧艾。そして、その後方から「書物の山から生まれた悪魔」と称される若き天才・鍾会が、十万の軍勢を率いて姜維の退路を断とうとしていた。
「姜伯約。……君の兵法は美しいが、古い。これからは、私の理論が大陸を支配する」
鍾会は涼やかな顔で、姜維の補給路を数学的な精密さで封鎖していく。
(チャチャ入れ:司馬懿)
「……カカカ! 見ろ孔明! 鄧艾の『泥臭き執念』と、鍾会の『研ぎ澄まされた才気』。わしが遺した二つの刃が、今、お前の弟子を両断しようとしておるぞ。……姜維め、もはやこれまでよ!」
(天の声:諸葛孔明)
「……仲達、お前は相変わらず自分の駒に惚れ込みすぎる。……伯約を見よ。彼は絶望の淵で、私ですら見せなかった『笑み』を浮かべているぞ」
絶体絶命の姜維の横に、白錦を纏った妻・諸葛氏が並び立つ。
「伯約様、鍾会の『論理』は完璧ですが、それゆえに『想定外の狂気』に弱い。……趙の若龍、準備はいいですね?」
「はっ、奥方様! 祖父・趙雲より伝わる、敵陣を一人で掻き回す『乱龍の法』……今こそ披露いたします!」
趙の若武者が、自ら囮となり鍾会の本陣へと単騎で突撃した。論理的な予測を超えたその無謀な武勇に、鍾会の精密な陣形が一瞬、戸惑いを見せた。
その隙を、諸葛氏が放った密偵たちの「地底からの火」が突く。鄧艾の陣地の地下に仕掛けられた地雷火が連鎖的に爆発し、地形そのものを書き換えた。
「鄧艾! 鍾会! ……貴様らの知恵が、一人の男の執念を越えられると思うなッ!!」
姜維の咆哮が、戦場を震わせる。
(チャチャ入れ:司馬懿)
「……うわぁぁ! 鄧艾、またお前の足元だ! なぜいつもいつも諸葛の女に地面を掘られるのだ! 学習しろと言っておろうが!」
(天の声:諸葛孔明)
「……仲達、お前が育てたのは『秀才』だ。だが、私の姪が育てたのは、泥にまみれても死なぬ『執念の獣』なのだ。……伯約、行け! 歴史の帳尻を合わせる時だ!」
二人の天才を相手に、彼は死地を「勝利への祭壇」へと変え、魏軍の包囲を内側から食い破る。




