表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『諸葛孔明 星辰の理(ことわり)』  作者: velvetcondor guild


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/161

第百五十五話:再授の印、腐食する聖域

第百五十五話:再授の印、腐食する聖域


執筆:町田 由美


 西暦259年、成都。

 姜維の前に、再び「大将軍」の印が置かれた。だが、その印を差し出したのは劉禅ではなく、その背後で嘲笑を浮かべる宦官・黄皓であった。

 「姜大将軍……。また北へ行かれるのですか? 陛下は、戦よりもこの成都の平和を愛しておいでです。……ほどほどに、なさいませよ」

 黄皓のねっとりとした声が、宮殿の空気を汚す。姜維は黙って印を掴み、背を向けた。

 大将軍府に戻った姜維を待っていたのは、密偵一号からの衝撃的な報告であった。

 「伯約様……。黄皓が、漢中の守りの要である『外郭の防衛線』の予算を削り、自分の私邸と道士への供え物に回しています。……このままでは、魏軍が攻めてきた際、漢中はひとたまりもありません」

 妻・諸葛氏は、密偵の中で培った冷徹な筆致で、崩壊しつつある防衛拠点のリストを姜維に示した。

 「……伯約様、これが『内なる敵』の正体です。司馬昭が十万の兵を送るよりも、この一人の小人が蜀を滅ぼそうとしています」

 (天の声:諸葛孔明)

 「……劉禅よ、なぜそれほどまでに目が曇った。……伯約、すまぬ。私がお前に遺したのは、司馬一族という強敵だけでなく、この腐りゆく朝廷という、救いがたい泥沼であったか」

 (チャチャ入れ:司馬懿)

 「……カカカ! 見ろ、孔明! これが人間の本性よ! どんなに高潔な理想を掲げても、内側の欲が全てを台無しにする。……昭よ、手出しは無用だ。姜維が北で鄧艾と睨み合っている間に、黄皓というシロアリに蜀の柱を食い尽くさせればよい!」

 姜維は、震える手で妻の肩を抱いた。

 「……私は、先生からこの国を託された。たとえ成都が腐り果てようとも、私はこの剣を捨てるわけにはいかない」

 「伯約様。……成都の闇は私にお任せください。大叔父様が遺された『密偵の真価』、今こそ見せる時。黄皓が何を企もうと、漢中の要衝は私が『影』の予算で維持してみせます」

 諸葛氏は、かつて叔父・諸葛誕が死を以て守った一族の誇りを胸に、自らも闇へと沈む決意を固める。

 

 彼は、表では大軍を率いて魏を牽制し、裏では妻が支える「影の蜀漢」と共に、滅びの足音に抗い続ける。

 (チャチャ入れ:司馬懿)

 「……おい、孔明。お前の姪、わしの真似をしておるぞ。表向きの法を無視して、裏で軍を動かす……。あれはもはや、わしと同じ『野心家』のやり口ではないか!」

 (天の声:諸葛孔明)

 「……仲達。彼女が守ろうとしているのは『私欲』ではない、『志』だ。……その違いを、お前は永遠に理解できぬのだろうな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ