表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『諸葛孔明 星辰の理(ことわり)』  作者: velvetcondor guild


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

153/161

第百五十二話:段谷の惨劇、崩れ去る連環

第百五十二話:段谷の惨劇、崩れ去る連環


執筆:町田 由美


 西暦256年、夏。

 姜維は、蜀漢の軍権を一身に担う「大将軍」に就任した。その威を駆り、彼は鎮西将軍・胡済と上邽じょうけいにて合流し、魏の急所を突く壮大な挟撃作戦を企図する。

 だが、運命は非情であった。

 姜維が段谷の険しき谷合に差し掛かった時、そこに待ち受けていたのは、合流すべき味方ではなく、姜維の動きを完全に読み切った鄧艾の精鋭であった。

 「……は、はまったか。胡済は何をしている!」

 胡済の軍は一向に現れず、孤立無援となった姜維軍は、四方から降り注ぐ魏軍の矢の雨に晒された。蜀の将兵は次々と倒れ、かつてない大敗の予感が戦場を支配した。

 (天の声:諸葛孔明)

 「……伯約! なぜだ……なぜこれほどまでに連携が乱れた! 胡済との約束を、魏の工作が引き裂いたのか……」

 (チャチャ入れ:司馬懿)

 「……カカカ! 連携? 信頼? そんな不確かなものに軍の命運を預けるからこうなる。孔明、お前の弟子は『大将軍』という重荷に目が眩んだな。鄧艾め、よくぞ読み切った。わしの教え通り、敵の心の隙間を突いたわ!」

 「大将軍、ここは私が防ぎます! 早くお逃げください!」

 趙の若武者が、血まみれになりながら銀槍を振るう。だが、鄧艾の猛攻は止まらない。

 その時、混乱する戦場の影から、一筋の煙が上がった。妻・諸葛氏が放った「緊急撤退」の合図であった。彼女の密偵たちが、命を懸けて唯一の逃げ道を切り開いていたのである。

 「……伯約様、生きてください! 生きていれば、必ず……!」

 彼女自身も剣を抜き、迫り来る魏の伏兵を必死に退ける。密偵教育を受けたその身体は、もはや戦士そのものであった。

 結果は惨敗。蜀の将兵の遺体は谷を埋め、姜維は自ら責任を取り、「後将軍」への降格を申し出ることになる。長安への夢は、血に濡れた段谷の土に深く埋もれた。

 (チャチャ入れ:司馬懿)

 「……終わったな、孔明。これで蜀の屋台骨は折れた。姜維の威信は地に落ち、成都のあの宦官どもが、今度こそ奴を食い尽くすだろうよ」

 (天の声:諸葛孔明)

 「……黙れ、仲達。伯約は……伯約はまだ死んでおらぬ。……姪よ、彼を、彼を支えてやってくれ……」


 敗残の兵を率い、漢中へ戻る彼の目には、絶望ではなく、己の傲慢さを打ち砕かれた後の、より深く、静かな決意の炎が宿っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ