真夏のキミと花火を見たかった【金森愛華 編】
僕は高校2年の危川彩。
去年は何もなく1年が過ぎ去ってしまった。
今年こそは終業式の次の日に開催される
花火祭りに女の子と一緒に行きたい。
そして最高の夏休みにしたい。
はぁ、今日も学校か。
だるいなぁ、早く帰りたいなぁ。
「おはようーっす!」
「お、田島か!おはよう!」
「ちぃーーーーーっす!おっはー!」
「か、金森…朝からテンション高いな。」
「そうでしょー!へへへ!!」
「何かいいことあったんだろ?」
「残念ー!なにもないでーす!」
「なんだよそれ…」
「あはははは!ま、テンションなぜかいつもより高いわね!あはははは!」
「本当によぉ、相変わらずテンション高いな金森さんは。なぁ危川?」
「本当そうだな田島。」
「あ!ねぇねぇ彩!今日放課後時間あるかな?」
「放課後?時間あるけどなにするつもりだ?」
「ちょっと話したいことがあるのよ!」
「そうか。ならいいぞ、放課後な!」
「うん!ありがとねー!それじゃあ!」
「なぁ危川、放課後何の話だと思う?」
「知らないよ田島。どうせくだらないことだろ。」
「ま、付き合ってやれよ。金森のやつは機嫌が悪くなると大変だからな。」
「わかってるよ田島。」
というわけで金森に放課後呼び出された。
一体なんの話をされるんだろうか。
…。
その日の放課後。
「よっすー!」
「あ、金森。そういえば話があるんだったよな。」
「そうそう!教室に誰もいなくなったらでいいかな?」
「そんなに話にくいことなのか?」
「まぁちょっとね!だから人いなくなるまでもう少し待ってくれる!」
「わかったよ。」
「ははは、ありがとー!」
…。
「よし、誰もいなくなったわね?」
「うん、っで話ってなんだ?」
「ほら、私たちって保育園からの幼馴染じゃない?」
「うん、そうだな。」
「それで、私思ったのよ。保育園から小学校、中学校、そして高校、ずっと私たち同じクラスじゃない?っで高2から高3はクラス替えないから、私たちはこのまま同じクラスなわけでしょ。」
「うん。つまりなにが言いたいんだ?」
「そろそろ、幼馴染から進展があってもいいんじゃないかなって。」
「な、なるほどな。」
「もちろん今みたいな関係もいいけど、何か変わってもいいんじゃないのかなって!」
「確かに、言われてみればずっと幼馴染だったもんな。」
「そうでしょ!だから、そろそろここの関係性に変化をつけたいのよ!」
「変化、か。」
「だから私今週は色々頑張ってみるからね!」
「頑張るって、一体なにを?」
「まぁそれはお楽しみにってことさ!」
「お楽しみって…。」
「それじゃあ私そろそろ行くね!ばーい!」
「あっ!ちょっと金森…!」
まったく、関係を変えるといっても
一体何をする気なんだろうか。
余計なことにならなければいいけどな。
…。
「おっはよー!彩!」
「あ、金森、おはよ…」
!?
「って!なんで俺の膝の上に座るんだよ!」
「え?言ったじゃない?関係を変えるって!」
「言ったとはいえ、こんなことで関係が変わるのかよ!」
「変わるかもしれないじゃない!あはは!」
あぁ、田島が笑いながら見てる。
ま、いっか、金森のやりたいようにさしておけば。
…。
「はぁ、休み時間だぁ。喉乾いたな。自販機にジュースでも買いに行くか。」
「あぁ待って!私もいく!」
「金森もか?よし、行くか。」
「どれにしようかな。シンプルにオレンジジュースでいいや。」
ガタンッ。
プシュッ。
ゴクゴク。
「ぷはーっ!やっぱりシンプルに美味いな!」
「ねぇ彩!」
「なんだ金森?」
「それ私にも一口ちょうだいよ!」
「え?!自分で買えばいいだろ!」
「一口くらいよ!もうケチらないでよ!」
「あぁ!ちょっと金森!」
ゴクゴク。
「ぷはーっ!うん!これ美味しい!私も買うわ!」
「まったく…。」
「ねぇ彩!」
「なんだよ。」
「間接キスだね。」
「な、な、なんてこというんだお前!」
「ははは!関係を変えるって言ったでしょ!」
「またこれもかよ。今朝は膝の上に座ってきたり、今度は間接キスかよ…。」
「あははははは!」
「何、笑ってんだよもう…」
「ねぇ彩!」
「なんだよ?」
「明日の放課後って暇?」
「明日?まぁ暇だけど。」
「ならちょっと付き合ってほしいな!」
「付き合うってなにをだよ?」
「まぁ、お出かけってやつかな!」
「お出かけ?まぁいいけど。」
「それじゃ!決まりね!じゃ、ありがと!」
「あ、おい!金森!」
まったく、あいつは自分の用が終わると
すぐにいなくなるんだもんな。
まったく、明日の放課後もどうなることやら。
…。
そしてその日の放課後。
「お待たせー!」
「駅前で待っててって言われて待ってたけど、もしかして金森…。」
「そう!ゲーセンに行きたかったのよね!」
「なんだよ!ゲーセンかよ!」
「まぁ軽くUFOキャッチャーやったら帰るからさ!付き合ってよ!」
「軽くだからな?わかったよ。」
「まじー感謝っす!」
「いろんな台があるな。」
「本当ね。何にする?」
「僕はどれでもいいよ。」
「あ、じゃああのハートを持ってるクマの人形にしましょうよ!」
「ん?あれか?いいよ。」
「じゃ、お願いしまーす!」
「え?!僕がやるのか!」
「お金はあげるからよろしく!ね!」
「取れなくても知らないぞ。」
…。
「もっと右!そうストップ!そしてもっと奥かな!そう!そこで押して!」
「よし!」
ウィーン、ガチャ。
「おぉ!掴んだわ!」
「おぉ!やったぞ!」
「やったー!可愛いクマちゃんGETしちゃった!ありがとね!彩!」
「はは、どういたしまして!」
「ははは!ありがとね!」
「それでこの後はどうするんだ?」
「あぁ、まだ行きたいところあるから付き合ってくれる?」
「またか、まぁいいけど。」
「ありがと!」
…。
「行きたかったところってこの河川敷か。」
「そう、ここよ。」
「懐かしいな、金森とよくここに来て話したな!」
「でしょ!私たちの思い出の場所よね!」
「…。」
「…。」
「でさ、彩!」
「どした?」
「私、関係を変えるって言ったじゃない?」
「うん、言ったね。」
「だから、その…キスしない?」
「は?!いくらなんでもそれは…。」
「キスしたいのよ…15年以上一緒にいて、したことないじゃない…」
「まぁ、そうだけど…。」
「はいっ!」
!?
金森が唇を差し出して…。
「早く…!」
「わかったよ…!」
チュッ。
「ん…。」
なんだろう、金森の温かさを感じられるっ!
「…。」
「…。」
「はは、ありがとね!」
「いや、大丈夫だよ…。」
「ついにしちゃったわね、初めてのキス。」
「ははは、しちゃったね…。」
「でもこういう関係も悪くないわね…!」
「だな、確かに悪くないな…!」
「んふふ!じゃあ、私帰るわ!ありがとね!」
「うん…またな!」
ずっと幼馴染だった金森とキスか。
こういう関係も悪くないかもな。
…。
あれから月日が流れていった。
僕と金森は関係を変える毎日を過ごしていった。
相変わらず膝の上に座られたり
ジュースで間接キスしたり
一緒に食堂で昼飯を食べたり
もちろん普通にキスをしたりもした。
こうして2人きりの時間を増やしていった。
そんなことしてるうちに明日は終業式。
金森を…夏祭りに…誘うぞ…!
…。
「はぁー!やっと終業式終わったー!お疲れ彩!」
「お疲れ金森!」
「そういえばさ、あんた明日の夏祭り行くの?」
「!?明日の夏祭り…か!もちろん行くよ!」
「行くの!誰と行くのよ?!」
「ひ、1人の予定かな今は…!」
「じゃあその予定2人にしといてよね!」
「え?!」
「え?じゃないわよ!私と一緒に行きましょうよ!」
「え!?いいのか?!」
「当たり前でしょ!今関係性を変えている時期なんだし!」
「そうか!そうと決まれば、明日の18時に現地集合でどうかな?」
「オッケー!それで決まり!じゃあ明日ね!」
こうしてついに明日。
僕と金森は夏祭りデートをすることになった。
幼馴染から果たして変われるのだろうか。
…。
「お待たせー!」
「やあ金森!いよいよ夏祭りだね!」
「そうね!見たい屋台がいっぱいあるわね!20時の花火に間に合うように、さっそく行きましょう!」
「あぁ、そうだな!」
…。
「やったー!景品GET!」
「金森は射的が上手いなぁ!」
「んー!この唐揚げ最高ね!」
「うん!美味しいね!」
「あちゃー、0匹か。」
「金魚すくいは苦手なんだな。」
「さて!かき氷も食べたし次は…ってもうこんな時間なんだ!早いわね。」
「ずいぶん屋台を見てまわったな金森!」
「そうね、おかげで汗だくよ!」
「…。」
「…。」
「ねぇ、彩。」
「どうした?金森?」
「私ね、あんたのことが好きよ。」
「え?!」
「もうストレートに言うわ。私はあんたのことが好きなのよ。今までクラスも一緒で家も近くてずっと遊んでて、正直(幼馴染)って関係にもう飽きたのよ。だから今しかないって思って最近関係を変えて頑張ってみたけど、それが上手くいってよかったわ。何度も言う。私、あんたの、いや、彩のことが大好きよっ!!」
「僕もだ金森!僕も幼馴染という関係に飽き飽きしてて、そろそろちゃんとした変化が欲しかったんだ。その変化をくれてありがとう。僕も、金森のことが好きだ。」
「彩…」
「金森…」
チュッ。
ヒュ〜〜〜〜ッ、パ〜〜〜ン!
今、僕と金森が「幼馴染」から「恋人」へと
進んだ合図がした。
…。
あれから幼馴染から恋人になった私たちは
夏休み水族館に行ったり色々デートしたりして
すっかり恋人関係に進化していった。
保育園から居ても飽きない、彩の横。
これからもずっと居れると思うと幸せ。
よぉし、死ぬまで彩の横にいてやるわ!
あのハートのクマと一緒にね。
-END-