かっこいい転校生
四人の女子高生たちが噂している。
「あれ、誰?」
「知らんの? 昨日転校してきた娘じゃん」
「なんか雰囲気あるコだね」
「かっこいい感じする」
転校生は机に肘をつき、梅雨前のどんより曇った空をじっと眺めていた。
「ショートカットが似合うよね」
「なんか独自の世界観もってそう」
「あたしたちみたいなウゾームゾーとは違う感じ」
「仲良くなりたいけど……話しかけにくいよね」
転校生が、ふっと思い出し笑いをした。
「あ……! ミステリアス」
「思い出し笑いがかっこいいなんて相当だよ」
「かなりデキる感じだね、あれは」
「ねぇ、話しかけてみない? 仲良くなりたい……。何か話題ないかな」
その時、四人の目に、それがとまった。
転校生のバッグについているアクセサリー──
納豆の藁苞の形をしたアクセサリーだった。
「納豆だよ! 納豆のアクセサリーなんてやっぱり独自!」
「こだわりありそう!」
「よし! 話しかけてみようよ、『納豆に何かける?』って」
「ふつうは納豆のたれだろうけど、かっこいいこだわりありそうだもんね! マヨネーズとか」
四人は笑顔で駆け寄り、口々に聞いた。
「ねぇ! 納豆好きなの?」
「独特でいいよね、納豆のアクセサリー!」
「納豆にこだわりあるんだよね?」
「ね、何かけるの? 納豆に何かけるのが好き?」
転校生はクールな表情を崩し、フレンドリーな笑顔を浮かべると、言った。
「ウスターソース」
四人は逃げ出した。
あまりに想定外だったその答えに、思考が混乱して、わけのわからないものからは逃げ出すしかなかった。
それぞれに家に帰ると納豆にウスターソースをかけて食べてみた。
理解できなかった。
でもこれをいつの日か、理解できるようになりたいと、それぞれに思った。
そしてあの子ともいつか仲良くなりたいと、憧れを抱いたのだった。