第二話 タタ
1
「うぅん…」
カーテンの隙間から細い日光が部屋の中をかすかに照らす。
「おはようっ!」
「うわぁっ!」
私は驚いて目を開けた。ベットの横にタタが立っている。
「ビックリしたぁ。おはよう…。」
今日は土曜日だから沢山タタとお話しできる。ただ私は朝が弱い。少し眠たい。
「タタァ…。」
「どうしたの?」
「ユリ…眠い…。」
「百合愛ちゃん眠たいの?朝弱いんだ。」
タタはベットに腰をかけてこう言った。
「ちなみにもう十一時だよ。」
「えぇぇぇ!」
2
「いただきまぁすっ!」
私はテーブルの上に置いてある目玉焼きとたっぷりバターが塗ってあるトーストに目を光らせる。
「美味しそぉ!」
私は昨日とはまるで違う気分だった。新しいお友だちがお家にやってきたから。ご飯を食べる手もよく進む。
「てかタタってユリ以外の人には見えないんだね。」
私はママの方をチラチラ見ながら隣に座るタタに小声で喋りかける。
「そうみたいだね。多分霊感強い人が幽霊見えるのと同じイメージ。タタを必要とする人だけにタタが見える。」
タタも小声で返した。
「なるほどね。なんか嬉しいけど悲しい。お母さんにもタタの姿を見せられるかな?」
「タタを必要にさせられればいけると思うよ。でも難しいかもね。」
「でもいっか一人占めできるし。」
そんな会話をしているうちにお皿の上は何もなくなっていた。
「ごちそうさま!」
「はぁい。」
私は食器をママのいるキッチンに持っていった。
「じゃあ行こっか。」
私とタタはリビングを出て自分の部屋に向かった。
3
「ご飯中なんとなくママにばれないようにしてたけどばれても大丈夫だよね?」
私は机に座って宿題をしていた。
「いや、絶対にバレちゃだめ。」
「え?どうして?」
「二人以上の人間に私のことがバレちゃうと頭のお花が枯れちゃうの。」
私の鉛筆がピタッと動きを止める。
「え…?いなくなるって…こと…?」
「そうだよ。いなくなっちゃう。」
私は椅子からバサッと立ち上がってタタの方を振り返る。
「なんでそんな大事なこと早く言ってくれなかった?!い…いやだよ…タタがいなくなるなんて!?」
私はタタに思い切り抱きつく。タタは泣いている私をギュット抱き締めた。
「ごめんよ。」
私はしばらく泣いていた。
ーーー
泣き止んだ頃。私はすっかり元気になっていた。
「タタってどこから来たの?」
取り敢えず一番気になることを聞いた。
「簡単に言ったら異世界かな。」
「異世界?」
私は首を傾げて聞いた。
「そう、異世界。異世界の名前は…たしか…ブルーム!」
タタはまるで思い出したかのような言い方をした。
「何その言い方、忘れてたの?」
「なんかね私、起きたらこの"地球"にいたの。でも確か小さい頃に聞いたことあるの。頭の花が咲いたら別の星に行って困ってる人を助けるってね。そしてまた枯れたら元の星に戻ってくるの。で、その星での記憶が曖昧なんだよねぇ。」
そう言ってタタは時計を覗いた。時刻はもう一時。するとタタがある提案をしてきた。
「ねぇせっかくだから外で散歩しながら話さない?タタも地球もっと見てみたいし。」
4
「それにしても…地球って人工的な物が多いね。」
「まぁね。」
私たちは近くの公園のベンチに座った。
「じゃあさタタのその…ブルーム…?っていう星はどんなところなの?」
「たしか…ほとんど花でできた花の星って感じ?建物とかも植物だけでできてたような…」
「えぇぇぇ!全部はなぁ!?夢みたいな世界じゃん!」
私は目を輝かせながら身を乗り出した。
「ま…まぁ…花が好きな人はねぇ…。」
タタは少し困ったような感じで後ろに下がった。
私は辺りを見回す。この公園は「お花公園」。その名の通り他の公園に比べると比較的お花は多い。しかし、周りの建物を見るとコンクリートでできたものや鉄でできたものかろうじて木でできた建物。いつもは当たり前に感じていた周りの風景がタタの話を聞いて少し残念に見える。
「そっかぁ。じゃあさ私もその星行ける?」
私は期待の眼差しでタタに聞いた。しかし、その返答は期待したものとは違った。
「行けない。」
「え?なんで?」
「どうやって地球に来たのか覚えてないんだもん、どうやって帰るのかも分からない。」
「じゃあタタはずっとここにいるんだ。それはそれはそれでよかった。」
「まぁ頭の花が枯れちゃったらいなくなっちゃんじゃない?」
「そうだった。そういえばさぁ…」
私はベンチを立ち上がって一本のお花の前にしゃがんだ。
そして、一番大事そうなことを聞いた。
「タタってユリが困ってたから地球に来たって言ってたけどユリを助けるって言うのは…話を聞いてあげるってこと?」
そう聞くとタタは立ち上がって私の横にしゃがんだ。
「そうだよ。だけどね…ユリの話相手はタタだけじゃないよ。」
「えっ!どういうこと?」
私は驚いてタタの顔を覗く。
「じゃあちょっと耳を澄ましてね。」
私は一言「うん」と答えた。タタは一本のお花の前に手を伸ばす。何かが起こる予感。私はワクワクとドキドキで心臓の鼓動が高まる。
「こんにちは!」
私の正面から声がした。
「え?誰今の声?」
この声はタタの声じゃない。タタよりも少し男の子っぽい声だった。
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学生なので毎日投稿は厳しいですがなるべく頑張って投稿しますm(._.)m