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愛を植え付ける。

 運ばれて来た少女を見て、ベガは満足そうに微笑んだ。


 担架の上に寝かされている少女はその美しい顔を少しゆがめて、気を失っている。


 パーティー用の黄色いドレスを纏っているが、そのドレスは所々が破られて、少女の胸や太ももが少しばかり露わになっていて、少しばかりゆがめた美しい顔も相まって、望まない情事を受けた汚された乙女の様に哀れな色気を醸し出していた。


 ベガはその姿に性的興奮を覚え、彼女の身体を舐めまわす様に見ていた。


 少女はまだ汚されていない。だが、これから自分の色に染めていく。


 少女のドレスをメチャクチャにし気絶をさせたベガは、これから彼女へと行う”洗脳接術”に性的欲望を期待していた。


「これから君は私の妻となるのだよ。春麗」


 春麗と呼ばれた少女は香港の学生で中国拳法家だ。


 香港の警察組織のトップにて、I.C.P.Oの職員でもある男の娘で、ベガの部下であるカギ爪と仮面の男バルログとの死闘の末に倒れた恋人アメリカ人格闘家のケンをもう一人の日本人格闘家のリュウとセットで”洗脳施術”を行い部下として迎え入れようと回収しようとした時に居合わせていた。


 春麗は果敢にもベガに立ち向かい敗れた。


 グラマラスなその身体に似合わないしなやかな動きの中国拳法で彼に向って来た。そのしなやかで美しい姿にベガは魅了され、彼女を”妻”にする事を決意した。


「戦うお前は美しかった。次は、”妻としての美しい姿を見せてもらおう」


「ベガ様。この少女にも施術を行いますか?」


 組織の科学者が聞く。


 洗脳施術装置、脳波コントロールチップを開発した男である。


「ああ、もちろんだ。ただし、ただの戦闘員ではなく、私の妻として、私を愛する様にプログラムしてくれ」


「はっ、かしこまりました」


「あっ、それと、施術前に、この衣装に着替えさせてあげなさい。レディーにいつまでもボロボロの服を着せているのは紳士にあらずだからな」


 そう言って、ベガは、科学者にチャイナドレス風の衣装を渡す。


 その衣装は、上半身はチャイナ風だが、下半身はホットパンツ型と言う何ともセクシーなデザインだった。


「あなたもお好きですな」


「なーに。彼女の出身国に敬意いを払い、私がデザインしたまでだ」


 科学者はにやりと笑い。「かしこまりました」と言った。


 *


 冷たい施術台の上で、春麗は目覚めた。


 どこかの実験室の様な部屋で、台の上で、まるで磔になったキリストの様に手足を拘束されている。


 しかも見たことも無い、チャイナ風のコスチュームを着せられている。


 施術台の上、丁度彼女の顔の真上にモニターがあり、そこに、あの軍服を着た、あの男の顔が映し出された。


「お前は‼ベガ‼」


 春麗が叫ぶ。


「おはよう。春麗。我が愛しい妻よ」


「どう言う事?ケンは無事なんでしょうね?」


「安心しなさいお嬢さん。彼は我が組織に迎え入れた。もう一人のお友達も一緒にね」


「リュウも一緒なの?」


 ベガが不敵に笑って続ける。


「君も、彼らと同じ様に我が組織の一員となるのだ。そして君は我が妻となるのだ」


「そんな事無いわ。お前なんかの妻になんかならない」


 春麗は強い口調と意志で、画面の男に言い返した。


「はははははは。君の運命は決まっているのだよ。その額に装着された装置が起動すれば、君は私を愛し、私につくす妻となるのだ」


 見る事は出来ないが、春麗は確かに額に異物感を感じた。


「嫌、嫌、取って、嫌だ、怖い怖い」


 彼女がパニックになりそう叫んだ時、画面の男が薄気味悪く笑った。


「では、妻として生まれ変わってもらおう」


 男がそう言った途端に、額の金属片が赤く光り、システムが起動する。


 額から、何か得体のしれないエネルギーの様なものが流れ込み、脳が、身体がそれに支配されるような不快な感覚が彼女を包み込んだ。


「いやややややややややややややあああああ」


 手足を拘束されながらも、激しく暴れる春麗。


 台の上でビクビクと痙攣を起こしていた。


 その姿にベガの性癖が疼く。彼の誰かを支配したいという支配欲が性癖と結びつき、目の前で、もだえ苦しむ少女の姿に、激しく興奮し、欲情していた。


 額から流れ込むエネルギーに必死に抗う春麗。


 必死に叫ぶ。


「ああああああ。はあ、はあ。お前なんかの・・・女になんか・・・ならな・・い」


「いつまで抵抗できるかな?さあ、私への愛を芽生えさせるのだ春麗」


「愛・なんか・・・芽ばえない・・・」


 そう言って抗うが、無情にも、彼女の意識と記憶は徐々に白くなりつつあった。そして目の前の画面の男、ベガへの”愛”が徐々にふつふつを湧き上って来る。心が侵されていく恐怖と同時に、それに反して、抗いながらもベガへの”愛”が芽生える高揚感が彼女を包み、更に欲情にも似た恍惚感が彼女を支配しつつあった。


「あ、あ、あ、ああああああん。あああ。ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、こんな奴好きになっちゃ・・・ダメ」


「我が妻よ。運命を受け入れるのだ」


「はあ、はあ、好き、好き、好き。ベガ様。・・・・違う。嫌い、嫌い、嫌い、ああああああん」


 苦悶の表情から、徐々に恍惚の表情へと変わって行く春麗。


「はあ、はあ、はあ、ああああああああ嫌ああああああああ。あああああああん。もうダメえええええええ。愛があああああ。愛があああああああ。芽生えちゃううううううう。ああああああああ。ケええええええン。ごめえええええん。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ・あっああああああああん」


 そう最後に叫び、激しく痙攣すると、春麗は動かなくなり。「あん」と呻くとその場で大人しくなった。


「成功したようです」


 科学者がベガに言った。


「うむ。解った。今から我が妻を迎えに行くとしよう」


 そうして、ベガは、施術室へと入ると、自らの手で、”愛する妻”の拘束具を解いた。


「我が妻となった気分はどうだ?春麗」


 薄っすらと眼を開き、虚ろな眼で彼を見た少女は、それから優し気な笑みを浮かべ、「愛。芽生えちゃった」と呟いた。


「愛しています。ベガ様」


 そう言うと春麗は激しくベガに抱き着き、貪るようにキスをした。



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