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J駅ホーム
雪が地面に叩きつけられる。青年の頬に冷たい空気が突き刺さる。青年は少し唇をきつく締めたが、少しも動こうとはしない。時折ピタリと前側を締め切った外套のボタンから垂れた糸が、一瞬吹いた風に揺れる。ホームのベンチに座ってどれくらいが経っただろう。そもそもホームには数えるほどの人しかいない。次の列車が来るのはまだ二十分も先のことだが、不思議と他の人はベンチに座らない。青年は項垂れながらほとんど目を瞑り、冷気に乾いた喉を唾で潤しながら、静かに立ち続けていた。
しばらく待っていると、ホームの沈黙を切り裂くように線路の向こうから汽笛が鳴った。青年は一瞬顔を上げて目を左右に振った。近づく列車は反対側のホームへ来た列車だった。男から吐かれた長い溜息が、白く色づいて昇っていった。そして再び男は景色の一部になった。
それ以来、何も起こらない寂静の世界。
列車到着まで………あと五分。