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柔らかい感覚に、はっと目を覚ます。
横を見ると、冥界の前庭に咲く花セオレの、可憐な白い花弁が、柔らかい風に微かに揺れているのが、見えた。
しかしこの、柔らかい匂いは、セオレの花の匂いではない。そっと首を動かし、上を見た禎理は、見えたものに狼狽し、身体を横に転がせて起き上がった。
「珮、理、さん!」
「あら、起きた」
花畑の真ん中で禎理の頭を膝に乗せていた珮理が、悪戯っぽい瞳で禎理を見る。
「ずっと眠っていた方が、可愛かったのに」
そして。不意に珮理は座ったまま、禎理の上半身を抱き寄せた。
「よく、頑張ったわね」
珮理の温かさが、冷たくなった禎理の心を温めてくれる。
「はい」
禎理はただ、こくんと頷いた。




