3-16
はっとして、目を覚ます。見知らぬ天井が、禎理を出迎えた。
ここは、何処だろうか? 首だけを動かして、そっと辺りを見回す。だが、天井も壁も、部屋の中にある家具も、禎理の記憶に引っかからなかった。
そして。再び天井に目を据え、考える。
思い出したのは、もう一人の姉、三十のこと。家族と暮らしたあの森の中で、三十はよく、自分やすぐ上の姉に嫌がらせをしていた。水汲みの道の途中に仕掛けられた罠に足を引っかけ、泉から汲んだばかりの水を地面にぶちまけてしまうのは日常茶飯事。抓られるのも、摘んで来た液果を奪われるのもしょっちゅうだった。そんな姉の存在を、何故忘れていたのだろうか?
そして。夢で感じた、姉の怒りと苛立ちを、反芻する。姉は、三十は自分を認めなかった家族を恨み、それ故に『力有る石』に魅入られ、家族を殺した。そして、『担い手の素質を持つ者』であるが故に『力有る石』の影響を受けなかった禎理を、自分の手で殺そうとした。その三十から禎理を守る為に、兄は禎理を庇って命を落とした。それでも禎理を殺そうとした三十を、禎理は無意識の『力』で吹き飛ばした。そして禎理は全てを心の奥底に封印し、三十は禎理への恨みを胸に、力を蓄え、禎理と、禎理自身が大切にしている者を破壊しようとした。そしてその結果、……禎理は姉である三十を、その手に掛けた。
自分が、我が身を省みず他人を救助し、衝動のままに危険に飛び込んでいた理由が、今は分かる。兄姉を『殺した』罪悪感と、それでも生き続ける意味。忘れていたその二つの『感情』が、禎理を無意識のうちに危難へと向かわせていたのだ。




