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次の日の、朝。眠る七生を起こさないように、禎理はそっと箱ベッドから滑り降りた。
静かに念入りに支度をして、外に出る。『石』に関する影響を最小限に止める為、当面、ここには帰って来られない。少し頭を冷やそう。九七一と体との待ち合わせ場所である、所属する天楚の冒険者宿三叉亭に辿り着くまでに、禎理はそう、心に決めた。
「準備は、できているようだな」
三叉亭に入って来た禎理を見て、主人である六徳が笑う。魔界に漂う霧の魔物であった六徳は、読心の技を持つ。禎理の心の動揺など、とっくの昔にお見通しなのだろう。それでも、禎理は六徳に笑い返した。
「ところで、九七一と体は?」
禎理が六徳にそう尋ねた、正にその時。どたどたと言う音と共に、三叉亭に入って来たのは、金属鎧で身を固めた物々しい男達。何の用だろうか? 天楚市の治安を守る第九平騎士隊の面々ではない。禎理がそこまで考えた、次の瞬間。
「禎理だな」
禎理の目の前に立った男の、胄の奥に見える目が、ぎょろりと動く。
「はい」
禎理がそう、答えるや否や。
「捕まえろ!」
男の号令一下、禎理を囲んでいた鎧の腕がたちまち禎理に絡まる。何がなんだか分からないうちに、禎理の身体は男共に引き摺られるように三叉亭の外に出てしまって、いた。




