2-18
目を開くと、雲に覆われた灰色の空が見える。地上に、戻って来たのだ。多少の揺れと寒さが気になるが、戻って来ることができて良かった。禎理はほっと息を吐いた。
次に襲って来たのは、盛大な鼻の痒み。
「は、はくしょん!」
上体が起き上がるほどのくしゃみが、盛大に響く。次の瞬間。
「え」
「ちょいまち!」
揺れが収まると同時に、空が少し遠くなる。続いて見えたのは、目を赤くした七生と、無表情の六徳、そして口をぽかんと開けた大円。エックとアルバとチユのみならず、三叉亭に登録している冒険者の殆どの顔も、貴族騎士の須臾の姿もある。皆大円と同じように、目を見開くか口をぽかんと開けているのが、禎理の目には不思議に映った。
これは、一体? 禎理が目を瞬かせるより早く。
「禎理」
赤い髪が、禎理の視界を塞ぐ。七生。そう叫ぶ前に、七生は禎理の瞳をじっと覗き込み、そして禎理の首筋に冷たい指を這わせた。
「生きて、いるの?」
喘ぐような七生の声に、頷くことを忘れる。
どうやら、禎理は遺跡の床に開いた穴に落ちて死んだものと思われていたらしい。よく見ると、禎理が着ている服は死者用の灰色のローブだし、身体が乗っているのも死者を運ぶ輦台だ。まあ、あの高さから落ちているのだから、死んだと思われて当然だろう。何となく、禎理はそう、思った。
そっと、輦台から身を起こす。
「良かった」
次の瞬間、禎理の身体は、七生の温かい腕に包まれていた。




