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明日の風に・中世心火編  作者: 風城国子智
第二章 虚の見る夢
36/60

2-16

「何故彼奴の方が、『力』を持っている……!」


 怒りのままに、白い床を蹴り付ける。彼奴は、常に自分を馬鹿にしている。自分は、この世界の最高責任者である筈なのに。怒りのままに、脳裏に浮かんだのは、灰茶色の髪と白い服を風に揺らす少年神。


 彼奴は、俺が先に見つけていた、冥界の周りで震える『魂』を、勝手に冥界所属にし、なおかつ俺の意見を聞かずに、地上界や魔界で試作していた『泥人形』に『魂』を入れて『生物』を作ってしまった。この世界を壊そうとする『力有る石』を封じようとして地上界のみならず、俺の支配地である天界の一部も壊したくせに謝りもしない。そして更に、その壊れた一部を直す為に『日神』と『月神』を俺の許可無く作った上に、『力有る石』に狂い彼奴を殺そうとした『月神』を俺の雷霆で倒したのに感謝の言葉一つ無い。


 そして。これが一番腹立たしいことだが、天空神である俺より彼奴の方が、『力』を持っている。それは、自分も理解している。彼奴はこの世界と共に生まれた古い神。そして俺は、『力有る石』の作用と反作用で生まれた新しい神。力の差は、歴然としている。だが、である。それでも俺が、この世界の最高神である。その俺をないがしろにする彼奴が、許せない。


 だから俺は、頭の良い『人族』に『神の存在』と『魔法』というものを知らせ、俺を第一に信仰し、彼奴を信仰から排除した。しかし、この行動も、彼奴が後ろから糸を引いているように感じてしまうのは、何故だろうか。


 こうなったら。逡巡の末、決心する。……彼奴を、風神かぜかみをこの世界から物理的に排除する。それ以外に、俺の生きる道は、無い。


 白い空間から飛び出し、風神を捜す。居た。丁度良く、自分の方へ向かって来ている。これならば。ほくそ笑みつつ、必殺の雷霆を次々と打つ。だが風神は、雷霆を全て避けた上で、不意に俺の目の前から姿を消した。何処へ、消えた? 一瞬の戸惑いは、しかしすぐに背中に掛かる痛みで消える。背後に回った風神が『力』を使い、俺の神としての力を抜き取ったのだ。それだけを理解するのに、かなりの時間を掛けてしまって、いた。


 風神は、そこまで、俺のことを憎んでいるのか。自身の心に巣食う憎悪の念を忘れ、思わず叫ぶ。どうしても、俺のことを討ちたいのなら、考えがある。




 よろよろと、空を彷徨う。見えて来た、大河の傍に栄える街に再びほくそ笑むと、天空神はふっと力を抜いた。


 慣性のままに自分の身体が墜ち、都市を破壊するのを、他人事のように感じる。唯一つ、もうもうと吹き上がる煙の間に見えた、風神の絶望した顔だけが、天空神の心に満足感を、与えた。

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