2-14
暗闇に、目を凝らす。微かに明滅するモノを見つけるや否や、禎理はその光に飛びかかった。
明滅が終わる前に、震える欠片をそっと拾い上げ、両手で包み込む。その作業を、禎理は光るモノが見えなくなるまで、延々と続けた。壊れ易い、ものだから、大切に扱わなければ。その想いだけを、ずっと抱いて。
だが。暗闇に光るモノが無くなり、集めたモノを掌に乗せてみて、口から出て来たのは、絶望の溜め息。これでは、足りない。しかしこれ以上、欠片は見つからない。仕方無いか。禎理は再び溜め息をつくと、自分の胸元から、明滅する欠片の大きなものを取り出し、掌の小さな欠片に合わせた。そして静かに、目を閉じる。再び目を開いた先に、見えたのは。自分と同じ姿の、少し華奢な、愛しい存在。
「珮理さん!」
思わず、叫ぶ。しかし禎理の叫びは、暗闇の何処にも聞こえなかった。
ああ。この出来事で、悟る。これは、誰かの夢。誰かの夢を、追体験しているのだろう。そしておそらく、その「誰か」とは。
〈風神〉
心の中で、呟く。壊れた魂を繋ぎ合わせたり、自分の魂を割ったりすることができる『力』を持つのは、おそらく、この世界でもただ一人。古の神であり、『力有る石』がこの世界を壊すのを阻止する為に神の座を捨て、一つの魂として転生を繰り返す少年神、風神だけ、だ。
驚いた瞳の色をした珮理が、禎理を見詰めている。その珮理に、禎理はどうしても聞きたかったことを、尋ねた。
「珮理さん。……怒ってない?」
「何のこと?」
目の前の人物を禎理だと認めたらしい。珮理はにこりと微笑って言った。
「私は、感謝してるのよ。数にも、風神にも。……貴方にもよ、禎理」
不意に、珮理の顔が禎理の目の前に来る。次の瞬間、珮理の唇が禎理の唇に重なった。




