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明日の風に・中世心火編  作者: 風城国子智
第一章 血が喚ぶ者
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1-11

 一晩眠ると、禎理ていりの身体はすっかり良くなった。


「今日は、御飯食べるね」


 そして目を覚ますと、やはり横には風神かぜかみを名乗る少年が――今日は目を覚ましていた――いた。いつの間にか仲良くなったのか(多分風神が食物をあげたからだろう)、模糊もこが風神の指にじゃれついている。


「模糊も、お腹空いたって」


 禎理自身も、今日はお腹が空いている。禎理はゆっくりとベッドから滑り降り、側に置いてあったチュニックを頭から被った。


 チュニックに袖を通してからやっと、その服が、六角公ろっかくこうが禎理に着せてくれた上衣であることに気付く。六角公から手渡された短剣も、ベッド側の棚の上に置いてある。返さないといけない。でも、逃げた吸血鬼のことが気になる。


「禎理、下行かないの?」


 風神の声に、はっと我に帰る。少し気が引けるが、服と短剣の件はエミリプの一人、気の良い九七一くないに頼んでみよう。禎理は一人納得すると、階段室に足を運んだ。その後ろを、風神がぴったりとくっついてくる。


「今度こそ、逃げられたら困るからね」


 禎理の後ろで、風神が嘯く。


「だって禎理すぐ逃げちゃうから」


 風神の言葉が、痛い。でも、恐怖にかられて『逃げて』しまっているのは事実だ。自分が、こんなに情けない奴だとは思わなかった。禎理は思わず下を向いた。


「あ」


 悄気る禎理の服を、不意に風神が強く引く。


珮理はいりのお見舞いも行こ」


 その言葉と共に、いつの間にか、禎理の身体は階段室から主寝室へ、そして珮理が眠るベッドの横に立って、いた。


「あまり邪魔しないでよ」


 きつめの百七ももなの声を背後に聞きながら、ベッドに横たわる珮理の顔をそっと見る。顔色は悪いが、寝息は規則正しい。眠っているだけのようだ。良かった。禎理はほっと胸を撫で下ろした。それでも。……唇が疼くのは、何故だろうか?


「うん、問題ないね」


 禎理の横でそう呟いた風神が、再び禎理の服を引っ張る。少し躊躇いつつ、禎理は珮理のベッドから離れた。

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