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天の踊り子  作者: 天野秀作
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ウズメとサルタ 其の⑥

 と、その時、一人の若者がオシホの下に駆け寄る。いや、若者と言うよりも少年に近い。それもとびきりシュッとした、きれいな顔の少年である。近眼なのか眼鏡をかけている。若く見えるが実はかなり年を取っている。

 その服装こそオシホと同様の衣袴きぬばかま姿であるが、髪は耳よりも下に垂らしたみずら結いで、手結いと足結いには勾玉や鈴の装飾品が付けられている。みずらを耳より下で結うほうがより身分が高いとされているようである。

「オモイカネ様!」

 オシホはその少年に向けて深々と一礼をした。

 

 ※さてここで稗田阿礼のワンポイント解説をば。

 オモイカネ――思金神または常世思金神とこよのおもいかねのかみとも申します。長いので以後オモイカネと明記することにいたしますね。

 かつて高天原に現れたはじまりの三柱の神(造化三神)のうち、二番目に現れた神、高御産巣日神たかみむすびのかみの子供であります。知恵と永遠を司ると言われております。アマテラスを岩戸から引っ張り出す作戦を考えたのもこの神様でありますな。高天原の神々に中にあっては、優秀な軍師と言ったところでしょうか。

 ちなみに最初に現れたのは、天之御中主神あめのみなかぬしのかみ。三番目が神産巣日神かみむすびのかみであります。

 この三柱の神は部下の神々に国造りを任せてさっさと表舞台から去って行ったのでございますな。まあ世界中どこの宗教でも創造神と言うものは別格でございますね。

 そしてそして、このオモイカネの妹君であります萬幡豊秋津師比売命よろづはたとよあきつしひめのみことはなんとオシホ様の奥様なのでございます。

 つまりオモイカネ様はオシホ様の義理の兄上に当たるのでございます。見た目は若くともオシホ様の義兄ですから。しかも義父様は、はじまりの神の一柱。

 まあ良家に入った婿養子のようなものでございますな。深々と頭を下げるのもわかります。わかっていないのはこの娘。失礼。我が祖先の一柱でございました。では続きをどうぞ。


「ああ、オモイカネちゃ~ん」

 ウズメの顔が見る見るにやける。その目はすでにハートの形をしていた。

「お、なんだ、乳の大きな女がいると思ったら、ウズメではないか。久しぶりだの」

「もう、エッチね。子供が生意気よぉ。そんなとこしか見てないんだからぁ。ね、元気してた?」

「ワシは元気じゃ。ウズメとはニニギの降臨以来じゃな。その節は世話になった。して、いつこちらに戻ったのかの?」

「ああん。そのしゃべり方と見た目のギャップがいいわぁ」

「これ、ウズメよ言葉を慎め! 高御産巣日神の御子であるぞ」

「そうね、ごめんなさいオシホちゃん。あなたの怖い奥様のお兄ちゃんでもあったわね」

「うっ……」

「でもさあ、絶世の美青年と美少年の二人がすぐ傍にいるんだもの。ウズメちゃんもう濡れ濡れよ」

「アホ……」

「サルタ、今なんか言った?」

「い。いや」


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