第7話 新しい仲間。
「付き合ってくれアシャカティ!」
「いや、俺と結婚してくれ!」
「その乳を揉ませてくれるだけでもいい!」
「俺は尻がいい!」
「じゃあ俺にはキスを!」
一斉に群がって来る男性冒険者達。それをアレクが魔術で一掃する。
「うわあああッ!」
突風に巻き上げられ、吹き飛んでいく。すると今度は女性冒険者達が一斉に群がって来る。
「アシャカティ様! 私達と是非一緒に女子会を!」
「いいえ、私達と一緒にベッドで女子トークを!」
「そんなのどうでもいいんで私を抱いて下さい!」
「ちょっと、横からシャシャリ出てくんじゃねぇわよ小娘共! アシャカティ様は私のものよ!」
あっと言う間に囲まれてしまう俺。周囲は女性冒険者でごった返している。
「おいアレク、彼女達はいいのか!?」
「うーん、まぁ害は無さそうだし良いかなって」
なんだか微笑んでいる大賢者様。どうやら女性には寛容なようだ。
「あー、もう! 仲間探しに集中出来ない! ちょっとみんな離れてくれ!」
俺は叫んだ。すると女性冒険者達はハッとなり、魔術が解けたように目をパチパチさせた。
「あら? 私達一体何を......」
「なんだかトチ狂っていましたわ......」
「ご迷惑をおかけしました、アシャカティ様」
申し訳なさそうに帰って行く女性冒険者達。一体何が起こっているんだろうか......。そう考えた所でハッとなる。そう言えばキャロットに変身した際に発動する能力があった筈だ。
俺は改めて、キャロットの能力を確認する。ちなみにデッキに組んだカードの能力はいつでも確認可能だ。
★農家の娘キャロット
属性 光
性別 女
変身コスト 20MP
レベル 9
スキル ⚫︎神のお告げ⚫︎真実の目⚫︎聖なる祈り⚫︎説教
変身維持時間 24時間
【コンボ効果】農家の娘キャロットに変身している状態で、デッキ内★★カードが「聖乙女キャロル」であった場合、MP消費なしで「聖乙女キャロル」に変身出来る。
デッキ内★★★★★カードの変身維持時間を一時間延長
【変身効果】農家の娘キャロットに変身時、周囲の者全員を10秒間「魅了」状態にする。
【属性効果】デッキ内「光」カードのレベルを1アップ
あああ! やっぱり! 周囲の者全員を10秒間魅了! これだよ。間違いない。
「あのさ、アレク。さっき冒険者達が俺に群がって来たの、理由があった。俺、キャロットに変身すると10秒間だけみんなを【魅了】状態にしちゃうみたいだ」
「なるほどね。それなら納得が行く。確かにキャロットになったアシャは可愛いし、胸も大きい。だが通常、人間には理性というものがある。普通は恋人でもない女性に、いきなり襲い掛かったりはしない筈さ。ただし例外はある」
そう言いながらアレクは俺の背後に回り込み、ぎゅっと腰を抱いた。
「あっ、こら! 何してんだ!」
「これは僕の愛情表現。単なるハグだよ。別に君が女の子じゃなくたって、僕はハグしてるだろ? さらにその愛情が本物なら、理性が効かなくなる時はある。つまり、恋人ではない異性に襲い掛かる......もとい、求愛行動をする事だってあるさ」
アレクはそう言って、俺の耳たぶを噛んだ。全身に甘く痺れるような感覚が走る。
「ふにゃあ......」
俺は体の力が抜けて、崩れるようにアレクへと寄りかかる。
「ふふっ。本当に可愛いねアシャは。さぁ、じゃあ早速デートに出掛けるとしようか」
俺をお姫様抱っこするアレク。だが俺はすかさず奴の頭にチョップを喰らわし「メッ!」と怒ったふりをする。
「いい加減にしろよアレク。お前、女を前にすると急に本能剥き出しになるな。大賢者の名が泣くぞ」
「ふふっ。怒った顔も可愛いよアシャ。それに誤解があるようだけど、僕が本能を曝け出すのは女性の前でじゃない。【女の子になった】アシャの前でだけだ。一途だろ?」
「わかったよ、まったくもう。とにかく下ろしてくれ。今はデートなんてしてる場合じゃないだろ。仲間を見つけなきゃ」
「かしこまりました。仰せのままに、姫君」
アレクはそう言って俺を解放し、床に立たせた。
「次に変な事したら、死ぬまで殺すからな」
「わかったよ。死ぬまで殺されるのは嫌だから、表向きは大人しくしとくね。さぁアシャ、神のお告げとやらを聞くといい。邪魔が入らないように見張っておくよ」
「お前が一番厄介な気もするが......一応信じてみるぜ」
俺はアレクが両手を上げて「何もしないよ?」と言うのを確認し、ひざまずいて目を閉じた。そして両手を組んで神に祈る。
(神様......光の女神ルクス様。どうぞ私を正しい道へとお導き下さい)
心の中でそう念じる。
(久しぶりですね、キャロット。何度も転生を繰り返し、今はアシャカティとなったあなたに、私から光の導きを授けましょう)
優しい声だった。これが、女神ルクスの声。
(目を開けて、最初にあなたの目が引き寄せられた人物。おそらくその人物は、光り輝いて見える筈です。さぁ、目を開けて)
俺は言われた通りに目を開けた。そして目が引き寄せられた人物を見る。確かに、その人物は輝いて見えた。
「アシャ、女神様はなんて?」
アレクが俺に声をかける。俺はそれには答えず、まっすぐその人物へと指を差した。アレクもそちらを見る。
その人物は小柄で、マントを羽織って仮面を付けていた。長い耳から判断するに、どうやらエルフの様だ。そしてキャロットのスキル【真実の目】は、偽りを取り払い、真実の姿が見える。
俺の目には、その人物は美少女にしか見えなかった。仮面の下の素顔。少し垂れた大きな目に、濡れたような長いまつ毛。白い肌、桜色の唇。思わず吸い込まれてしまいそうな、緑色の瞳。
俺はゆっくりと彼女の元へ歩いて行った。そして戸惑う彼女の肩に手を置く。
「君に決めた。名前を、教えてもらえるかい?」
そう問うと、彼女は信じられない、と言った表情で真っ直ぐに俺を見返した。
「は、はい! ボクの名前はノエル! ノエル・クレセントです! よろしくお願いします!」
「そっか。よろしくな、ノエル。もし良かったら、仮面を外してもらえると嬉しい。特別な事情があるなら仕方ないけど」
「いえ、仮面は舐められ無いようにする為の物なんで、もう必要ありません! 外します! 選んでくださってありがとうございます! アシャカティ様!」
そう言って抱きついて来たノエル。彼女は俺の胸の谷間に顔を押し付け、すりすりと顔をこすりつけてきた。
「あはは、ノエルは甘えん坊だな。妹が出来たみたいだ」
俺がノエルの髪を撫でていると、ギルドマスターが近寄って来てひと言。
「おいアシャカティ。そいつ声高いし体も細っこいけど男だぞ。悪気はないみたいなんだが、人との距離感がわからないらしくてな。そうやってベタベタ触りたがるんだ」
「はぁ!? えええ!? お、男!? こんなに可愛いのに!?」
「はい! れっきとした男です! そしてボクは、大きいおっぱいが大好きなんです!」
可愛い顔して、中々に堂々とした奴だ。
「正直でよろしい! こんなおっぱいで良ければ、好きにしてくれ!」
「えっ、良いんですか!? では遠慮なく!」
さらに顔をすりすりするノエル。このくらいなら可愛いモンだよ、うん。
「よーしノエル。そのままアシャを責め続けて。僕は後ろから堪能するから」
いつの間にか背後に立っていたアレクが、俺の背後から抱きついてくる。
「こらこら便乗すんな。ノエルとは多分じゃれあってるようにしか見えんが、アレクが混じると途端にいかがわしい雰囲気になるんだよ! だから今はハグ禁止!」
「ええー? 固い事言わないでよアシャ。僕達は親友だろ?」
「ダメだって!」
俺はアレクを振り解こうとしたが、くすぐったくて力が入らない。
仕方ない、観念してアレクの好きなようにさせるか......そう思った時。聞き慣れた凛々しい声が、冒険者ギルドの中にこだました。
「アッくーん! 大好きなママが来たわよー!」
「どこにいるアシャ! 母上、何やらあそこで人だかりが出来ていますよ」
「そうね。じゃああそこに行ってみましょう」
母上と姉上だ! 助かった......。




