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距離をとる人 (水平思考クイズ)

作者: 文木 青

皆様は水平思考クイズというものを知っているだろうか。



シチュエーションパズルとも言われ、一人が問題を出し、他の人はイエス(はい、肯定)・ノー(いいえ、否定)で答えられる質問を出す(場合によっては「関係ありません」などのイエス・ノー以外の答もあり得る)。

質問者は、出題者が考えているストーリー、あるいは物を推測して語る。それがすべての謎を説明できたとき、このパズルは解けたことになる。



このクイズは2年ほど前に、メディアで取り上げられ話題になった。かくいう私も級友と一緒になって自作の問題を出し合ったりして楽しんだものだった。

解けなくて悔しがったり、解かれなくて嬉しがったり、ほんの些細なことに熱を注いでいたあの頃が懐かしい。



それから時は経ち…、僕は大学生になった。

大学に入ってからはクイズを出し合っていた友と連絡を取ることもなく、私は慣れない新しい生活に困憊する毎日を送っていた。

それが、ほんの一週間前のことである。

私はバイトへ行く電車である光景を目にした。

それは、一見すると異様なのだが彼らの状況を鑑みると合点がいく。

忘れてかけていたあの頃の思い出がふつふつと思い出された。

意外性も創造性も申し分ない、傑作の予感だ。

数年ぶりにこの独特の興奮と快感を思い出した。

そうとなれば話は早く、私はその事象を手早く文にまとめ、何人かの友にLINEで一斉送信した、『傑作だよ。』とのメッセージ付きで。



チャットは思いの外盛り上がり、スクロールが指で追いつかないくらいやりとりをした。

鋭い質問も的外れの質問も私を懐かしく感じさせ、とても嬉しかった。

結局、誰もこの問題を正解することができなかったが、大いに盛り上がった僕たちは次の休みに集まることを約束した。



今回私が筆をとったのはこの問題を皆様と共有したいと思い至ったからだ。

この問題で私は疎遠になりかけていた友たちとの仲を繋ぎ止めることが出来た。

人との絆は少し距離を離されただけですぐへたって千切れてしまう。

人々はそのことに薄々気づきつつも日々の生活に忙殺されているので知らないふりをする。

そんなときにこそ水平思考クイズなのだ。

いや別に、水平思考クイズに限らないのだが…。

大事なのはきっかけで、両者が歩み寄ることを手助けする手がかりが必要なのである。

それでは、この文が皆様のきっかけになるよう願いを込めて、最後に例の問題を記載する。


【問題】

仲の良い二人組が電車に乗り込もうとしている。二人はおしゃべりが大好きで電車の中でも勿論じっくり語らうつもりだ。しかし、彼らは隣り合って座らなかった、電車内は空いているにもかかわらずだ。それほどの仲、ましてやじっくり語らうつもりで電車に乗った彼らはなぜ離れた席に座ったのだろうか?(解答は最下段に書く)



FAQ


・彼らの乗っている電車の座席はロングシートタイプ(通勤電車によく見られる線路方向に配置されている座席タイプ)ですか? → Yes



・彼らが距離を取っているのはコロナウイルス感染予防のためですか? → No この問題はコロナ関連ではないです。



・彼らの性別の組み合わせとして男ー男、男ー女、女ー女のいずれに変更してもこの問題は成立しますか? 

   → Yes ここで彼らの性別はあまり関係ありません。



・彼らはロングシートで向かい合って座っていますか? → Yes 彼らは向かい合って座っています。



・彼らが話していると周りの乗客は迷惑しますか? 

   → No 特に迷惑しないようです。私のように多少驚くかも知れませんが…。














































【解答】

彼らは耳が不自由だった。つまり、意思疎通の手段は手話である。隣り合って手話で話すと手元が見えづらい、したがって彼らは向かい合って座っていたのだ。
















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