二人でのクエスト
ギルドの酒場で思う存分、飲み食いをした二人は翌日になり、クエストに出掛けていた。
クエストの内容は《ロードベルト》の街から南に進んだところに広がっている森にある洞窟型のダンジョン探索だ。
「蒸し暑いぃ~」
「我慢しろ」
《宵闇の森》と呼ばれる、この森は熱気に満ちており、まるで蒸されているかのような地獄が広がっている。
「にしてもよ、まだ森に入ってすぐだろ?聞いたところによると中に入れば入るほど熱気は増すらしいし」
「報酬が良かったから、つい受けちまったが、こりゃ外れか?」
「だな。どうする引き返すか?」
あまりの暑さに二人はリタイアするかの相談を始める。
「はぁ~こういうときにエメリアの魔法があればな」
「・・・そうだな」
「わりぃ、なんでもない」
キリハがポツリと漏らした言葉はライアーの心を削った。
すかさず、自身の失言に気付き謝る。
それからというもの、二人は無言で森を進み続ける。
森を探索し始めて一時間が経過した。道中でちょっとした魔獣たちが現れたが、戦闘においてはキリハの独壇場だ。あっという間に魔獣の体を切り刻み素材だけを回収する。
「地図によるとこの辺なんだが」
ライアーが腰にあるバッグから地図を取り出すと広げて、印の着いたところを指で差す。
「あれじゃね?」
キリハが汗を拭いながら指を指す。
「あれっぽいな」
キリハの指が指した場所は崖となっており、そこに洞窟があった。
洞窟の横には冒険者ギルドがダンジョンであることを示した看板が立てかけられている。
洞窟に入ると中はひんやりしており、先ほどまでの熱気に満ちた森と比べると暗いが二人にとっては天国のようだった。
「うっひゃー涼しい」
「生き返るわぁ」
そういい、二人は鞄から水袋を取り出して、水分補給をする。
そのときだった。洞窟の奥から四つの黒い影が現れる。
「・・・あんたらは」
ライアーは盗賊のため夜目が効く。そのため、ライアーは四つの影の正体を見た。
「あ、あなたたちは」
そう、四つの影の正体はいつぞやの女冒険者たちだった。ただ、一人男が混じっている。
新しいパーティメンバーだろうか?
「そうだ、お願いがあるんだ。バネッサが罠に引っ掛かって怪我をしたんだ。助けてほしい」
ギルドで二人に声をかけた露出の激しい女冒険者がそういった。
「それで、怪我はどこだ?」
二人は、しかたないといった表情でバネッサと呼ばれた女騎士の怪我を見る。
バネッサの体には三本の矢が刺さっていた。
話を聞いたところ、この先の一本通路で罠に引っ掛かったらしい。その罠が狭い一本道で大量の矢が襲いかかってくるというものだったようだ。
バネッサは騎士のため全身を鎧で固めていたため、刺さった矢は三本ですんだそうだ。
それに加え、パーティメンバーは彼女を除いて誰一人怪我はない。優秀な騎士なのだろう。彼女の持っていた盾も見たが、所々欠けている。相当、厄介な罠だったのだろう。
「・・・運がよかったな。毒は塗られてなかったようだ」
そういってキリハは丁寧にバネッサの体に刺さった矢を引き抜く。
「ッ」
バネッサは声にならない悲鳴をあげた。彼女は口に布を噛まされている。
「よし、これで全部だな。あとは、触るぞ」
今度は自信の腰にぶら下げていた巾着から小瓶を取り出して仲に入っていたペースト状のものを指に取り、優しく彼女の患部へと塗る。
塗り終えたあとは、清潔な布を巻き付けて治療は完了した。
「ったく、こういうとき、マジで回復魔法使える奴が欲しいって思うぜ」
「あぁ、そうだな」
キリハの言葉にライアーがうなずく。
「本当にありがとうございます」
一息ついたあと、露出の激しい女冒険者がそういった。
「気にすんな。といいたいところだが、このパーティに罠探知のスキル持ってるやつはいないのか?」
キリハが訪ねる。
誰も答えない。
「はぁ、それで、パーティメンバーが増えたようだが」
ライアーがため息を吐きながら訪ねる。
「おう、俺はアレックス。見ての通り槍使いだ。こう見えてもAランク冒険者だぜ」
新しく入った冒険者の男は全身に軽鎧まとっており、背中には大きな槍が背負われている。
「ふぅ~ん、俺はキリハ。こっちはライアー。とまぁ、俺たちはこれから、この洞窟を探索するんだが、あんたらは大丈夫か?まぁ、Aランク冒険者がついてるなら、街まで帰るのは大丈夫そうだが」
怪我を負ったバネッサの方をチラリと見たキリハはすぐさま、視線をアレックスの方に戻してそういった。
「あぁ、大丈夫だ。といいたいところだが、すまないが、俺たちもあんたらに同行させてもらっていいか?」
アレックスが頭を掻きながらそういう。
「そりゃ、なんでだ?」
キリハが問う。
「いや、ここまで来たし手ぶらで帰るのは、Aランク冒険者としてのプライドが許さねぇからよ」
その瞬間、ライアーが鋭い視線を向けるが、アレックスは気づいていないようだ。
「そうか、あんたらは大丈夫なのか?」
「そ、そんな、怪我の治療までしてもらったのに、同行までさせてもらうなんて、悪いです」
「そうだよ、アレックス。あんた何いってるかわかってるの?」
魔導士の女とクレアがそういった。
「そうだぞ、アレックス。いや、怪我を負った私がいうのもなんだが、治療までしてもらったのに、同行までさせていただくのは申し訳ない」
バネッサも申し訳なさそうにしている。
「えぇ、いいじゃん。あんたらだってAランク冒険者の俺が一緒に同行してくれるっていってるんだから、心強いだろう!」
自信満々にそういうアレックスを見て三人の女は頭に手をやる。
「ちっ」
ライアーが小さく舌打ちをする。
といっても、その舌打ちはキリハにしか聞こえてなかったようだが。
「そうか、なら同行してもらおうかな。罠に関しては安心しな、こいつは超絶頼りになる盗賊だからな。罠感知は勿論、敵感知のスキルも持ってる」
「なっ、キリハ」
「勝手に決めて悪いな、でも、このままだと、あいつらちゃんと街に戻れるか心配だからよ」
キリハがライアーに耳打ちする。
「・・・はぁ、しかたない。わかった」
こうして、二人は四人のアレックスたちの同行を許可したのだった。
次話も楽しみにしておいてください。まぁ、投稿されるかしりませんけどw