04 序列のない食堂
寄宿舎にある食堂の雰囲気が変わった。
上級貴族用の豪華なテーブルが撤去され、全てのテーブルがこぢんまりとした4人掛けに統一された。貴族も平民も分け隔てなく過ごせるようにとのシャルミナの配慮だ。
固いカチカチのパンが出されることもない。それどころか、聖少女であり平民とはいえ王族の血を引くことが判明したアメリアには、同じ料理でもおいしそうなお肉が盛られる。これまで冷遇してしまった給仕のおばさんたちは、いつもばつが悪そうだ。
リーゼの皿にも、おいしそうなローストビーフが盛り付けられた。
座りなれた隅っこのテーブルに並んで座ると、残りの椅子に2人の女子が座った。ロアンにおける“闇の空”との戦いで、アメリアと共に負傷兵の治療にあたったジュリィとキャサラだ。
4人はいつものように、お喋りしながら食事を始めた。
「治癒魔法が使えるようになりたい」とか、「回復薬の調合を覚えたい」とか、救護に目覚めたジュリィとキャサラが盛り上がっている。
アメリアはニッコリと受け答えしていたが、ふとシャルミナがいつも座っていた大きなテーブルがあった辺りに目を移した。
「シャルミナ様、最近お見かけしないね」と、赤毛のジュリィ。
「どこかに遠征されてるとの噂よ」と、緑がかった髪のキャサラ。
2人とも貴族らしく、腰まで伸びた髪をリボンで束ねている。
「お姉さまはお忙しいから……。あんまり授業にも出られてないみたいだし……」
寂しそうに、アメリアが甘く煮たニンジンを口に運んだ。
リーゼは嫌な予感がした。遠征ということは騎士を従えてるはずで、しかも仲のよい妹のアメリアが事情を知らない。面倒なことが起きてる気が――。
食堂の入口から、無駄のない動きで女生徒をすり抜けてくる狼獣人の姿が見えた。まっすくこっちに向かって来る。
ほらね――。黒く大きな瞳が、不満げに半分になった。
リーゼの忠実な騎士である狼獣人は、視線をあえてやり過ごしながら主の傍らに至ると、忠犬が伏せるように跪いた。
「リーゼ様、お食事中のところ申し訳ありません。エリオ殿がご来訪です」
「まだ食べ終わってないんだけど?」
「少々、お急ぎとのことです」
「もう……」
リーゼは嫌な予感をアメリアに悟られないよう、大げさに両手を広げて頭を振った。
「はいはい、行くよ、行けばいいんでしょ? う~ん……包丁の売り上げのことかな?」
「フフッ、リーゼも忙しいね」
屈託なく笑うアメリアを見て、リーゼは内心ほっとした。
「さっさと終わらせてくるよ」
「お肉、パンに挟んでもらっとこうか?」
ジュリィが気を利かせてくれた。
「ありがと。アメリアをよろしくね」
リーゼは背を向けると、真剣な面持ちで食堂を後にした。――緊張で耳をピンと張った狼獣人を後ろに従えて。
来週は1週お休みで、次回更新は4/9(日)に『脂肪がMPの無敵お嬢さまは、美少女なのにちっともモテない!』をアップ予定です。
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