表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/129

67 その後の顛末 その2

 【聖域の眠り(ヘヴンスリープ)】の眠りから覚めたあと、ゴラン王はエリオと何やら密談して、皆にこう宣言した。


 ――天使様が現れたことを決して口外してはならん! 夢として胸にしまっておけ! 禁を破った者は死罪とする! 国をお救いくださった天使様を、今度は我々が天聖教会からお護りするのだ! よいな!


 一同は御意に従う声を上げ、深々と頭を垂れたという。


 というわけで、天使の存在を伏せたが故に、“闇の大穴”を浄化したのがシャルミナということになったわけだ。


 恐れ多くも天使エリーゼ様の御業を自分の手柄としたことが、どうにもシャルミナの心に引っかかる。アメリアの隣の席で、いじいじと指先をいじっていた。


 変わったんだなとリーゼは思う。以前のシャルミナであれば、喜々として手柄を横取りしただろう。


「私は感謝してるけど? 肩代わりしてくれたおかげで、こうして人目を気にせずアイスが食べられるわけだし。――全部バレたら、もうどっかへ姿を消すしかないよ」


 シャルミナが慌てた。


「それは困ります! リーゼ様にはずっとこの国にいてもらわないと! まだ、何の恩もお返ししておりません!」


 うんうん、とアメリアも頷いた。


「恩……とかはどうでもいいけど、やっとのんびり学校に通えるし、まだしばらくはここにいるよ」


 アメリアの顔が曇った。


「しばらく……って、いつかどこかへ行っちゃうってこと?」

「世界中を旅するのが夢なの。見てない国がまだまだいっぱいありそうだしね」


 リーゼの顔がニコニコと輝いた。


「私も行く! 一緒に行きたい!」

「アメリアはシャルミナと一緒に国を良くしないと。貴族も、平民も、人も、ドワーフも、……天使だって、仲良く住める国にしてよ」


 アメリアとシャルミナがはっとした。さすが姉妹、反応が一緒だし、こうして見ると表情も似てる。


「リーゼ……ずるい、そんなこと言われたらついて行けないよ」

「リーゼ様のお言葉、心に刻みつけます。生涯の目標が出来ました」


 頭を下げたシャルミナの顔は真剣そのものだ。この貴族社会で身分差を撤廃しようなどと、待ち受ける苦難は未曾有のものとなるだろう。けど、それをやり遂げるような信念が瞳に宿っている。

 アメリアはそっとテーブルの下でシャルミナの手を取り、シャルミナも笑みを返すのだった。


 ――そう! リーゼ様と旅するのは私よ!


 どこからともなく声が鳴り響き、天空から“何か”がものすごい勢いで落ちた。


「きゃっ!」


 アメリアの可愛らしい叫びとともに、辺りは雷が落ちたかのような衝撃波で揺れ、土埃が収まると、リーゼの傍らには1本の剣が突き刺さっていた。


 青く輝くミスリルの刀身――それは、“闇の大穴”を封じていたリィンの剣だ。


「リィン……」

「お婆さま……」


 シャルミナとアメリアは、目をパチパチとしている。


 リィンの剣はまばゆい輝きを放つと、光を纏ったエルフの聖騎士に姿を変えた。


「いきなり飛んでくると、びっくりするんだけど?」


 リーゼが容赦なく不満の半目を向ける。


「あら、お茶会に呼んで下さらない主様が悪いんですよ。私だって、孫2人と楽しくお喋りしたいもの」

「……主従契約をした覚えはないんだけど?」

「契約などいりません。私を“闇”から解放し、拾って下さった時点で私の所有者はあなた様です。魔物を倒して剣が残ったら、倒した者の戦利品となるでしょう? それと一緒です」


 ……ピンクのクマといい、紫のトカゲといい、みんな勝手に従者になりすぎなんだけど?


「剣はゴランおじさんに返したよ?」

「それには私の合意がいります。私は意志を持った剣ですから、主は選びます」

「ゴランおじさんじゃダメなの?」


 リィンはリーゼの言葉に、少し頬を染めて微笑んだ。


「フフッ、愛する人と主様は違いますから」


 う……とリーゼは言葉に詰まった。愛する人とか言われてもよくわかんないけど、ママはパパの所有物じゃなかったし、主じゃないよね。


「私は……あなた様のおかげで、寝室に飾られ、幸せな日々を送っております。――ですが剣である私は、主の手にあってこそ輝くのです」

「剣なら刃を潰したのがあるから、いいんだけど?」


 そう言って、腰のブロードソードに手を置いた。


「そんななまくら(・・・・)と一緒にされるなんて……」


 リィンは大げさに嘆いて見せた。


「せっかく再会できたんだから、ゴランおじさんのそばにいなよ」

「お優しいですね、リーゼ様は……。では、そのなまくら(・・・・)ではどうにもならない事態が訪れたら、たとえ地の果てでも飛んでゆくことをお許し下さい」

「いいけど……本気出さないでよ? 私が振ったら、とんでもないことにならない?」

「山の1つぐらいは消えてしまいますかね」

「絶対ダメ! 大人しくしてて!」

「はぁい、わかりました」


 リィンはふくれっ面を作ると、リーゼの隣に座った。

次回更新は、10/23(日)に『脂肪がMPの無敵お嬢さまは、美少女なのにちっともモテない!』をアップ予定です。

https://ncode.syosetu.com/n8373hl/

↑もしくは画面上の、作者:イリロウ のリンクから。

どちらも読んでもらえるとうれしいです。


【大切なお願い】

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 応援して下さる方、ぜひとも

 ・ブックマーク

 ・高評価「★★★★★」

 ・いいね

 を、お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ