66 その後の顛末 その1
あ~~~~~~~ん。
小さな顔に似合わない大口を開けて、スプーンいっぱいのアイスクリームを頬張る。
「ん~~~っ、おいし~~っ」
長い長い“闇の大穴”との戦いを終えて、リーゼはロアンの街のミシェルの店で穏やかな時を過ごしていた。
海が見渡せるオープンカフェのいつもの席。真向かいでは、アメリアがじっとリーゼを見つめている。
「どうしたの?」
「リーゼ……様って呼んだら……ダメなんだよね?」
「怒るよ? あの姿を見ても、お友だちでいてって言ったよね?」
「そうだけど……天使様とお友だちだなんて、恐れ多くて……」
「天使になれるってだけで恐れ多いとかなし。もうなるつもりないし」
「そうなの? どうして?」
「宗教戦争になるって、エリオが言ってた。貴族主義の教義と合わない天聖教会が黙ってないって。……多分、殺し屋がいっぱい来るんじゃないかな」
「えぇ……」
「あの姿は封印。普通のリーゼとして生きていくよ」
普通? とは思えないけどね、とアメリアは困ったような笑顔をした。
あれから、アメリアの境遇は大きく変わった。王家の血を引くことが公になり、お父さんのユーリィ王子との対面を果たした。それは、シャルミナのたっての希望でもあり、父と妹の再会を自分のことのように喜んだみたい。立ち会ったゴランおじさんも、こっそり涙を拭ってたらしい。
病床のユーリィ王子はアメリアの聖魔法でずいぶん回復し、今ではサノワの村でアメリアのお母さんと一緒に暮らしている。もっと元気になったら農作業をするって。――アメリアは、お父さんの体を治したって願いを叶えたんだね。
ユーリィ王子は王位継承権を返上し、シャルミナが次の王様になることが決まった。
シャルミナは復興が進むロアンの街の大広場にたくさんの人を集めて、こう宣言した。
――平民の妹であるアメリアと手を携え、ゴラン王と共に国を良くしていく。
身分の差に踏み込んだ発言に平民は感喜し、貴族は困惑したけれど、“闇の大穴”を浄化した聖騎士であるシャルミナに表立って反発する人はいなかった。
「リーゼ様、遅くなりましてすみません」
白銀の髪の聖騎士が深々と頭を下げた。
「もう……様はやめてって言ってるのに」
「いえ、私にとってあなた様は命を救ってくださっただけでなく、生き方の誤りに気づかせて下さった大恩あるお方。あなた様の素性ゆえではなく、私の心がそうさせるのです」
生き方が変わっても、頑固なところはまるで変わらない。
「はぁ……もういいよ。座って、座って」
一礼して、隣に座るシャルミナを、アメリアはクスクス笑った。ホント、仲良し姉妹になってよかったね。
ミシェルさんが直々にお店から出てきて、シャルミナから注文を受けた。いつか王様になる人だし、対応も丁寧になるよね。
「“闇の大穴”を浄化したのはリーゼ様なのに、私の手柄になっていて心苦しいばかりです」
ミシェルさんが店の中に戻ると、シャルミナが切り出した――。
来週はちょっと京都へ行く予定なので、次回更新は、10/2(日)に『脂肪がMPの無敵お嬢さまは、美少女なのにちっともモテない!』をアップ予定です。
https://ncode.syosetu.com/n8373hl/
↑もしくは画面上の、作者:イリロウ のリンクから。
どちらも読んでもらえるとうれしいです。
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