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30 リィンとアメリア

 青き光の剣が真っ直ぐに飛んでくる。闇を切り裂き、光の粒を振りまいて――。


「主様、お呼びですか?」


 光の剣は尖塔の最上部にある窓から中に入ると、聖騎士に姿を変えて跪いた。


「あら? そのお姿は初めてですね」

「黒ネコ獣人のリーニャ。すばしっこくて便利だから」

「言ってくだされば、私が背に乗せて飛びますのに」

「それ、目立ちすぎ」

「フフ……ですね」

「お婆様」


 思わずアメリアが呼びかけた。


「アメリア、久しぶり~!」


 リィンはアメリアに飛びついて頭を撫でる仕草をした。光の体であるリィンは実際には触れられないので、真似をして喜びを表現する。


「もっと顔を見せなさい。元気そうで何よりよ」

「お婆様も」

「私は心配無用。夫に時々研いでもらうだけで健全なんだから」

「え……」

「もう……」


 アメリアが頬を染めるのと、リーゼが閉口するのは同時だった。


「ゴランおじさんが研いだら鋭くなりすぎだって。ホントに山を真っ二つにしそうだよ?」

「主様がお望みとあれば」

「望んでない! 望んでないから! 大人しくしてて」

「はい、仰せのままに」


 アメリアがうれしそうに両手を口元に当てた。


「お爺様は、お婆様が戻られてうれしくて仕方ないのですね。愛情を込めて研いでおられる姿が思い浮かびます」

「……そんな時を過ごせるのも、リーゼ様のおかげ。御用を何なりとお申し付けください」


 リィンは深々と頭を下げた。


「もう、お礼は何度も聞いたからいいよ。それより、そこの偽結界の魔力を吸い取って欲しいんだけど?」

「お安い御用ですわ、主様」


 リィンは偽結界に歩み寄ると、魔石をつまんで目先に運んだ。


「聖魔法を込めるのは主様が?」

「そう。一度やって見せて、周りの村の結界はアメリアにもやってもらおうかなって」

「では、私も一緒に旅をしても?」

「ゴランおじさんのところに帰らなくていいの?」

「旅の土産話があれば、少々寂しくても我慢するでしょう」

「じゃあ、いいけど。いちいち呼ぶのも悪いかなって思ってたし」


 ん? リィンさんが一緒だとエリオが大変かも? ――リーゼはちょっと思ったが、大変そうなのはいつものことだし、気にしないことにした。


「では、アメリアよく見てなさい。まずはこの魔石の魔力を吸い取ります」

「はい!」


 ワクワクでほころぶアメリアの顔だったが、次の瞬間一気に陰った。敬愛するリィンの顔がガイコツのように変容し、開かれた口から亡者のような呻きが漏れ始めたのだ。


 オオォオォォォ~~ン。


(あー、こうなるんだっけ。初めて見るとびっくりするよねぇ)


 以前見たことがあるリーゼは、そんなことをのんきに考えていた。


次回更新は、6/5(水)に『転生少女の七変化キャラクターチェンジ ~病弱だった少女が病床で作った最強7キャラで、異世界をちょっと良くする物語~』をアップ予定です。

https://ncode.syosetu.com/n1211ig/

↑もしくは画面上の、作者:イリロウ のリンクから。

どちらも読んでもらえるとうれしいです。


【大切なお願い】

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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