表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/129

17 偽りの結界

 池の真ん中にあるポールにたどり着くと、アカべぇの体は胸まで黒い池に沈んでいた。肩に座るリィゼの足も膝まで浸かっている。


「思ったより深いね。がまんできる?」


 ピンクのクマはウガッと吠えると、大きな頭を縦に振った。


「もっと近寄って」


 ザブザブとピンクの体が進んで、リィゼの小さな手がポールの先で弱々しい光を放つ聖石オーブに届いた。近づいてわかったが、聖石オーブは両手で包めないほど大きい。


「ん?」


 リィゼは鎧の首元から指先を突っ込み、首に掛けられた銀細工のチェーンを引っ張り出した。随分前にディツィアーノから渡された魔石の首飾りだ。


「これ、ディツィアーノが“魔石の泉”で採れた一番大きな魔石だって言ってたんだけど、結界の聖石オーブの方がずっと大きい。……そんなことってある? “魔石の泉”はリィンさんがずっと封じてきた“闇の大穴”の魔力がこもってるんだよ?」


 アカべぇも首を傾げた。


(何かおかしい……)


 リィゼは両手で聖石オーブを持ってみた。グラグラして外れそうだ。


「ん~っ…………それっ!」


 思い切って、持ち上げてみた。聖石オーブはあっさり外れたのだが、光がついてこない。――正確には、金色の光が緑に変わって、ポールの上に留まっている。


「えっ!? 何で!?」


 リィゼは、自分の両手のひらの中にある聖石オーブを見た。そこには多面体の形をしたガラスのフードがある。


「あっ! 何これ!? ガラス!? 中が赤く塗られてる!」


 リィゼはもう一度、フードを被せた。緑の輝きにガラスの内側の赤色が混ぜられ、黄色くなった。よく見たら、金色じゃなくて黄色だ。


「インチキ!?」


 またフードを外して緑の魔石をよく見た。大きいと思っていた聖石オーブは偽りで、中の魔石は豆粒ほどの大きさしかない。


「これって、緑だし……風魔法が込められてる? 帝国の聖女さんは何でこんなことを……。風じゃ水は浄化出来ないよね?」


 アカべぇに聞いてみたが、首を傾げるばかりだ。

 聞いた相手が悪かった――。目の前で「?」を浮かべてるクマは、殺戮が得意なブラッディ(血まみれ)ベアだ。


「ウィンディに聞けばわかると思うんだけど、瘴気が濃いところは来たがらないし……あ……」


 いた! 誰よりも結界に詳しい人が! ちょうどさっき思ったとこ! けど、どう呼べばいい? ……それっぽく?


 リィゼは右の手のひらを広げて、天に向けた。――まるで、その右手に収まるべきものを呼ぶかのように。


「聖剣リィンよ、我が手の元へ!」


 空を覆っていた暗雲がゆっくりと渦を巻き、中心からまばゆいミスリルの青き輝きが差した。

次回更新は、12/13(水)に『五つの加護持ちお姫様は、冴えない加護なし辺境領主おっさんに恋をする。』をアップ予定です。

https://ncode.syosetu.com/n1211ig/

↑もしくは画面上の、作者:イリロウ のリンクから。

どちらも読んでもらえるとうれしいです。


【大切なお願い】

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 応援して下さる方、ぜひとも

 ・ブックマーク

 ・高評価「★★★★★」

 ・いいね

 を、お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ