表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/129

07 闇の大穴、再び

 ドンドンドン! 監視砦の奥にある、重々しい扉が激しく叩かれた。扉を守っているはずの騎士2名は、床に崩れて眠りこけている。


「シャルミナ様! コンラッド様! お目覚めください! 大変なことになっております! シャルミナ様!」


 う……。銀色のまつげが微かに動くと、はっとして白銀の体が身を起こした。いつの間にか、床に突っ伏して眠っていたらしい。


 朝になれば、戦いが始まる――。一睡も出来ぬものと思っていたが、まるで気絶でもしてしまったかのように眠っていた。コンラッドも床に転がっていびきをかいている。


「何事か! もう夜明けか!?」

「いえ、まだ日は昇っておりませぬ。ですが、大変な事態が! 急ぎ“闇の大穴”の元へ!」

「む……今、行く!」


 シャルミナは、幸せそうな顔でよだれを垂らしているコンラッドの頭をポカリと叩いた。


「ぐあっ!?」

「馬鹿面してないでさっさと起きろ! 良からぬ事態らしい!」


 何事か飲み込めないコンラッドは目をしばたたかせたが、やがて無様に横たわる自分の姿に気づき、勢いよく立ち上がった。


「は、ははっ! まさか眠りこけるとは! 申し訳ございません!」

「構わぬ、私も眠っていたようだ。“闇の大穴”へ向かうぞ!」

「はっ!」


 “闇の大穴”へ向かう。――自分で言いながら、どういうことだ? と疑問が湧く。“闇の大穴”はすでにない。あるのは“魔石の泉”のはずだ。

 だが、呼びに来た騎士は“闇の大穴”と言った。一体何が起こっているというのだ?



 答えは、穴のほとりに立ってすぐにわかった。浄化されたはずの“闇の大穴”が復活しているのだ。新たな闇は沼のくぼみを半分ほどしか満たしていないし、闇の色が黒から明るい紫に変わっているが、底に多く眠る魔石を覆うように液体が満たされている。


「これは……」


 絶句するシャルミナの傍らで、コンラッドが言葉を継いだ。


「“闇の大穴”が……復活しておる……」

「あり得ぬ! “闇の大穴”は完全に浄化されたのだ! お前も見たであろう、奇跡の力を!」

「ですが……目の前の沼は、また闇を貯めているように見えまする」

「う……」


 事態が飲み込めない。背後に控える大勢の騎士たちもざわめいている。


 シャルミナは腰の聖剣にそっと触れた。


 “闇の大穴”は、このリーニャ様による聖剣と、天使エリーゼ様の奇跡によって、根源から浄化されたはず。天使様の力を上回る闇の力など存在するわけがない。


「シャルミナ様、これは好都合ですぞ。“闇の大穴”が復活したとなれば、帝国との開戦も防げるかも知れませぬ」

「それは……そうかもしれないが……」

「“闇の大穴”をどうするかは、その後に考えればよいこと。今のシャルミナ様のお力であれば、まだ小さきこの“闇の大穴”であれば、浄化することも可能では?」


 ぶるんと沼が震えた気がしたが、シャルミナもコンラッドもさして気に留めなかった。それよりも、荒涼とした山肌の向こうから日の光が射し始めている。


 帝国との最後の交渉が始まる――。シャルミナは白い指を強く握りしめた。

次回更新は、6/18(日)に『五つの加護持ちお姫様は、冴えない加護なし辺境領主おっさんに恋をする。』をアップ予定です。

https://ncode.syosetu.com/n1211ig/

↑もしくは画面上の、作者:イリロウ のリンクから。

どちらも読んでもらえるとうれしいです。


【大切なお願い】

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 応援して下さる方、ぜひとも

 ・ブックマーク

 ・高評価「★★★★★」

 ・いいね

 を、お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ