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アクトコーナー  作者: 乱 江梨
第一章 学園改革のメソッド
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学園改革のメソッド24

「遥音先輩、澪先生を苛めてた三人の出席番号って分かりますか?」

「分かるが……どうしてだ?」



 唐突に話の流れと関係ないように思われることを尋ねた透巳に、その場にいる全員が首を傾げてしまう。


 先刻透巳が語った、澪先生が絶対に選ぶはずの無いもの。そして同時にそれを解き明かそうとする伸弥が最も辿り着くのに時間を要する数字が金庫の暗証番号だという透巳の推測は、実に的を得ていて十分に可能性がある。


 だがその数字が一体何なのか、やはり最後に辿り着く謎はこれだった。



「澪先生が選ぶはずのない数字。つまりは澪先生が嫌いな何かに関連しているということです。そして同時に、毎日日記を取り出す際、彼女の頭の中を嫌という程支配していた存在……流石にもう分かるでしょ?」

「まさか……自分を苛めてた生徒のことを?」



 信じられないと言った相好で口元を手で押さえた明日歌は、小さな声で尋ねた。その問いに透巳が首肯すると、更に明日歌たちは目を見開いてしまう。


 普通暗証番号などを決める時、自分が嫌うものに関連する数字はつけないだろう。だからこそ澪先生はそれを選んだ。それ程までに見られたくなかったから。

 そして同時に毎日書く日記なので、澪先生はその度にこの金庫を開けていたことになる。つまり金庫を開ける時、彼女の頭はこれから日記に書くであろう己の苦しみに支配されていたというわけだ。


 なのでどちらにしろ、金庫の暗証番号はそれに関連したものである方が都合が良かったのだ。



「そうです。だから彼らの出席番号だと思いました。三人いるので誕生日は違うだろうな、と」

「なるほどな…………犀川は一一番、橋田は二九番、宗方は三七番だ」



 暗証番号は六桁。もし正解の数字が誕生日だった場合、この三人の誕生月と誕生日がどちらも一桁ということになる。その可能性は低いと考え、透巳は彼らの出席番号を遥音に尋ねたのだ。


 それらを理解した遥音は、調べていた彼らの出席番号を透巳に伝えた。



「ありがとうございます。こうなってくると可能性は二つです。一つは一人一人の出席番号を塊として考えて並び替える場合。この場合、一一、二九、三七を並び替え、最も一から遠い数字は〝三七二九一一〟です」



 伸弥が答えに辿り着くのに最も時間を要するとは、つまり一から最も遠い数字である。推測で答えに辿り着けなかった場合、伸弥のように一から順に試すのが妥当だろう。わざわざ〝九九九九九九〟から試す天邪鬼な人間はそういない。


 透巳は一つ目の可能性である〝三七二九一一〟のボタンを押してみた。だがどうやら不正解だったようで、金庫が開くことは無かった。



「やっぱこれは違いますね。次は全ての数字をバラバラにして、最も一から遠い並びにする場合です。この場合、一、一、二、九、三、七を並び替えますから、最も大きな数字は〝九七三二一一〟です」



 全員に説明しながら、二つ目の〝九七三二一一〟のボタンを押し始めた透巳。最初の〝三七二九一一〟はそこまで大きな数字ではないだけあって、透巳も正解だとは思っていなかったのだろう。実際、その数字なら既に伸弥も試していただろう。


 透巳はテキパキと止まることなくボタンを押していったが、伸弥たちにはとてつもなくゆっくりと、まるでスローモーションのようにその光景が目の前で流れていた。


 透巳の推理は矛盾点が無い。だが伸弥は妻が自分を苦しめた生徒の出席番号を暗証番号にしたとはどうしても思えなかった。いや、思いたくなかったのだ。


 それでも、真実はいつも呆気なく、残酷な形で現れてしまう。


 ガチャリ――。


 ボタンを全て押し、刺さった状態の鍵を透巳が回すとそんな心地の良い音が和室中に響いた。



「ほら開いた」

「「…………」」



 ゆっくりと金庫の中身が透巳たちの視界に広がる。長年伸弥が睨み合っていたこの金庫を、いとも簡単に開けてしまった透巳に対して全員が言葉を失ってしまう。


 広々とした金庫の中には日記と思われるノートが一冊置かれているだけで、その存在感は異質だ。


 透巳は金庫の目の前から少し離れると、その位置を伸弥に譲る様に目配せをした。それに気づいた伸弥は恐る恐る、震える脚でゆっくりと澪の日記へと近づく。



「澪……」



 意を決し、伸弥は妻が生前綴った日記を読み始めた。一文字一文字、丁寧にその言葉を追う伸弥は、その当時のことを思い出す。


 ********


 青ノ宮伸弥はこれまで、誰かを本気で好きになったことが無かった。他人にそこまでの興味を抱けなかった。家族のことも、自分のことでさえもどうでも良かった。


 そんな伸弥が初めて愛し、一生をかけても大事にしたいと思えた存在が澪だった。そんな存在が自分のことを愛してくれ、同じ職場で働くことも出来、伸弥はその当時これ以上ない幸せを感じていた。


 だが伸弥が澪に対して抱く愛情はかなり異質だった。彼女以外どうでも良かった。例え愛する澪との間にできた子供でも、彼女と同じように愛おしいと思うことが出来なかった。


 澪にとって子供がいかに大事な存在かは理解していたので、そんな彼らに危機が訪れれば助けようとはするだろう。だが澪と子供を天秤にかければ一切迷うことなく澪を選ぶ程度には、子供のこともどうでも良かった。


 それ程までに愛していた澪が唐突にその命を自ら絶ったと知った時、伸弥は初めて絶望というものをその身で体験したのだ。


 澪が亡くなってからの二週間は何もする気が起きず、伸弥はただただ泣き続けていた。そして涙が枯れ果てると、当然のように彼女を死に追いやった存在への復讐心が伸弥の中で燃え盛っていた。


 復讐のために伸弥は手段を選ばなかった。情報をかき集め、妻を死に追いやった存在を特定した伸弥は息子の百弥を利用することで彼らへの復讐を果たしたのだ。


 ********


「やっぱり、そういうことなんだ」

「その口ぶりだと、既に気づいていたのか?」



 自身の記憶を整理するように語った伸弥。その相好は、澪の日記に綴られている苦しみの声のせいで酷く歪んでしまっている。


 自分たちの推測が間違っていなかったことを悟った明日歌はポツリと呟いた。その言葉にピクリと反応した伸弥は自嘲じみた笑みを浮かべると、自暴自棄になったように尋ねた。



「ええ。でも腑に落ちない点がいくつか。澪先生を苛めた生徒に復讐するためなら、わざわざ教師に圧力をかけてまで苛めを煽る必要はないはず。どうしてそんなことを?」

「……君のように、純粋な人間には分からないだろう。いいか?私はね……あの三人だけではなく、彼女に対する苛めを見て見ぬ振りした奴ら全員を恨んでいるんだ」



 緊急会議で上がった疑問について明日歌が尋ねると、伸弥は虚ろな目でその理由を語った。その時明日歌たちは理解した。伸弥が苛めを行った三人、それを見て見ぬ振りした者たち、そして澪の苦しみに気づけなかった自分自身を伸弥が恨んでいるのだという事実を。



「だが、見て見ぬ振りをしたというだけでは、百弥の標的にはならない。だから教師たちに圧力をかけ、苛めを煽った。奴らがクズに成り下がれば、復讐することが出来る。そして同時に、彼女の苦しみに近くにいて気づけなかった教師たちに苦痛を与えることも出来る」

「そんな理由で……?」



 事の真相を知った明日歌は怒りを感じながらも、あまりの衝撃で伸弥を殴ることも、動くことでさえ儘ならなかった。


 だが伸弥の告白で緊急会議の際に上がったもう一つの疑問に説明をつけることが出来た。それは目的を果たしたはずなのに、何故理事長は教師に圧力をかけ続けているのかという疑問。


 苛めを見て見ぬ振りしたというのも、あの三人と同級生のはずだ。上級生や下級生が違う学年のクラスで起きている苛めを知っている訳もない。だから不特定多数に対する復讐も既に済んでいる、というよりもこの学園に今はそもそもいないはずなので本来ならこんなことを続ける必要はない。


 だが教師に罪悪感という苦しみを与えるために、今もなお圧力をかけているのなら説明がつく。



「あ……そっか」

「透巳くん、どうしたの?」

「いや。うちの担任、俺たちに理事長がかけている圧力のこと話したのに何のお咎めも無かったから、不思議に思ってたんですよ。藤村先生が授業放った話は結構あの後噂になってたし、理事長が自殺未遂の件知らないとも思えなくて。それで今ふと、奥さんと同じように自ら死のうとしてしまうまで追い込んだ罪悪感があったのかなって気づいて」



 透巳はここのところ疑問に思っていたことが解決し、スッキリしたように呟いた。一方、伸弥は自身の心理を完全に見透かされていることに驚き、口をポカンと開けてしまっている。


 藤村は生徒を救いたくても救えない苦しみで自殺未遂まで追い込まれた。もちろん苦しめるために伸弥が行ってきたことの結果だが、彼はふと藤村と澪を重ねてしまい、それ以上追い込むことが出来なかったのだ。だから教師間での秘密を透巳たちにバラしたことを知っても、罰を与える気にはなれなかった。



「なるほどね……先生といえば、何で鷹雪先生は見逃したの?」

「見逃す?」

「あー、兼は知らないっけ?鷹雪先生だけ、教師の癖に圧力のこと知らなかったの。しかも生徒に保健室登校許したりしても何のお咎めも無し。ずっと疑問だったんだよねぇ」



 明日歌は鷹雪をF組に勧誘した際に抱いた疑問について尋ねた。このことを兼は知らなかったようだが、透巳は薔弥の〝F組創立秘話〟で聞いたことがあったのですぐに話の流れを理解することが出来た。



「あの養護教諭は、澪が苦しんでいることを知り、何度か彼女の相談を聞いてくれていたそうだ。そういう情報があったので、見逃していた。この日記にも書いてある」



 つまりは鷹雪ただ一人が、教師たちの中で伸弥の復讐対象にはなり得なかったというわけである。未だに日記を読み進めている伸弥はか細い声で真実を告げた。


 これで青ノ宮学園に対して抱いていた多くの謎は、こうして解き明かされた。



「理事長、澪先生の遺書ってあったんですか?」

「……ない。いくら探しても、見つからなかった」

「じゃあノートの最後のページに何か書いてるんじゃないですか?あるとすればそこしかないでしょ」



 透巳の唐突な問いに光の灯らない瞳で答えた伸弥。だが、透巳の推測を聞いた途端、伸弥は急いでノートの最後のページをめくった。

 遺書が無かったとしても、死ぬ直前に書いた最後の重要な何かぐらいはあるはずだと透巳は考えたのだ。




〝もう無理。もう駄目。耐えることが出来ない。ごめんなさい、あなた。薔弥。百弥。勝手に悩んで、勝手に苦しんで、勝手に死んでしまう私を許してなんて言いません。私にはもう、選択肢が残っていないんです。本当にごめんなさい。こんな私が何かを願うなんて差し出がましいけれど、どうか私が死んだことで、少しでもあなたが薔弥と百弥のことを愛してくれれば、私は嬉しい。苦しくて、辛くて、死ぬことしか選択できないけれど、もしそんな未来があるのならこの死も無駄じゃないって思えるから。大丈夫。あなたは私しか愛することが出来ないって悩んでいたけれど、きっと大丈夫よ。だって薔弥と百弥はあなたが愛する私の、忘れ形見なんだから。そして、私のような被害者が二度と出ないように。百弥が正義執行だなんて言って、怪我をすることが無いくらい平和な学園になれば、私も成仏できるでしょうね。あなた、薔弥、百弥。本当に本当に、愛してる。〟




 最後の日記には所々文字が滲んでいる箇所があり、澪が泣きながらこの言葉を紡いだことは一目瞭然だった。そして、その日記は伸弥の涙によって更に文字を滲ませてしまう。


 伸弥は愛する妻の最後の言葉を目の当たりにして、ようやく気付いたのだ。自分という存在が、愛する妻を死んでもなお苦しませ続ける、一番の愚か者であるということに。自分が彼女の願いを何一つ叶えてやれていないことに。気づいてしまったのだ。


 息子たちを愛するどころか、その息子を利用して学園をどんどん暗闇に引きずり込んでしまった。


 いくら後悔したところで、やり直すことなどできない。伸弥は自身が犯してしまった大きな罪と、これから向き合いながら生きていかなければならないのだ。



「……」

「……なんだ百弥。俺が利用したことを、怒っているのか?殴りたければ殴れ。それだけのことを私は仕出かした」



 百弥の視線が自身に向いていることに気づいた伸弥は、自暴自棄になったように言い放つ。だが百弥の瞳に怒気は窺えず、ただただ目の前の父親をその目に映しているだけのようだ。



「別に。俺は俺のしたいようにやっただけだ。それに俺だっておふくろを苦しめた奴らを許せなかった。だからあんたがそいつらの情報俺にやってくれたおかげで、俺はあのクズどもを殴ることが出来た。あんたに怒ってるわけじゃねぇ。それに俺、これからは悪を更生させることが出来る様な、正義の味方になるって決めたんだ。だから、無闇に暴力を振るったりしねぇ」



 今までの百弥とはまるで違う、狂気的でも、暴力的でも、激情的でもない。一本筋の通ったような、そんな雰囲気を纏った百弥はそう断言した。


 その姿に伸弥だけではなく、百弥に大きな問いかけをした透巳も目を見開いた。



 悪を滅ぼしたいのか。百弥が悪を滅ぼしたいのか。


 この問いに対しての答えの様なものを見つけた百弥に全員が驚きの目を向ける中、玄関の方向から扉が開けられる音が鳴り響いた。


 インターホン無しでこの家に来訪する人物など、百弥と伸弥の他には一人しか存在しない。そのおかげでその場にいる全員がその音の発生源に勘付き、同時に怪訝そうな相好を見せる。



「お、皆さんお揃いやなぁ」

「……薔弥」



 薔弥を睨みつける明日歌とは対照的に、心底楽し気な表情を浮かべている薔弥。百弥に嘘をついてまで伸弥と透巳たちが鉢合わせる状況を作り出した張本人に対する不信感が、明日歌たちに警戒心を抱かさせているのだ。



「薔弥。アンタでしょ?理事長の変な噂流したの」

「噂?」

「ほぉー、気づいとったか」



 最も怪訝そうな目をしている明日歌が唐突に問いかけたことで、伸弥は虚を突かれ首を傾げた。自身に関するおかしな噂など、伸弥は全く知らなかったので寝耳に水なのだ。


 だが当惑気味の伸弥を置いてけぼりに、明日歌の尋問内容をあっさりと認めた薔弥は悪びれる様子もない。



「何のことだ?」

「理事長様は教育委員会に太いパイプを持ってるっていう漫画みたいな噂。もしかしたらそういうこともあり得るかもしれないけど、証拠があるわけでもないただの噂。そんなの薔弥が犯人に決まってるじゃん」

「流石やなぁ、明日歌」



 透巳の担任である藤村が自殺未遂を図った際に言っていた話がずっと引っ掛かっていた明日歌は、その噂の発生源が薔弥であることに勘付いていたのだ。


 自身の悪い部分をよく理解している明日歌に、薔弥は感嘆の声を漏らしたが、明日歌からしてみればおちょくられているようにしか思えない。



「俺たちの父親っちゅうことだけあって、我が学園の理事長様はなかなかおかしい……なんやが、少し詰めが甘いんや。こないな阿呆な計画、教育委員会のお偉い方にチクられた即ゲームオーバーや。せやから俺が直々に助け舟出してやったんや。親父には感謝して欲しいぐらいやで」



 ヘラヘラとしながら薔弥は自らが広めた噂について語った。その事実を全く知らなかった伸弥は驚愕し、息子の異常性を再確認させられた。


 教師たちに苛めを黙認するように圧力をかけるなど、被害者たちに訴えられればすぐに崩壊してしまう計画だ。だがこれまで教師たちが教育委員会に掛け合ったことは無かった。それは薔弥が流した根も葉もない噂が原因なので、確かに薔弥の言い分は正しいと言えば正しい。



「薔弥……私はお前のことがどうしても理解できない。澪は私とお前が親子らしい関係を築ける未来を望んでいたが……」

「はぁ?何言っとんねん。そないなことコッチから願い下げや。俺はアンタなんぞに興味なんてあらへん。俺はただ、百弥を揶揄いながら面白おかしゅう生きていければそれでええんや。アンタは俺の人生にとって、不要な存在なんやで?」



 苦し気な相好で言い淀んだ伸弥に、薔弥は酷く冷たい瞳で突き放した。


 澪の最後の望みを聞き入れてやりたいという思いと、青ノ宮薔弥という男を理解しきれないという思いに翻弄されている伸弥を嘲笑う様に、薔弥は彼の思いを一刀両断した。


 分かってはいたことでも、伸弥は実の息子から不要と認識されていたことに思わず顔を顰めてしまう。


 百弥は薔弥に気に入られている、悪い意味で。なので薔弥は百弥をわざと怒らせるようなことをして、その反応を見て楽しむのが生きがいになっている節がある。薔弥が明日歌に嫌われる原点の様なものはこれだ。自分が楽しむためならどんなことであろうと仕出かしてしまう。彼にはそんな危うさがあるのだ。



「っと、そんなことよりもや。親父、アンタ何でこの間百弥にいじめっ子の情報やったんや?」

「……?何のことだ?」



 薔弥の言っているこの間とは、百弥が透巳のクラスのいじめっ子たちを粛正しようとした際の話だ。薔弥の問いで、明日歌たちも漸くあの時の矛盾点に気づくことが出来た。


 伸弥の計画では、まず澪を自殺に追い込んだ生徒と見て見ぬ振りをした生徒に復讐するため、苛めを煽って百弥に粛清させる。だがこれは何年も前に終わったはずの計画だ。今もなお教師へ圧力をかけているのは、澪が苛められている事実に気づけなかった教師たちへの復讐なので、これに百弥の粛清は不要だ。


 だが先日、百弥は透巳のクラスメイトに襲い掛かっていた。もちろん百弥は正義の味方を目指していたので、目の前で苛めが起こっていれば自分の意思で粛清しようとしただろう。だがあの時、一部始終を見ていた薔弥は知っていた。百弥が目の前で起こった悪事に反応してあんなことをした訳では無く、何者かの情報で彼らを悪と判断し、粛清しようとしていたことを。



『コイツらいじめっ子なんだろ?この野郎も認めてたし。それにこいつら、透巳のことも苛めてたって()()()()



 この百弥の発言を耳にしていた明日歌たちも、伸弥の計画とこの時の出来事には矛盾が生じることを理解し、思わず首を傾げる。



「とぼけんなや……なら」

「いや、親父じゃねぇぞ」



 当惑している伸弥を薔弥が問い詰めようとすると、百弥が彼の関与を否定するように声を上げた。その一言で全員の視線が百弥に向けられる。



「はぁ?親父やないんなら、誰がそないな情報くれたんや?」

「知らねぇ」

「はぁ?」

「しょうがないだろ。俺の靴箱に手紙が入ってたんだ。あの三人がいじめっ子だっていう告発文みてぇなもんと、その証拠の写真が一緒に。誰からかは分からなかったけど、本当なら粛清しねぇとって思って」



 怪訝そうな表情で尋ねてくる薔弥に怯むことなく、百弥はあの日の事実を淡々と語った。百弥の話が本当なら、一体誰が何のためにそんなことをしたのか。普段であればこういうことは大抵薔弥が犯人だったりするのだが、彼の反応からしてそれはない。



「もう、何なの?せっかく解決したと思ったら、また訳の分からない謎が湧いてきちゃって」

「…………明日歌、透巳くんどこ行った?」

「え……?あれっ……いない」



 学園の大きな問題が解決したと思った矢先、また全く別の方向から謎が舞い込んできてしまったせいで明日歌は落胆したような声を漏らす。そんな明日歌に唐突に、透巳の所在を尋ねた薔弥。


 明日歌は一瞬当惑するが、その場にいるはずの透巳の姿が何故かどこにも見えない事実に気づき、薔弥の問いが真っ当なものだと理解する。



「え、先に帰っちゃったのかな?」



 周りを見回してもやはり透巳の姿はどこにもなく、玄関先にも彼の靴が無いことから帰宅したことは明らかだった。


 全員が困惑する中、薔弥ただ一人が違う反応を見せている。今まで経験したことの無い様な鳥肌、そして未知の存在に対する好奇心。それらが薔弥を一気に襲い、彼の口角を引き攣った様に上げている。



「ほんま、おもろいわぁ……透巳くん」



 次は明日更新予定です。次回、「学園改革のメソッド」完結です。


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