訓練
俺たちは、キングスライムと戦ったあと何日か仕事をしなかった。キングスライムと戦った日を1日目とするなら、2日目と3日目は全員体のどこかがおかしくなり(ユーリと俺は腕を少し動かすだけで激痛が走り、ルトはしばらく頭が回っていなかった)、この状態で狩りに出かけるのは危なそうだったからだ。曰く、体に負担をかけるようなスキルの使い方をした場合、何日か体に変調をきたすらしい。
そのあとも、こんなジリ貧に近い戦い方をしないで済むように特訓をすることにした。街に訓練場のようなものがあり、そこで特訓をした。
1週間が経った。俺とユーリの動きの速度が格段に上がっている気がする。ルトも魔法を連発できるようになってきた。新しいナイフの使い方も、だいぶ把握できてきた。相手の腕や剣を絡めとって、一気に急所に攻撃を仕掛ける、というのが基本的な動きになるようだ。
そして、驚いたことにこの2つのナイフは、一瞬で2つを持ち替えられるという特徴があることが分かった。片方で相手の攻撃を絡め取り、持ち替えてもう片方で攻撃することもできるらしい。
これを使って、相手のリズムを崩すことが可能になるだろう。ユーリやルトと模擬戦を何度かやったが、「ナイフを瞬時に入れ替え、攻撃する」ということを初めて試したときは、どちらも混乱していたので俺が勝った。そのあとの試合では2人も警戒していたので、五分五分の試合だったが。
「じゃあユーリと俺の、訓練場最後の模擬戦しようか」
「おっけー」
と言った瞬間、ユーリが踏み込んできた。不意打ちだったがこちらも備えている。白銀の方のナイフで受け流し、そのまま首に向けてナイフを振るう。
ユーリの腕が少し揺らいだ。
素早く後ろに飛び下がりながら、漆黒のナイフに持ち替える。
ユーリが体を軽く回転させ、刀を振るう。鎌鼬が飛んでくるはずなので、しっかりと軌道から体を逸らし、その勢いで走り込み、ユーリの手首にナイフを引っ掛ける。素早く回転させ、刀を弾き出そうとするが、黒い糸が見えたので慌てて飛び下がる。さっきの俺のいた位置のうち、ちょうど股のあったあたりを正確にユーリの前蹴りが通過する。避けずに当たっていた場合は……想像したくない。
追撃がくる。ユーリが踏み込みながら3連撃、『菖舞』が飛ばしてくる。間合いより少し離れた位置から、全力で突進し……そのまま後ろに回る。ユーリの手首を回し、刀の向きを一気に変えながら、首筋にナイフを当てる……
「そこまで。同時だったっすね」
ユーリの首に俺のナイフが当たっているが、ユーリは刀を逆手持ちにして、俺の胸に切っ先を突きつけていた。
「いやぁお前ら、相変わらずド派手にやってくれやがって……この斬撃の跡とか埋めるのにどんだけ石膏買ったと思ってんだよ……」
ここの訓練場の管理人、ルーカスさんが近寄ってきた。10年ほど前に冒険者を引退し、今は格闘などの指導をしながら、暇ができると訓練場を見にきている。少し酒臭い。
「また飲んでました?」
「カカァには言わないでくれよ?明日の夜まで飯が無くなるからな、ハハハハハハ」
実は大の酒好きらしく、昼から一杯引っ掛けているらしい。そのせいで奥さんに「アンタにやる飯は3日分は無いからね!」と言われて、3日間断食したこともあるらしい。外食すれば良いのにと言うと、「カカァの手料理がいいから、外食はしない」と言う。なんだかんだいって、夫婦仲は良いようだ。ちなみに奥さんは小さな飲み屋を経営しているらしい。
「ところでお前ら、旅に出るって予定は無いのか?冒険者の多くが、名を挙げるためとか強くなるためとか、楽しいからとかいう理由で旅して回ってるぜ」
「考えてみます!ありがと」
こうして訓練場を出て、宿屋へ向かった。今は金に余裕ができたので、4部屋ある部屋を借りている。
「旅をするって予定が出来たんだけど、どうしようか?」
「僕はどっちでも良いよ、みんなに任せる。ただ、強い魔物と戦いたいし、みんなと一緒にいたいから「冒険者パーティ解散」は無しで」
「俺は旅してみたいっす。ルイスの村ってここからちょっと北に行ったところにあるんでしょ?そこにいったん寄りながら、王都に行ってもっと楽しいこと探すってのはどうかな?」
なるほど。そのタイミングでお金を渡せばいいかもしれない。
「そうしようかな。2人ともそれでいい?」
「「もちろん」」
いつも思うのだが、このパーティはとてもまとまりがあるように感じる。
「いつ出発にする?」
「明日か明後日のどっちかがいいと思う」
「明日狩りをして金を貯めて、明後日出発にしたらいいと思うっす」
「じゃあ明後日で」
「「はーい」」
今日はとりあえず狩りに行き、金を稼ぐことにする。いつも通り食堂で夕食をとり、宿で眠った。
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