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ユーリのスキル

ユーリはオークに無造作に近づいていく。



「……『鶴の一声』」



オークが棍棒を持った腕を振り上げる。ユーリの頭を狙っているように見える。









一閃。




オークの胴を両断する形で、ユーリの刀が銀色の弧を描く。





……ドサッ


一拍置いて、オークの上半身が崩れ落ちる。




「こんな感じかな。今のは、抜刀から一気に斬りつけるっていう技だよ。『鶴の一声』って名前をつけた」



刀をしまいながらユーリが話しかけてくる。オークはかなり横にでかい魔物なので、動体を両断するのはかなり難しい。それを一撃で成し遂げるあたり、ユーリの強さが窺える。



「似た感じの技で、『揚雲雀』っていうのもあるからまた見せるね」


「すごかった。というか、胴体をを両断って……すげえな」


「あ、そう?」



口調は素っ気ないが、喜びを隠し切れていないように聞こえる。



「あと、俺見せたい技があるんだけどいい?」


「うん、何?」


「えっと……『陽炎』」



ウルフマンとの戦いで新しく見つけたスキルを試してみる。



「何か変わった?」


「特に……ちょっと影が薄くなった気はするけど」



スキルを解除する。少し息が切れる。


「じゃあ、ちょっと草むらに隠れるから、10秒目閉じててくれる?」


「うん」




ユーリに目を閉じてもらい、木の陰に隠れる。



(『陽炎』)



10秒経って、ユーリが目を開けたのを確認する。隠れたところを出て、ユーリの方に向かう。ユーリの目の前に移動してみるが、ユーリはキョロキョロしている。



(『陽炎』解除)



スキルを解除する。




「……! わっ!」



「さっき何秒間か目の前にいたんだけど、気づいてた?」


「いや……気付いてない。何した?」


「さっきと同じ。あそこの木の陰に隠れて使ったあと、ユーリの目の前に移動した」


「そ、そうなんだ。うん」



なんとも言えない反応を返されるが、それは一旦無視する。何か考えているような顔をしていたからだ。


とりあえず、もう何匹か魔物を狩ることにする。オークは倒しても何も出てこないからだ。



しばらく歩いて、ふいにユーリが口を開いた。


「ひょっとして、さっきのスキルは『使用時に自分に気付いてない相手から姿を隠す』みたいなのじゃない?」



なるほど。そういうことかもしれない。ユーリに最初に見せたときは、ユーリは俺に気づいてた。だから、スキルで俺が見えなくなることは無かった。けれど、2回目に見せたときはユーリは俺がどこにいるのか、正確には分からなかった。だから俺の姿が見えなかったということか。



「なるほど、確かに」


「不意打ちに使えそうだね。『首刈り』と合わせて使えば一撃必殺じゃん」


「後でそれやっていい?」


「いいよ。その次の魔物は僕が狩っていい?実はもう一個技があるんだ」


「もちろん」





しばらく歩くと、真っ赤なスライムを2匹見つけた。『陽炎』と『首刈り』の併用で1匹倒す。かなり慣れてきた。素早く『シュクチ』で逃げ、ユーリに出番を譲る。

ユーリは刀を抜き、近づいていく。スライムが炎を吐く。業火では無いが、当たったら大火傷を負うだろう。けれど、ユーリは大丈夫だ。一瞬見えた顔が、笑っていたからだ。



「……『八重三日月』!」



銀色の三日月が、一気に8つ現れた。スライムが炎ごと木っ端微塵になる。と同時に、ユーリが刀を取り落としかけて、慌てて拾い上げたのが見えた。


「大丈夫か? すごい技放ってたけど」


「大丈夫じゃない。昨日、父さんが言ってた『伝説の御方の技』を真似しようとして作った技なんだけど、腕がとても痛い。これ以上の狩りはできないと思う」


「そっか。じゃ、組合に帰ろう」


スライムボールを拾って、組合に向かう。まだ正午頃だろう。買い取ってもらった金で、今日の昼と夜の食事をしようと思った。




「さっき言ってた『伝説の御方の技』って何?」


「僕の家に伝わってる昔話みたいなものなんだけど、僕らのご先祖様の友達にやばい人がいたんだって。


『目にも止まらぬ速度で刀をふるい、素手で木を斬り、一撃で谷を作った』って言われてる。ご先祖様もかなり凄かったらしいけど、それでも追いつけない人だったらしいよ。


で、その人が戦うときって、8連撃を一塊とした攻撃をポンポン撃ちまくってたらしい。夢で見たんだ。昨日その技を再現しようとしたら、できちゃった。けど、かなり腕に負荷がかかるから、1日に2回が限界だと思う」



「なるほどね。他に技はある?」



「僕が作った技が何個かある。さっき見せた『鶴の一声』と、それに似た技の『揚雲雀』、あとは『鎌鼬』『旋風』かな。『旋風』『八重三日月』は、一回放つだけで腕を痛めるから、あんまり使えないけど。


ルイスは技とかあるの?」



「さっき見せたので全部だよ。まだ何かありそうなんだけど……」



「新しいのが見つかるとといいね。

お昼ご飯食べたら、武器屋とか寄るの?」


「武器屋に寄って新しい武器を見ようと思う。あと、時間があったらだけど組合で魔物の情報を調べたい」


「オッケー。僕はずっと武器屋にいる予定にする」






組合に帰ってきて、スライムボールを売る。また驚かれてしまう。そもそも、剣士だけでスライムを倒すこと自体がありえないレベルの行いらしい。1匹銀貨50枚で、2匹売ったので金貨を1枚手に入れられた。緊急回復薬などに使われるらしい。




昼食をとり、武器屋に向かった。




ドアを開けると、前と同じ禿げた店長が店にいて、剣を掃除していた。店の床には埃が見える。店の掃除した方がいいんじゃないのか?



「いらっしゃい。……アンタは確かザックと来たやつだね。それとお連れさんか。どうもどうも。グニルという老いぼれですわ。よろしく」



「ザックさんに、武器が合ってないって言われたんで来たんだけど、何かありませんか?」



「普通、何が欲しいのか決めてからくるもんじゃが……ぱっと見で武器が合ってないのは分かるな」



「ユーリはわかる?」



「最初あったときに、重い剣を使ってるなってことは気付いてたよ。ザックさん? に言われてたの聞いたから、特に言って無かったけど」



あの時はかなり小さな声で喋っていた上に、席も離れてたと思うんだけど……。



「ワシから言えることは1つ。店の中でも軽い方の短剣でもお前さんに会う程軽いかは分からんということじゃ。まああの2個のセットを除いてだが……」



「その2個のセットってのを見せてもらえます?」



「もちろんいいぞ。南国から流れてきたもので、形が面白そうだから買ったんじゃが、あまりに軽すぎて誰も使い手がおらんかった。ワシも使い方が分からん。ちょっと待っとれ」



そう言ってグニルは店の奥に入っていった。


「これすごい……魔法付与された剣じゃん。僕の刀に付与してもらえるかな……これもすごく綺麗だ……」


一向に構わず、ユーリは自分と剣の世界に没頭している。まあいいけどね。




「ほれ、持ってきてやったぞ」



獣の爪を思わせる形のナイフと、その刃をひっくり返した様な刃のナイフだった。前者は白銀を、後者は漆黒をしている。



ぱっと見て、どう使うのか全く分からないはずなのに、体がどう使えばいいのか理解していた。


「いくら?」


気がつくと、値段の話をしていた。


「買った時は金貨10枚だったが……特別に負けてやるよ。金貨2枚でいいぞ。買い手がいなかったからな」


とは言っても、そこまでの金は持っていない。


「すみません。まだそんなに持ってないので……予約ってできますか?」


「予約な。わかったよ。ま、気が向いたらまた来てくれ」


「ありがとうございましたー」




武器屋を出て、組合に向かう。魔物の情報を得た方がいい気がしたのだ。





組合に着き、「魔物の情報が欲しい」と伝えると、本を渡された。食堂の椅子に座って読むことにする。



『スライム。物理攻撃が効きにくい。毒を持つもの、魔法を使うものなどがおり、「キング」「エルダー」「リーダー」「(名無し)」の順で弱くなる。スライムを倒すと手に入る「スライムボール」は、ポーションなど薬の材料となる。』


『スケルトン。下級アンデッドの1つ。炎と神聖魔法、殴打攻撃に脆い。』


『リッチ。魔法使いが、強い魔力によってアンデッド化したと言われる。魔法が使えるうえ、全ての攻撃にデバフが付くため、厄介。スケルトン同様炎と神聖魔法にはとても弱いが、物理攻撃はあまり効かない。リッチを倒すと手に入る「死の宝石」と呼ばれるものは、上級の魔法の杖の作成に使われるため、かなり高価である』……




色々と載っていたが、まだイメージが掴めないでいる。




武器屋にユーリを迎えに行く。そして、再び狩に出かけることにした。ユーリの腕の回復が意外に早かった。



森に入り、数匹のスライムとオークたちを倒して森を出る。その後は昨日と似たようにして、夕食をとり、風呂に入り、喋りまくってから寝た。

新規の2つセットのナイフについて。



白銀の方のナイフは、カランビットナイフをモデルにしました。


漆黒の方のナイフの形状は、「S字フックのカーブを緩くしたものに、刃と持ち手を付けたもの」という感じです。

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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れ様です。 活動報告の方にも書きましたがご無理なさいませんよう。 台詞のやりとりがテンポよく、読みやすいですっ。 続きを気長に待っております!
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