冒険者生活1日目
ルイスやザックがいる街はトルストという名前で、アイルス王国の南側にある。国王はアイルス14世といい、かなり自由な政策をとっているらしい。軍事と治安維持、困窮者への援助に力を入れるということを何代か前から行っているため、平民からの信頼は厚い。
アイルス王国内にはさまざまな文化があり、西の端と東の端ではまるで異国のように見えるほど文化に違いがあるという。
トルストをはじめとする街は石造りの城壁で囲われており、壁の外には魔物がいるが、中にはそう滅多に入ってくることはない。
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ルイスは城壁を出て真っ直ぐ森に向かった。昼間は魔物は森の中ぐらいにしかいない。
夜になると大小様々な魔物が城壁の外を移動し始めるため夜の狩は危険だが、昼の森には小さな魔物、例えばスライムやスケルトンぐらいしかいない。大きな魔物は森の奥にはいるが、森の入り口付近にはいない。
つまり、ルイスのような初心者は、昼間森の入り口あたりで狩をするのがいいということだ。
(しっかし、アサシンってどんな能力があるんだろう? 聞いたところによると、職業の能力は任意のタイミングでぶっ放すっていう感じらしいけど……)
アサシンという職業自体何なのかわからないので、どんな能力があるのかさっぱりわからない。とにかく何か魔物を倒してみたいので、森の中に入っていく。
しばらく歩くと、もう日が暮れかかってきていることに気づいた。
(結局1匹も狩れなかったなぁ……魔物ってなかなか見つからないものなのかな)
ルイスは少しどころじゃなくがっかりする。ガッカリというか、今日の夕飯の金が無いまま帰ることになるのだ。焦りながら、森の中を歩き回る。
次の瞬間。
前から黒い線が現れ、その先端は自分の胸に当たっていることに気がつく。
(まずい!)
本能的にその線を避けた直後、スライムが現れ、触手を伸ばしてきた。触手の軌道は、黒い線と完全におなじだ。慌てて剣を抜く。
(黒い線と同じ⁉︎ 予測してたのか⁉︎)
と考えている間に、次の黒い線が見えた。さっきより反応が遅れた。やばい。右に動かなければ死ぬことが感覚的に分かる。やばい。
(え?)
一瞬呆然としてしまう。視界が一瞬で動いたのだ、当然かもしれない。
スライムも動きが止まった。まるで戸惑っているようだ。
(スライムだから、剣での攻撃はあまり効かない。だから逃げた方がいい。逃げた方がいいはずなのに……)
ルイスには、逃げることが愚かな気がした。何故か急所がわかる。心臓部がどこにあるかが分かる。剣でも何でもいいから、突き刺せば殺せるところがわかる。
赤い線が見えた。赤い線に合わせて剣を振る。瞬間、スライムに深く剣が刺さっているのがわかった。
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ニンゲン、ミツケタ。
マホウ、ツカエナイミタイ。
オレノテキジャナイ。
スグニタオセル。
コウゲキガアタラナイ!?
ナニガ……ナニガアッタ!
フイウチヲニカイモシタノニ!?
……ガッ!!
シンゾウブガ……!!
ソンナ……ソンナ……
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スライムが震え、崩れていく。
黒い球体だけが残った。
(これがスライムを殺した時に出てくるスライムボールとかいうものか……)
とにかく街に戻らないといけない。門が閉まってしまうからだ。
街に戻ると、真っ直ぐ冒険者組合の窓口へと向かった。それを売って金を得ないといけない。今日の夕飯すら怪しくなってしまう。
受付のアリスさんに買い取って貰いたいと頼んだ。確かポーションの材料になったはずだけど……
「えっ!? エルダー・ブラックスライムのスライムボール!? …………すみません。ちょっと驚いてしまいました。このぐらいの上質な物ですと、銀貨50枚になります」
「ええっ!?」
(銀貨50枚!?)
この世界には銅貨、銀貨、金貨、白金貨があり、銅貨100枚=銀貨1枚、銀貨100枚=金貨1枚、金貨100枚=白金貨1枚となっている。
そして、大体一食が銅貨5〜10枚で食べられる。
安い武器は大体銀貨10枚ぐらいだ。高い物はいくらでもあるけれど。
「……マジですか?」
「エルダー・ブラックスライムは、数が少ない上にかなり強く、剣は全く効きません。魔法の効きも悪く、倒すのは一苦労する物なのですが……
ルイスさんが取ってきたこのスライムボールは、このエルダー・ブラックスライムのものでした。金貨10枚から100枚の値段の高価なポーションの作成に使われます。
このサイズなので2本か3本ぐらいが限界かと思われますので、元値で銀貨30枚。かつ、傷がないので傷みにくく、長持ちするので追加で銀貨20枚。合計して銀貨50枚になります。
売りますか?」
「もちろんです! 売ります!」
「では、これを……」
こうしてルイスは金を手に入れられた。それもかなりの金額だ。
(これでしばらく食べ物と風呂には困らないな。寝床も準備してくれているみたいだし。一泊銅貨10枚程度のとても狭い宿だけど)
ルイスは手に入れた金をどう使っていくか考えながら食堂の空いているカウンター席に座り、定食を注文する。
(冒険者生活1日目に乾杯!)
と思いながら、ジュースを飲む。歩き回っていた時間の方が長いのに、意外と疲れていたらしい。飢えた獣のように夕飯を食べ終わり、風呂に手早く入り、すぐに寝てしまった。




