エルフの女の子
入力補助機能の全角スペースの存在に気がつきました。
余裕があるときに以前の話も手直ししたいと思います。
「では、リチェ草とスライム玉、確かにお預かりします」
あれから、ユリアさんに無一文であることを告げるとすぐに依頼を手配してくれた。
それがこれ、『リチェ草の採取』と『スライム討伐』の依頼。
いわく、子供でも簡単に出来るとのこと。
まず、リチェ草は回復薬の原料になる薬草のこと。町の外に出ればどこにでも生えている、綿毛のような白い花がついた草を取ってくるだけ。
次に、スライム討伐。
これはギルドが初心者用に無料で貸し出している剣を借り、スライムに向かって適当に振り回していたらいつの間にか辺り一面ぶよぶよが散らばっていたわ。その中からスライム玉と呼ばれる核を回収してギルドに納めれば完了ってわけ。
この辺りのスライムはめちゃくちゃ弱くて温厚らしいけど、動くものに反応する性質があって、小さい子供が襲われたりすることもあるらしいから、人里まで出てきたスライムはこうして定期的に討伐しないといけないみたい。
「お待たせしました。依頼内容の方確認出来ましたので、二つ合わせて報酬の銀貨10枚になります」
カウンターでにこやかに硬貨入りの袋を差し出すユリアさんは、少し前とは打って変わって女神のような微笑み。
心なしかさっさと出て行けと言わんばかりの重圧を感じるわ。
お望み通り、足早にギルドを出て、事前に教えてもらった宿屋へ。
と言っても、場所はギルドのすぐ隣。
ここは一階が食堂になっていて、一泊分の食事付きで銀貨5枚。ギルドが提携しているらしいから、ギルドカードを持っているとお安くしてくれるみたい。
あとは心配だった入浴施設。ユリアさんによると、これも宿屋の隣にあるとわかったので早速行ってみることにした。
一応、男女で区切られていてたのは安心。でも、肝心の美容品。固形の石鹸はあったけど、化粧水とかは当然の如く置いてなかったわ。
これは大問題。
アイドル以前に、女子の死活問題よ。
まさかとは思うけど、この世界に美容用品が普及していないとか、お貴族様しか使えない高級品だとか言い出したらちょっと王様に物申さないといけなくなるからね……
近いうちにその辺りの必需品を揃えないといけないわ。そのための四次元ポーチだもの、まだ確認出来てないけど。
ふわあっと小さく欠伸。ああ、それにしても疲れたわ。
今は宿の部屋のベッドの上。外はすっかり日が落ちていて、壁にかけられた時計の針は20時30分を指している。
今日一日で色んなことがあった。
いつの間にか死んでて、閻魔様に会って、見知らぬ土地に来て。怖い目にもあったし、厳しい現実も知った。それでも私のままでいられたのは、アイドルコスチュームのおかげ。この服は私の自信の源、戦闘服。
でもさすがに寝るときはパジャマがいいわね。これも買い物リストに加えておきましょう。
さて、寝る前にストレッチしないと……ああでもダメ、この強烈な睡魔には逆らえないわ。
今日はもう寝よう。おやすみなさい。
***
翌朝。
ギルドを訪れると、依頼が張り出されたばかりの掲示板の前に人が集まっているのが見てとれた。
その間を縫って、私も依頼を物色。
働かざるもの食うべからず。昨日の報酬分じゃ、そう何日も生活できないもの。しばらくは食い扶持確保のためにキリキリ働かないといけないわ。うう、昔を思い出す……
初心者のうちはE、Dランクの依頼しか受けられないから、その中でも報酬が高いものを選ぶのが定石だ。その分、難易度も高くなるけど、昨日の分なら多分大丈夫でしょ。それにいつでも怯まず戦えるように経験は積んでおきたいし。
本当に積みたいのはライブ経験なのですけどね?
「あら、これなんか良さそう」
私が目をつけたのは『ファングボア討伐』の依頼。
ランクはD +。報酬は銀貨30枚。一頭だけ倒して牙を持ち帰ればいいみたいだから、中々お得じゃないかしら。
依頼書によると最近森に住み着いて、農家の作物を食い荒らしてるみたい。
こういうニューステレビで見たことあるけど、異世界でも起きるのね。
「あの」
ふと、真横から聞こえた声に振り向くと、私と同い年ぐらいの女の子が立っていた。
まさに可憐そのものな女の子。柔らかそうな長い金髪を後ろで三つ編みにしていて、透き通るような緑色の瞳は私の手元にある依頼書と私の顔を行ったり来たりしている。そして何より印象的なのは、髪の間から覗く人間よりもとんがった長い耳。間違いない、この子エルフだわ。
「あの、すみません。もしかしてその依頼、受けられますか?」
おずおずと遠慮がちに尋ねてくるエルフ少女。
「ええ、そのつもりよ」
「わわっ、やっぱりそうなんですね……」
しゅんとしちゃったわ。
ひょっとしたら彼女もこの依頼を受注するつもりだったのかしら。
でも、見る感じ一人で魔物討伐に向かえそうな雰囲気ではないわよね……。
「ねえ、よかったら一緒に行かない?」
「ええっ、でもそれはあなたが……」
「私も一人だと不安だし、この辺りはあまり詳しくないの。
二人だと報酬は山分けってことになるだろうから半分になっちゃうけど、それでもよかったら」
どうかしら? と首を傾げてみると、エルフ少女はパアッ……と表情を輝かせた。
「はい……はい! ぜひご一緒させてください!」
この子…………かわいいわね。




