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エンジェルナンバー0(伝わってはいます…)

俺達は そこから離れずいろんな話をした

「そろそろお腹空かない?」

「そうだな じゃあ飯食いに行くか?」

「ダメだよ ちゃんと持って来たからみんなで一緒に食べよう」

何言ってんだ?

俺はちょっと気になっていた事があった

女性陣が何かを持って来ていたのだ

「はい お弁当持って来たよ」

それは弁当

後から聞いた話だと 初恋の人の提案した事だと知る

お墓はまるで春の遠足

花で飾ったお墓の前で 弁当を広げている

「ちょっと待ってね」

初恋の人が 持ち寄った料理を少しずつ紙皿に取り

「ごめんね」

そう言って 花を少し避けて それを供えた

「さぁ みんなと一緒に食べよう」

自然な行動にみんな見惚れている

「じゃあ みんなも食べよう」

多分 異様な光景

「おっ これ美味い!誰が作って来たの?」

「あんた朝も食べたでしょ」

「あっ そうだった」

「わざとだよねぇ 奥さんを褒める為に」

「そ…そうだよ」

多分違う…こいつは天然

天然の最上級の国が認めた天然記念物

「ほら 英ちゃんも遠慮しないで食べて」

「食ってるよ」

「おにぎりも海苔巻きもあるから」

俺はサンドウィッチを食べていた

「おい」

「あっ…そっか…」

何が?

「ってか なんでサンドウィッチ食わないんだ?」

俺も天然か…

「みんな食べてよ」

「いいの?」

そこで初めて気づいた

「いただきま〜す」

「うん 美味い!」

あっという間に完売する

「美味かったぁ」

「あんたら 英ちゃんが食べる分まで」

「あっ…」

野郎共が 怒られている

「いいって マスターのより美味かったろ」

「えっ?じゃあ このサンドウィッチが…」

俺は何も言わなかった

「龍也くん来ないのかなぁ」

「龍なら今日仕事だ」

「そっか 龍也くん仕事休まないもんなぁ」

「そう言う事 わざわざ仕事休んでまで来なくていいんだぞ 特におまえは守るものがあるんだから」

「大丈夫だよ英ちゃん この人この日の為に 風邪引いてるのに仕事休まないで行ってたんだから」

「風邪なんか引いてないって」

「気づかなかっただけだろ?」

「そうそれ!」

馬鹿は風邪をひかないのではなく

風邪をひいた事に気付かない…

こいつは気づいていただろうが

「もう食えない…」

「いっぱい余っちゃったね」

「出しておけばみんなつまむでしょ」

また昔話に花が咲く

もう食えないと言ったやつは話をしながら 余っていた料理を平らげた

見ていた俺の気分が悪くなる

そして それから小一時間が経ち

「なんか小腹空かない?」

おい…まだ食うか

「んじゃ オヤツにするか?」

俺が出したのは…

朝 ここに来た時お墓に備えてあったもの

「これって…」

気づく初恋の人

「多分な」

「おっ 大福だ」

多分 仕事に行く前に龍也がここに来たのだろう

「龍也くんらしいね」

「だな」


「そろそろ帰るか」

西の空が真っ赤に染まる

「また来年来るからね」

みんなが真希に別れを告げる

「今日はありがとな」

「えっ?もう終わり?」

「こうやってみんな集まったんだからさ どっか行こうよ」

「いいねぇ!」

「おまえ…子供は?」

「実家に置いてくる」

「んじゃ 行くか」

「おっ!今日は英ちゃんノリがいいねぇ」

まだ俺からは何もしてないから…

「大丈夫か?」

「もちろん 帰り送ってね」

そう来たか

「どこ行く?」

「個室になってる飲み屋かなんかないか?」

「ならあそこの寿司屋で良くない」

「任せる」

一時間後に集合するようにして 一旦みんなと別れた

俺は龍也に電話したが 電話は留守電

大福のお礼だけ言って電話を切った

「龍也くん繋がらないか…」

「しょうがないさ あいつはお袋さんに苦労かけた分楽をさせようと頑張ってるんだから」

「まだ時間あるね なんか軽く入れておく?」

俺達は 近くの喫茶店に入る

「紅茶でしょ?すいません 紅茶二つ」

「今日もありがとな」

「またぁ そんな事言わないの 仲間でしょ?」

「あいつらもわざわざ仕事休んで…」

「あんたの人徳 忘れちゃダメだからね って忘れるわけないだろうけど」

人徳か…人徳って一体なんなんだろう

いや 意味は知ってるけど 俺にそんなものがあるのだろうか

出された紅茶に

「今日はお砂糖入れる?」

「いやいい」

「ミルクは?」

「いらない」

こいつはいつも自然にいろいろやってくれる

くれると言うより くれていた

それが今も変わらない

「ほら 早く飲まないとみんなを待たせるよ」

「ん あぁ…」


予約した寿司屋に行くとみんな来ていた

さっきより人数が増えている事に気付く

「英ちゃん ごめんな…忘れてたわけじゃないんだけど…」

「何謝ってんだ?仕事あるんだからしょうがないだろ それより覚えてくれててありがとな」

「忘れるわけないじゃん…忘れられないよ…まだこれからなのに…何も楽しまずに逝ったなんて…」

「そうだよね…これから楽しい事いっぱいあったはずなのに…結婚して子供産んで…」

「ほら 湿っぽい話はそこまで いっぱい飲んで食べて盛り上がらないと」

こいつが話しを遮った

たしかにこいつらが言うように これから沢山楽しい事があったに違いない…

好きな人の子供を身籠り 別れた後子供を堕ろし…

もしかしたら あいつはわかっていたのか?

自分の病気を

だからあの時…「それに…私は…」と言ったのか?

今となっては確認のしようはないが…

最期に俺で良かったのか?

「何考えてんの…コーラでいい?」

「ん うんいいよ」

「英ちゃん 酒ダメだったね…違う所にすれば良かった?」

「気にしないで飲め」

「じゃあ英ちゃんは会費三千円でいいよ」

会費?

会費って何?

「ここ美味いんだよ いっぱい食べてね」

みんな明るくしている

俺はあいつとは実際数ヶ月も一緒にいなかった

それなのに こいつらは俺の彼女として 泣いてくれて そして忘れずにいてくれている

「ほら ぼぅっとしてないで食べなさい」

こいつも…

常に側にいてくれている

「食べれないなら 食べさせてあげようか?」

「自分で食える」

「じゃあ食べなさい」

考え事をする暇を与えてくれない…

全て見透かされてるように


「あぁ 飲んだ〜食ったぁ〜」

「そろそろお開きにするか?」

「そうだね じゃあ一人五千円ね」

俺は財布を出し 初恋の人に渡した

俺が何を言いたいのかわかったようで 頷いて部屋を出て行った

天城越えのカミさんが会費を集めている

「英ちゃんは三千円ね」

俺が目で合図するように 首を振ると

さすがは女性 俺が言いたい事を理解したみたいだ

「英ちゃん ダメだよ…」

そこに支払いを終わらせて帰って来る

「間に合ったか?」

「大丈夫 何してんの?」

「英ちゃん ダメだって」

その会話ですぐに理解したみたいで

「いいんだよ この人の気持ちわかってあげて」

「でも…」

みんなから集めた会費を こいつが受け取り

「はい これは貴女達の分ね」

酔い潰れて横になってるやつには

「ほら 終わりだよ これポケットから落ちてたから ちゃんとお財布にしまって」

「ん…んん…ありがとう…」

みんなに会費を返してまわった


「英ちゃん ご馳走さまでした」

「うん…大福美味かったよ」

それは龍也だ…

「こちらこそ 今日はありがとうな」

「英ちゃんまたね…」

「おぅ またな」

「ほら 帰るよ!」

「俺が送るか?」

「いいの 英ちゃんはちゃんと送ってあげて」

「一緒に送って行くぞ」

「英ちゃん 私達は英ちゃんのお礼受け取ったから 後は…」

何言ってんだ?

結局 俺達二人は残された

「ふぅ…」

「疲れた?」

「いや おまえらの方が疲れたろ?弁当作るのに早起きだったんだろ?」

「ううん 楽しかった 久しぶりのサンドウィッチはどうだった?」

「美味かった」

「でしょう」

自信満々な笑顔

たしかに あいつらが一気に平らげたんだから…

「あまり食べれなかったでしょ…」

一切れだけ…

「前だったら どうぞなんて言わなかったんだけど」

「解禁か?」

「だって…あんたが褒めるから」

「俺は評論家じゃないぞ 俺が美味いって言ってもみんながそう思うかはわからないからな」

「えぇ それって酷くない?」

いやいや…だから俺は美味いって言ってんじゃん

「俺らも帰るか」

「狼にならない?」

「馬鹿な事言ってないで乗れ」

「は〜〜い」


「あれから一年か…」

「だな」

「行こう」

「どこへ?」

「海」

「今から?」

「そう 一年前のとこ」

あれから一年とは その事か…

てか それはまだ一年になってないぞ

あいつが亡くなって 三日後が葬式だったんだから…

「あんた 高校の時彼女作った?」

何を突然

「作ったんだぁ」

「作ったって言うか 作らされたって言うか」

「何それ」

「いやな…」

罠にはまったって言うか

女子って言うのは強引な生き物で…

そういう時 団結力があるっていうか…

「呆れた…そんな手にひっかかったの?」

「だって…」

「それってちょっと流行ったみたいだよ」

「そうなの!」

「付き合ってくださいって言って 相手が断わろうとしたら周りの子が盛り上げるんでしょ?」

俺の時は そう言われたから 「俺は他に好きな人が」って言おうとしたら 「俺は…」のところで 「俺はいいよ」だって!良かったねぇと…他の子達が盛り上げ ありがとうございますと頭を下げられたら…

「全く…あんたともあろうお方が…」

「面目無い…」

「っで?どうなったの?」

それを聞いてどうする?

「それっきりだよ 一回だけ弁当作って俺んとこに持って来たけど…大家族の運動会みたいな弁当…おにぎり三つと重箱におかずを詰めて…」

「重箱?ちゃんと食べてあげたの?」

「一応…ただ…」

「ただ?」

「塩の粒がじゃりじゃりするおにぎりを一口と 歯が浮くようなケーキみたいな卵焼きを一口…唐揚げみたいなのもあったけど…蓋を開けた瞬間 しょっぱいにおいが鼻をついたから…」

「そっか…その人は一生懸命作ったんだろうけど…多分初めてだったんだろうね」

確かにそうかもしれないけど…

「おにぎりの海苔が塩で真っ白になってるおにぎり見た事あるか?」

「ない…かなり塩っぱかったでしょ」

「次元が違う…塩っぱいなんて可愛いもんじゃない」

「大変だったね…でも一口でも食べてあげたんだ」

「一番驚いたのは 重箱にうさぎが四羽居た…片耳取れてたけど…」

「りんごか…私しか知らないもんね」

いや もう一人

おまえがバラしたんだろ

「今度好きな人が出来たら 最初に好きな物嫌いな物を言うんだよ」

「そうだな」

「あんたは面倒くさいんだから」

「そうかなぁ」

「そうだよ 自覚ないの?」

ない!

あるから声に出しては言えなかった

「明日仕事だろ?」

「うん」

「そろそろ帰るか?」

「もうちょっと」

「大丈夫か?今日早起きだったんだろう」

「大丈夫だよ」

「家の人心配してるんじゃ…」

「あんたに送ってもらうって言ってあるから大丈夫」

そっか…

いやいや 俺に送ってもらうから大丈夫の意味がわからないんだけど…

「あっ この歌」

カーコンポのボリュームを上げる

「あんたが歌った歌だよね」

362日前のこと

「♪愛するくらい 愛されたいと 想う心が 重荷でしたね 恋の色は 夕暮れの空 薄紅に儚く落ちた 伝わりますか今夜は 悪い女になっています あなたの守る幸せ 消えてくださいな♪」

「覚えたのか?上手いなぁ」

「あの時に聴いただけだよ」

一回で覚えたのか?

「こんな悲しい歌…でも忘れない…」

チョイス間違ったか?

何も考えず歌ってしまった…

「♪伝わりますか今夜は 悪い女になっています♪」

俺を見てこのフレーズを歌う

もしかしたら間違った解釈をしたかもしれないが…

「おまえは悪い女じゃない」

「へへへ ありがとう」

ということは 間違ってはいなかったのかも

「ふぁ〜〜」

「ほら 眠いんだろ」

「眠くない」

「全く頑固だな」

「少しだけ…少しだけシート倒して寝よ」

助手席のシートを倒す

「ほら あんたも倒して」

「少しだけだぞ」

「腕…腕だけ貸して…」

「俺の腕外れないぞ」

外れる奴がいるのか?

無理矢理俺の腕に頭をのせ背中を向けた

「俺起きてるから少し寝な」

「うん…」

しばらくすると寝息をたてていた

よほど疲れたのだろう

朝早く起きて さっきまでいろいろ気遣っていたのだから

そう思った時 腕に何か冷たいものが

こいつの想いは充分伝わっている

俺の自分勝手な行動から傷つけ それでも常に俺を助けてくれている

だからこそ…これ以上傷つけたくなかった…

俺もいつしか寝てしまっていたようだ

漁船のエンジン音で目が覚める

「おはよう」

こいつはこっちを見て…起きていたみたいだった

「やべ!ごめん 俺も寝ちゃってた」

「気持ち良さそうに寝てたよ」

太陽が水平線に顔を出そうとしていた

「ごめんな 送らないと くぅ…」

腕の痺れが…

「頭…重かった?」

多分…

「お袋さん心配してんじゃないか?」

「大丈夫だよ あんたと一緒って知ってるから」

俺 男だぞ…

急いでこいつを家に送る

「ありがとう 楽しかったよ」

俺も車から降りる

「どうしたの?」

「遅くまで連れ回したんだ 俺が謝らないと…」

「えぇ そんな事いいよ」

「ダメだって」

「まだお父さんも居るよ」

おっと…それは頭になかった…

「でも…やっぱり謝らないと…」

「紳士気取っちゃって」

そう言って笑ってる

「ただいま!」

元気に玄関を開ける

後ろにいる俺はドキドキ

「おかえり!」

元気に返ってくる

「お母さん!ちょっといい?」

お袋さんが玄関に出て来る

「あら おはよう」

「おはようございます すいません遅くまで連れ回しちゃって…」

「ずっと一緒だったんでしょ?」

「はい…」

「ならいいじゃない どうして謝るの?」

「ねっ だから言ったでしょ」

いや…俺は男で…こいつは…

「朝御飯まだでしょ?上がって一緒に食べたら?」

「そうしなよ!お母さんパンある?」

「あるよ あんたが作ってあげなさい」

なんなんだこの親子は…

「ほら 上がって」

俺はまだ夢の中に居るのか?

半ば強引に家に連れ込まれ茶の間に入ると

「おはようございます その節はお世話になりありがとうございました」

親父さんが居た

「大変だったねぇ うちのやつから聞いたけど 立派な葬式で送ってやったんだってな」

「娘さんにも手伝ってもらったんで…みんなが居てくれたから出来た事です」

「若いのにしっかりしてるなぁ」

多分…こんな会話をした記憶が…

「お父さん そろそろ仕事の時間でしょ」

「おっ そうだな」

「あんたはこれ飲んでちょっと待っててね」

そう言って紅茶を淹れてくれた

「これ食べない?」

「お母さん!余計なの食べさせないで ただでさえ少食なんだから!」

「はいはい」

俺…何やってんだろ…

「ねぇ…あの娘どう思う?」

何を聞いてくるんだこの母親は…

「何コソコソ話してんの?はい どうぞ」

サンドウィッチと卵焼き

「そんなんで間に合うの?」

「大丈夫です」

今は何を食べても味がしないだろうから…

「紅茶 おかわりは?」

母親の方が聞いてきた時には こいつが注いでいた

「聞かないで入れてあげればいいの この人はすぐ遠慮するんだから」

それから 俺が一口飲む度に注がれた…

「卵焼きどう?」

味がわからん…

いや 無味なのではなく 母親の顔が近過ぎて…

「甘さ控え目にしたんだけど」

それより お袋さんの顔を控え目にしてくれ…


「どうもご馳走さまでした」

「また遊びにおいでね」

母親が俺に言ってる

「また来年…かな?」

こいつが言う

「家近いんだから…」

そう言って俺は帰った










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