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エンジェルナンバー0(仲間)

高校二年も半ばに差し掛かる

「龍 修学旅行行くんだろ」

「俺は行かね」

思った通りの答えだった

修学旅行は一年の時から毎月積み立てをしている

しかし 小遣いは別

「まだバイトしてるんだろ?」

「余計な事言うな バイトは学費だ」

俺は驚いた

バイトは自分の小遣い稼ぎだと思っていた

龍也は バイトをして学費を払っていたのだ

俺と同い年

家庭環境はその家それぞれだが

俺はバイトをした事がない

学費はおろか小遣いも親だった

「なぁ 一生に一度だぞ 一緒に行こう」

「行かね」

「なんで?お土産買わなければお金使わなくていいだろ それに行かないからって積み立て返って来ないぞ」

「そうなのか?」

多分…

俺にも良くわからん

なんとか龍也を説得して修学旅行に一緒に行く事に


「いいか!これから自由行動だが 問題は起こすなよ!特にそこ二人」

俺と龍也…

「問題起こすもなにも…学ランじゃ恥ずかしくてどこにも行けねぇっての」

「お土産でも買いに行く?」

「俺はいい おまえらだけで行って来い」

俺は 龍也に気を遣ってたのかもしれない

多分龍也はお土産なんて買いに出ないだろう

そう思っていた

「えぇ 英ちゃんお土産買わないの?」

「俺は部屋で寝てる」

「そんなの放っておいて行くぞ」

そう言ったのは龍也だった

えっ?龍也も行くの?

「しょうがねぇなぁ…俺も行くか」

何故俺がこんな台詞を言わなければ…

修学旅行のお土産は 学校で予約を取り 家に届けられるようになっていた

旅行中に買うお土産は ほとんどが後輩や先輩に

京都と全てに書かれた如何にもなキーホルダーや小物が並ぶ中

龍也が買ったのは 孫の手 だった

「龍也くん 孫の手 買ってる…」

「五体満足で帰りたいなら黙ってろ」

俺は 口止めをした

多分 龍也はそれを誰に買ったかわかったから

ぶっきら棒な親子

何て言って渡すのかを考えるとちょっと可笑しくなる

無事修学旅行も終わり

次の行事は文化祭

俺達の催し物はありきたりな喫茶店

そこで想像も出来ない事を目の当たりにした

「龍也先輩…写真撮らせてください」

一年の女子に人気がある龍也

「これで五人目だよ…」

他のやつらは羨ましそうに覗いている

「まただ…なんで撮らせてやらないんだろう」

龍也は全て断っていた

「思わせぶりになるからだろ」

なんとなく龍也の気持ちがわかった

そう言う俺も 全て断っていたから

「英ちゃんは…なぁ…」

「なぁ…」

「なぁ なぁ うるせぇよ」

俺には好きな人がいた

まぁ それはどうでもいい事だが


「文化祭も終わったか…帰るか 龍也帰るぞ」

「しょうがねぇなぁ」

初めての言葉だった

今まで頑なに一緒に帰る事を拒んで来た龍也

デートの誘いを始めて頷いてもらったような

「なぁ なんで今までずっと一人だったんだ?」

「おまえと逆だ」

やっぱりぶっきら棒に言った

しかし それは的を得た答えだった

一緒に帰ってる他の連中は?って感じだったが

俺はいつも同じ面子で帰って居た

二年になってから部活にも入り そいつらも誘い 同じ部で 帰りは常に一緒だった

それは守るため

今まで書いて来た通り 物騒な時代に学生をやっていた為 何があるかわからない

それを龍也は見抜いていたのだ

「それに俺についてくるやつなんか居ないしな」

「俺 今まで散々誘ってたろ」

「俺居たら迷惑かける」

そんな事を話していたら 迷惑が近づいて来た

「おまえが龍也だな」

またかよ…

本当に敵が多いなぁ…

結局 龍也は負け知らず

喧嘩の勝ち負けなんか 何が勝ちで何が負けか分からないけど…


ある日 俺と龍也が自転車で流していると

「おい こっち行くぞ」

急に進路を変更する龍也

まぁ どこに行くでもなく走ってたわけだから 別にどこでも良かったのだが

俺は龍也が何かから逃げるように見えたのだ

後ろから追いかけて来た車に気づいたのは それから間もなくの事だった

プップ〜〜

「龍也!何逃げてんだ?」

「構うなよ…」

龍也が俺に言ってる

「龍 こいつらって…」

「いいから 俺について来い」

龍也が漕ぐのを急ぐが相手は車

「何無視してんだ?」

自転車の行く手を阻まれ 俺達は囲まれた

「なぁ 龍也 また金貸してくれよ」

龍也からカツアゲ?

「金なんかねぇ」

「去年は持ってたろ」

「あっ バイト辞めたのか?」

俺はこいつらの言ってる事を頭で整理した

去年?バイト?

龍也は バイト先を あの事件 から変えていた

そして こいつらの顔

確か龍也の中学校出身で俺らの一個上

もしかすると あの事件はこいつらの仕業?

龍也を見ると震えてる?

誰にでも突っかかっていく龍也が…

「龍…」

「んじゃ おまえでいい 金貸してくんねえか?」

「こいつには関係ねぇ!」

「ん?ならやっぱり龍也が貸してくれるのか?」

大体分かった

何も考えることはなかった

こいつらは悪者

そう思った瞬間 体が勝手に動いていた

「なんだこいつ!」

「龍!おまえらしくもないぞ!」

「うるせぇ!何もわかってないくせに」

あっという間の出来事だった

ただ年が一個上

それだけのこと

足元に転がったのはそいつら四人だった

「龍 おまえ去年の…」

「関係ねぇ 行くぞ」


しかし…

この事件はこれで終わりではなかった

数日後

俺が一人 自転車で帰宅しようと走っていた時

あの車が俺の前に止まった

「この前はよくもやりやがったな」

負けを認める台詞を吐きながら車から降りる四人

「やられ足りなかったか?」

「しかしおまえ馬鹿だよなぁ」

「四対一でも負けねぇぞ」

俺にも自信はあった

「馬〜鹿 おまえは何も知らないだろがな 龍也の家 あれはこいつの親父が貸してるものなんだよ」

そこで俺は全て理解した

龍也の家は賃貸

だから 龍也は手を出さなかった

それを知った以上俺はされるがままだった

袋叩きにあい しばらく気を失った

「英ちゃん…英ちゃん…」

地元のやつに起こされるまでどれだけの時間が経っただろう

「誰にやられた!」

「自転車で転んだだけだ…」

俺の自転車はスタンドがかかって立っている

「誰にも言うなよ」

「わかった…」

体中が悲鳴をあげていた


次の日

単位がなくなると思い無理して登校

「英ちゃんどうした!」

「なんでもない 響くから静かにしろ」

声だけでも体に響く

「なんだ?誰かに負けたのか 俺が仇とってくるか?」

「俺が負けた?馬鹿言ってんじゃねぇよ 自転車でコケただけだ」

「馬鹿じゃね…まさかおまえ…」

「馬鹿はおまえだ…なんでもねぇから」

龍也は気付いたみたいだった

でも 龍也は何も出来ないはず

それでいいと思ってた


その次の日

龍也は 無事 に学校に出て来た

両手以外…

両手が傷だらけだった

「龍…おまえ…」

「馬〜鹿 何らしくねぇ事してんだよ」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫だ」

口数が少ないから いまいち把握出来なかったが 龍也親子に家を貸してる あの四人のうちの一人の親は 龍也の祖父にお世話になった人で ほぼ無償で家を貸してくれていた

今回の件も ただの子供の喧嘩としてお咎めなし

俺はただのやられ損だった

「悪いな」

龍也の 悪いな はありがとうを意味する

のちにその理由がわかる事となる








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